高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?
全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。
- プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)
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ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。
縁を結ぶ
日本人の言葉に「ご縁」という言い方があります。
初対面で話していると、実は同じ人が知り合いだった、同じ地域に暮らしていた、ある瞬間がお互いにシンクロしたなどの時に、私たちは「ご縁ですねぇ」という言葉に思いをこめます。
「縁」を「えん」と読むのか、「えにし」と読むのか・・・
「ご縁ですね」より「縁(えにし)ですね」のほうが、耳には美しく響きます。
今日は、その「えにし」を感じる年1回の催しについて書きます。
例年は医療に関するテーマが多いのですが、今回は「地域包括」でした。地域包括という言葉が一人歩きしている現状に、まずは立ち止まり、そもそも何ぞや?という疑問から入る切り込み隊長がコーディネーター役の生井久美子さん(朝日新聞 記者)です。
第2部「地域包括~ニセモノ・ホンモノ~混沌編」で2時間、夜の第3部「地域包括~~ニセモノ・ホンモノ~創造編」は3時間の長丁場となりました。
いくつか、興味深いお話しをピックアップしましょう。
コーディネーター 猪飼周平さん(一橋大学教授)
「ケアが地域包括ケア化するといことは、歴史的大事件のように思われます。ケアの舞台の中心が“施設から地域社会”へ移っていくこと(地域化)、保健医療福祉などに拡がるケア的なものが“統合される”方向に進むこと(包括化)と理解しておきましょう」
これはとてもわかりやすい整理です。従来のケアが収容型であり、地域社会からの離反を前提とした集約型ケア(安全な場所)だったわけです。それを地域分散しようというわけです。
そしてケア的な状態になった後の手立てとなる前の手立てには、保健的かかわりと医療的かかわり(キュア)と福祉的かかわり(行政的手法含む)が統合される(総合化される)必要があると説いているわけです。
シンポジウムもなかなかユニークなみなさんが登壇されました。
39歳でアルツハイマー型認知症と診断された丹野智文さん(ネッツトヨタ仙台勤務)は、記憶をたどり、言葉を確認しながら、ご自分が認知症に気づいた時のこと、診断が下った時の狼狽、いま現在の気持ちなどを丁寧に話されました。
「不安で不安で、泣いているしかなかったです」
「私は世話をされるより、お世話をしたいんです。なにか役に立ちたいんです。認知症の私の話を認知症の人が傾聴すること、そういう役に立ち方もあるかなと思います」
加藤忠相さん(株式会社 あおいけあ 代表)の話はとても説得力のあるものでした。加藤さんは神奈川県藤沢市でグループホームと小規模多機能型居宅介護をされていて、「おはよう21」などにも取材されている方です。
いくつか、ステキな言葉を話されました。
「うちを利用されるとみなさん要介護度が改善するので、収入減で大変です(笑)。でも、それでいいんですよね、本当は」
「PTやOTの仕事、これはエビデンスっぽい仕事ですね。私たちのケアは本人の人生に寄り添うのでナラティブっぽい仕事だととらえています」
「介護の仕事のコンセプトの“自立支援”を地域に持ち出せば、お年寄りが社会資源として活躍できることがたくさんあります。庭でお花を植えればレクレーションですが、公園や市民病院の花壇で花を植えればボランティアになります」
たくさんのスライドを見せながら、「高齢者+子どもたち+地域社会」が有機的にかかわれているあおいけあ的小規模多機能ワールドを感じることができました。
他には、森田洋之さん(元夕張市立診療所 所長)、五島朋幸さん(新宿食支援研究会代表)、岩元文雄さん(全国福祉用具専門相談員協会理事長)など、すてきなシンポジストのみなさんでした。
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