高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?
全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。
- プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)
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ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。
自己負担2割の恐怖
第6期の介護保険の制度改正の特徴については、リハビリ重視、中重度者重視、看取り支援、医療・介護の連携強化などなどが言われています。しかし、将来的に危惧しなければいけないのは、「自己負担2割」となる層が誕生したことではないでしょうか。
この、自己負担額が増える層は全体の20%にあたる人たち、といわれています。一定所得以上では、わかりづらいので、次のような目安が示されています。
合計所得金額160万円以上(年金換算にして280万円以上)
ただし、所得160万円以上なら必ずというわけでもなく、どうやら「年金収入+その他の合計所得金額(事業収入とかね)」を用いた2段階の判定となっています。
さて、この計算の詳細はさておき・・・1割負担が倍掛けになることのインパクトです。
たとえば・・・要介護3の方が支給限度基準額めいっぱいを利用していたとします。自己負担はざっくり26,900円。それが、53,800円となるのです。いかがですか?
要介護5の方なら36,000円だったのが72,000円になるのです。
住宅型有料やサ高住に暮らす利用者なら、いきなり2万円~3万円アップとなります。
私が危惧することは、なにか・・・
- (1)合計所得金額が160万円から140万円など、基準となるラインが下がること→やがて2割負担がすべての利用者に課せられるかも?
- (2)合計所得金額160万円以上の人は「2割負担⇒3割負担」に引き上げられるかも(10年後には想定しているかも?)
- (3)サービス利用の抑制が強烈に働くこと
とくに(3)が懸念です。
介護保険は「90%OFF」で利用できる、とても財布にやさしい「お得な仕組み」ともいえます。この世の中で、ここまで手厚いサービスはあまりありません。90%OFFだから、正規の値段の実感がわかないのが難点です。
デイサービス(通常規模:要介護3で7時間~9時間)だと、自己負担は「898円」です。しかし総額は「8,980円」です。自費で8,980円を出してデイサービスで一日過ごしたいでしょうか?
話が横道に逸れましたが・・・私が危惧するのは「自己負担できる金額で介護サービスが組まれている現実」があるということです。
要介護3であっても「家計がきびしいから1万円でお願いできませんか?」と頼まれると、ケアマネジャーのなかには何も考えずに「総額10万円」のプランを作ろうとする人がいます。
しかし、認定調査では在宅での自立した生活をするためには「269,000円分の介護時間の支援」が必要だと示しているのです。
それなのに、総額10万円分の介護時間しか確保しないプランを作るのです。
つまり169,000円分の不足する介護時間を介護保険サービス以外で用意をしなければいけないのに、それを意識したケアマネジメントを行っているケアマネジャーはどれだけいるでしょうか?
家族の負担が増える、本人の我慢が増える、そして本人の機能低下に拍車がかかる・・・このような悪循環が現場では生まれています。
このような事態が、年金富裕層?といわれる20%で起こることは当然に予想できます。なぜなら、2割にアップした社会的背景と意味をどれだけ理解できる利用者がいるでしょうか。また制度の改正(改悪?)を本人(家族)に納得できるように説明できるケアマネジャーがいるでしょうか・・・
結果、持ち出しの金額は変えたくないから、これまで自己負担だった金額でサービスを組むと「50%減」のサービス利用となります。
そこでサービス事業者にとっては死活問題になります。つまり20%の年金富裕層で、サービス利用が激減することが予想されます。
このように自己負担率の引き上げは、介護サービス利用の抑制を招き、結果、介護保険財源を支える(支出の減)ことになるわけです。
そして在宅では、要介護認定の中重度の判定をいくらもらおうが、サービス利用を抑制する年金富裕層が生まれることになるのです。
この自己負担率引き上げについて、政党でまともに反対したところはあったでしょうか。また介護事業者団体で反対したところは?
多くは「報酬の引き上げ」「加算の取得」ばかり(もちろん、これは大切です)に注力し、利用者側の視点に立った厚労省側への要求は、おろそかになっていたのではないでしょうか?
なにしろ今回の消費税の増税は「福祉の充実」だったはず・・・3%~5%のアップ分で十分に吸収できる財源が集まるはずなんですが・・・私にとっての「都市伝説」です。
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ムロさんの写メ日記
「ケアプランと個別支援計画の連続性~自立(自律)とチームケア~」