高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?
全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。
- プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)
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ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。
講師としての思い
今週は徳島でした。
徳島県の地域マネジメント向上研修で、県内のケアマネジャーのみなさんに「ケアマネジャーの仕事力」というテーマで講演を行いました。相談援助職として傾聴などの手法だけでなく、そもそも「マネジメント技術」を身につけないと「ケアマネジメントはありえない」という視点からお話をしました。
「ケアマネジメントには、ケアチームをまとめるチームマネジメントと、みずからを改善・向上させるセルフマネジメントがあります」
と冒頭にお話しをしました。
後半、私がついつい力が入るのが「ラーニング力」、つまり学習力ですね。これに力が入るのはなぜか・・・。
それは、ケアマネジャーのみなさんが「自分の伸びしろ」をどのようにして伸ばしているのか、常々危惧をしている一人だからです。
「この1年間で、そうですね、月刊ケアマネジャーなど業界の雑誌も含めて専門書を5冊以上読んだ方はどれほどいらっしゃいますか?・・・はい、2割くらいですね。では3冊前後は読んでいるという方は・・・3割くらいですか。ということは・・・残りの・・・」
そこで手を挙げなかった方にマイクを向けます。
「もしあなたの親が要介護になって、担当するケアマネジャーの方が、実は専門書を1冊も読んでいないと知ったら、あなたは家族として信頼できますか?」
もちろん、首を横に振られます。
「そうですよね、その気持ちを忘れないでください」
そう述べてから、次に続けます。「もちろん、いまはNHKなどもとてもよい番組をやっていますから、本だけでなく新聞やテレビから学ぶことも多いでしょう。つまり学ぶ習慣をつけること、それが大切です」と・・・。
私はこのブログをはじめて、なんと8年になります。なにしろ400号を越えましたからね。この手の継続が苦手だった私にしてみれば、よくぞよくぞの快挙です(^_^;)。
そして月刊ケアマネジャー(中央法規出版)の連載も4年目になろうとしています。
じつは、このブログもそうですが、ひとつの諦観が私の脳裏をかすめるときがあります。そうですね、年に数回でしょうか・・・それは、「このような文章を書いても、だれが読んでいるんだろうか?」
というジレンマです。
月刊ケアマネジャーは購読者が読んでいるだろうって?いえいえ、すべてを読みつくす人は余程に暇というか余裕があるというか・・・。
多くは、関心のある人のみが特集や連載を読むのです。だから書き手としては、これを読む機会のない、読もうという気持ちもない人の目に触れてもらいたいな、とつくづく思います。
この気持ちは研修会の主催者の方々も口にします。
「ここに来ているみなさんはいいのです。そうでない人が・・・心配なのですねぇ」
要は、学ぼうとする人はつねに「バージョン・アップ」しているわけです。学ぶことで自己更新ができています。そうでない人は、以前のままの自分で仕事をされているかもしれない、ということです。
もちろん、すべての研修会に参加できない事情があるのはわかります。ならば、少なくとも数か月に1回はそのような場に出るように努力されたり、専門書を開いたりされているか、ということです。
私は学ぶ習慣づくりとして、研修会の場では「ここでわかったつもりにならないでください。あくまでここは気づきの場です。ここをスタートに学びはじめをして下さい」と伝えます。
と、このような気持ちでいると、今週号の週刊文春におもしろいコラムを見つけました。作家・林真理子さんの「夜ふけのなわとび」です。彼女は、神奈川であった上村君殺害事件のことについて憤慨し、分析し、母親としてかくあるべしということを書いた終盤に、ある諦観に似た気持ちを吐露します。
いろいろ書いても、「そういうことをするお母さん」が、週刊文春の読者だとは思えなくて虚しくなると・・・。
この後の十数行は、言い過ぎ・決めつけすぎの感はありますが、書き手の思いが本当に読んでもらいたい人に伝わらないジレンマ。彼女のいらだちと諦観は、よくわかります。
だからこそ、大切な事、言いづらいことを伝え続けることを止めてはいけない、と思える自分がいます。学びましょう、学ぶことで新しくなります、新しい目が開けます・・・今日の研修の場をそのようなきっかけの場にしたい・・・それが講師としての私の思いです。
「今日の講義はまったく眠くならなかったね」
「今日はすごくわかりやすかったね」
「こんな研修なら、もっともっと受けたいよね」
せっかく時間をやりくりして参加した研修会が、居眠りしたくなるような内容だとしたら・・・これほどもったいないことはありません。もちろん受講する人の姿勢に問題がありますが、講師の側も考えなければいけない、襟を正さなければいけないことも多々あるのではないでしょうか・・・。
ケアマネジメントの知識がいくらあっても、ケアマネジメントの技術がいくら高くても・・・教える技術は別物です。話す技術も別物です。私が持っている「講義の技術」を伝える機会があれば、と思う今日この頃です。
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