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高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?

高室 成幸 (たかむろ しげゆき)

全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。

プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)

ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

「職務質問マニュアル」に「認知症対応」を

 ここ数日、メディアでは横浜市のデイサービスから行方不明になった認知症の男性(83歳)が昨年8月に東京都中野区の公園で死亡していたことが報じられています。
 なんと警察が2度も接触しながら認知症と気づけなかったのです。

 職務質問をすると、本人は名前をはっきりと答え、歩いて帰れるかと尋ねると「帰れる」と返事をしたといいます。カッターシャツにジーンズ姿。髪は黒々としていたので、よほどしっかりと映ったのかもしれません。

 その日の夜、警察がもう一度、接触します。「近くの公園のトイレで60代くらいの酔っ払いが寝ている」と通報が入ります。何回尋ねても「大丈夫」と答え、「家がないの?」と尋ねると本人がうなづたので、ホームレスと判断、そのままにしたといいます。

 そして翌朝、公園で遺体となって発見されます。死因は脱水と低栄養。連日30度以上の猛暑が続いていました。

 この記事を読み、3年前に同じような体験をしたことを思い出しました。ちょうど7月ごろでした。午後2時頃のことです。私がエレベーターで降りていくと、ビルの脇の花壇に腰かけている90代の男性に、「おじいさん、あなた、どこに行きたいの?」と70代の男性が質問しています。

 「う、う、う~ん、このあたりにあった???(聞き取れない)工場に行きたい、行き、行きたいんだけど・・・どこ・・・う~ん」
 やりとりがおかしいので、「これは認知症の人だ」とすぐに分かったので、私がバトンタッチしました。

 やりとりをしてわかったことは、大久保の高齢者専用住宅?から歩いてきた(ほぼ4キロ程度)こと、体調は悪くないこと、行きたいところは???工場とのこと、でした。
 私も用事があったので、このままにしておくわけにもいかず、少し小雨も降ってきたので、110番をしました。パトカーが来るまでおしゃべりをしました。
 軍隊に行かれていたことなどを楽しそうに話されました。
 そして、大久保の高齢者住宅には50人くらいが住んでいて、管理人は1人しかいないということも話してくれました。

 15分ほどでパトカーがサイレンを鳴らしながらやってきました。「ああ、この音だけでも、ご本人は嫌だろうなぁ」と私は思いました。
 2人の警官が降りてきました。自転車のお巡りさんもやってきました。180㎝はあろうかというガタイのいい警官が職務質問を始めます。

「あのさ、おたく、名前は?・・・名前?」
「どこから来たの?わかる?家はどこ?」
 あまりの横柄な言い方に私は腹が立ちました。まるで不審者扱いです。通報したのは私ですから、私も質問されます。私は自分の仕事と通報した経緯を話し、おそらく認知症であることを伝えました。
「その方の免許証入れに大久保の高齢者住宅の名前らしき紙切れが入っています」
 と情報提供すると、その紙切れを確認し、本署に確認の電話を入れ、先方の電話番号がわかったので、しばらくやりとりを見ていました。

「どうやら、先方も気がついていなかったみたいですね。これから私たちが送り届けますので・・・ご苦労様でした」
 一礼をした警官はご本人をパトカーに乗せて、走り去りました。

 この時の情景がこの記事で思い出されました。本当に横柄で上から目線の言い方・・・怖気づきますよね、あれでは。
 私は研修で、警察署での認知症サポーター養成講座をするべきだ、とお話をします。行方不明や交通事故、交通違反、万引きなどに対応するのは警官です。かれらにこそ高齢者や認知症の人とのコミュニケーションのとり方が必要だと思うからです。

 2013年、認知症の人の行方不明は10322人。
 1週間以内に所在がわかったのは9949人。
 そして・・・死亡が確認されたのが388人です。

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 全国研修の様子は、ケアタウン総合研究所の公式FBをご覧ください。