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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

Covid-19の今が分からない

 先日、わが国におけるCovid-19の感染者は10万人を超え、連日、感染者の人数は増え続けています。

 10月25~31日の一週間でみると(人数は朝日新聞朝刊による)、25日+495人、26日+410人、27日+649人、28日+732人、29日+809人、30日+778人、31日+877人と、感染者は合計4,750人も増えているのです。

 「GOTO〇〇」を期間延長する方針が明らかにされるなど、経済の活性化に向けた政策に舵が切られているようですが、日立や三菱など日本経済を代表するような企業グループの業績不振も深刻な話題になってきました。

 このような状況の中で、念仏を唱えるように「経済活動と感染防止のバランスをとることが大切だ」という台詞が、今でもさまざまな報道に出てきます。

 ここで、政治家の場合は、その人の政策が国民に対して責任ある内容である限りは、政治家にふさわしい発言であると理解できます。しかし、感染症の「専門家」は経済のことについてはただの素人のくせに、政治家のような台詞を言う人がたくさんいて、これらは例外なく「似非専門家」です。誰かの方を向いて、尻尾を振っているのでしょう。

 一週間で5千人近くの感染者の増加があるのに「経済活動とのバランス」と言われると、何を判断基準としているのかについて不信が募ります。一方では、「ある程度の感染者増や死者」が出ることはやむを得ないことで、他方では、Covid-19による不景気への無策のために政治家への不支持や「首を括る人」の増大がでてくることを極力回避する必要があるところでの、「バランス」なのでしょうか。

 とりわけ、社会福祉施設における感染防止対策については、未だに理解できない事態が続いています。高齢者・障害者施設のPCR検査をめぐる政策方針は、拡充する方向へシフトチェンジしてきました。

 2月以降に感染拡大が進んだ当初段階は、検査は原則として濃厚接触者までとしていました。それが8月7日には、施設内で1ケースでも感染者が出た場合には利用者にPCR検査を公費で実施できるとなり、8月28日にはさらに、「感染拡大地域」では職員と利用者全員に「定期的に」検査するとなりました。

 ところが、「感染拡大地域」と「定期的」に関する国の定義はないのです。これらについての具体的な判断は、地域の自治体や保健所に丸投げされています。これが、感染症対策という国家的に最重要課題である公衆衛生策の実態であるとすれば、疑問を禁じ得ません。

 「GOTO〇〇」によって人の遠距離移動が激しくなってきたことが、地方部への感染拡大を懸念させるのは当然です。すると、感染拡大の防止と経済とのバランスをとるためには、全国の感染状況を鳥瞰できる立場にある国が、PCR検査の徹底するべき地域に積極的に関与してこそ本来の公衆衛生策と言えるのではありませんか。

 地域の相談支援システムをどのように組み立てるのか、障害のある人の地域生活を支える地域生活拠点と支援ネットワークをどのように構想するのかなど、地方分権だからこそ地域の実情に即した支援策を構築できる施策の領域があるのは事実です。

 それでも、ネットワークの構築と共に新たな社会資源開発が必要であるとすれば、政策の具体化は、つまるところ人員と予算をどこまで手当てできるかどうかにかかっているといっていい。ところが「地方分権」の実際は、人員と予算は地方自治体のふところ次第の「地方への丸投げ」の形で進められてきました。

 社会福祉施設におけるCovid-19対策も「丸投げ型地方分権」への傾きはないのでしょうか。PCR検査の拡充方針を国は示しはするが、具体的にどうするかは「地方に丸投げ」する。すると、検査の人員と予算は「自分たち地域で」、地域住民や高齢者・障害者の健康をどう守るのかも「自分たち地域で」ということでしょう。

 国家責任による公衆衛生が実施されなければ、一時的な景気浮揚の局面を経つつも、地域を越えて感染拡大が進み、「国破れて山河あり」とならない保証はないでしょう。

 すでに感染拡大に向かいつつあることを示す明白な兆候があるのですから、すべての国民の命と健康を守る政策に対するより積極的な国の関与のあることが、「感染防止と経済活動のバランスをとること」の前提条件であると考えます。

赤く実の熟したクロガネモチ

 庭に野鳥を呼び寄せる実のなる樹木として、ウメモドキやピラカンサ(トキワサンザシ)に加えてクロガネモチが紹介されることがよくあります。どうもこの情報は、嘘らしい。

 叶内拓哉さんの『野鳥と木の実ハンドブック』(文一総合出版、2006年)によると、野鳥のほとんどはウメモドキやピラカンサの実を食べることはなく、クロガネモチはレンジャク類が採食する他は、「ツグミやヒヨドリ、カラス類が採食する程度である」とあります。

 では、このようなニセ情報がまことしやかにどこから流されたのか? この情報源はひょっとすると、これらの樹木を売ることに利害のあるところに関係しているのではありませんか。