メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

オンライン授業

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、全国の大学は授業のオンライン化を進めています。連休が明けて授業はすでに始まったものの、試行錯誤が続いているようです。

 話を単純化すると、問題は次のとおりです。教える側はオンライン授業に慣れていない、受講する側も慣れていない、オンライン授業を進めるために十分な通信機器と通信環境が整っていない、の3つです。

 5月9日の朝日新聞は、全国の大学のオンライン授業におけるトラブルと課題について報じました(「オンライン授業、大学手探り 参加人数超え入れず/動画教材、アクセス集中し障害」https://digital.asahi.com/articles/DA3S14470380.html?iref=pc_ss_date)。

 大学の授業は、小中学校のように学習指導要領や教科書はなく、平準化された形式はありません。授業の内容と進め方は、教員の専門性に即した自由裁量によるものです。もちろん、教育学部では教員養成に必要不可欠な内容が含まれていることは前提ですが、卒業研究に帰結させるゼミは、内容と進め方が教師によって十人十色と言っていいでしょう。

 つまり、大学ではそれぞれの教師によって異なる内容と進め方の授業があり、これまではそれを対面形式で実施してきました。顔を突き合わせて意見を交わす中で、教師の一方的な進め方が修正されたり、みんなで折り合いをつけていくことができました。

 今、それを突然オンライン化することになったのです。

 教師も学生もオンライン授業に不慣れな中で、うまく折り合いをつけていく作業は、これまでの経験値があまり通用しません。時空間を共有しているところでは瞬時に折り合いのつくところが、オンラインでは一つの行き違いを修正するだけでも手間と時間がかかってしまうのです。

 ここからは、私個人のつぶやきというか、ぼやき節程度のものとしてお読みください。

 まず、教師も学生もオンライン授業に不慣れな上に、新年度の始まりが遅れて学年歴が短縮化され、授業時間数もある程度は縮減することになっています。少なくなった授業時間数をカバーするための学習課題を学生に提示することになっているようですが、これまでと同様の授業水準を担保できるかどうかは未知数です。

 これで、学費だけはそのままでいいとはとても言えないでしょう。アルバイトもできずに学生の生活困窮も深刻になっていることも考慮すれば、すべての大学で今年度の学費は「半額の6掛け」程度にできるように、国は補助金を出すべきなのではないでしょうか。

 次に、オンラインで双方向性を担保する課題への対応についてです。

 私のオンライン授業は、職場の大学が推奨しているZOOMを用いて進めています。ここで大変なのは、受講生の多い授業です。教育学部の学生の必修科目の一つを担当しているのですが、受講生は200名を優に超えています。大学が設定した通信容量で受講者の最大限度は300人までとなっています。

 この授業は、本来なら、講義室のキャパシティである150名を限度としてきました。しかし、今年度前半は、新型コロナウイルスの感染防止のために小中学校等での教育実習を実施することができません。実習関係が後期に集中するとなると、学生は前期の内に履修できる授業科目をできるだけとっておこうとなるのです。

 このような事情が分かると、慈悲深い私の信条として、とても授業で人数制限をかけることはできません。しかし、オンラインで200名を超える授業となると、もうどうしていいか分からない。授業の中で双方向性を担保することは難しい。

 そこで、大勢の授業では「唯我独尊」状態で授業を進める以外に、ひとまず成す術がありません。双方向のやり取りは通信技術的には可能だとしても、授業の実際では収拾がつかなくなる恐れがあります。

 画面上で、200名を超える受講生の表情や様子を確認していると授業を進められなくなるし、10名ずつの小グループに分けても20以上のグループになるからミーティングするのも難しい。今のところ、学生からの質問や意見をメールで受けて、それに返していくことで精一杯です。

 しかし、少人数の演習の場合は、ZOOMでかなり双方向の議論をすることができます。とくに、前年度の1年間にゼミをやってきて2年目のゼミになる学生とは、すでに培われた「学びの親密圏」にふさわしく、対面のゼミに近いやり取りをすることができます。

 今年度から始まる演習やゼミでも、課題認識の共有と信頼関係を培うことを重視して進めさえすれば、みんなで議論ができるようになります。

 このように、オンライン授業にはこれまで長年やって来た対面形式の授業や演習の経験値が通用しない課題が浮上します。人数が多くなればなるほど、これまで以上に、すべての受講生の学びの質を担保することは、これまで以上に難しい。

 少人数であっても、パソコンの液晶画面上に様子が出ているだけですから、遠慮がちな学生の抱えているわだかまりや悩みを見落としやすい陥穽もあるしょう。

 以上の問題に加えて、授業のオンライン化には通信機器と通信環境の問題があります。この1週間、この問題の深刻さをさまざまに知ることになりました。

 まず、すべての大学生がWebカメラ付きのパソコンを持っている訳ではありません。パソコンを所持していない学生はスマホで授業を受けていますが、授業資料はとても視認しづらい。Webカメラがない場合は、音声のみでのやり取りになってしまいます。

 私のゼミでは、パソコンを所持しているか、Webカメラがついているかをあらかじめ確かめて、Webカメラがついていない場合は、購入しておくことを推奨しました。

 この時点で、ネット通販上のWebカメラの価格は、実用上問題のないものが2000円もあれば購入できました。それが、今やものすごく高騰し、すぐに入手することも難しくなっています。不織布マスクと一緒。

 アルバイトができなくなっている学生に、「〇万円のWebカメラなら今すぐ買えるよ」なんて言える訳はありません。当局は「Webカメラチーム」を発足させてほしい(笑)

 次に、通信環境の問題です。自宅や下宿に通信環境が整っていなければ、オンライン授業に接続することはできません。通信環境があるとしても、たくさんのオンライン授業に接続するとなると、通信容量は膨大なものに上がります。すると、契約した容量を越えて通信制限に引っかかり、授業を受けられなくなる学生が出来するのです。

 実際、先に紹介した朝日新聞の記事は、昭和女子大学の学生調査の結果から、「通信環境が整っている」とした回答は98%だが、その内「通信制限がない」とする回答は55%にとどまったと報じています。通信制限を緩和して使える通信容量を大きくするためには、通信料金の高い契約に変更しなければならないのです。

 このようにみてくると、パソコン、Webカメラ、通信料金、そしてできれば授業資料のプリントアウトに必要なプリンターの購入と、学生の実質的な費用負担はかなりの追加的出費を強いられる事態になっています。

 すべての大学生について、特別定額給付金10万円に加えて、授業のオンライン化に係る特別奨学給付金の給付を検討する必要があります。

青森産の栗ガニ

 さて、上の画像は、毛蟹に勝るとも劣らない美味で、カニ味噌がとても充実していることで有名な栗ガニです。こんなにも由緒正しい生きたままのカニが、1杯298円で売っているではありませんか?! さっそく茹でて、2杯いっちゃいました。旨っ!

 外出自粛の要請から緊急事態宣言の発出によって、高級食材が売れなくなっていると言います。確かに、近くのスーパーの鮮魚売り場は、この間、商品の一変した感がありました。キンメに関アジなど、これまで市井のスーパーには出たことのない高級魚たちが、お値打ち価格でお目見えしています。

 わが国の新型コロナウイルスへの対応には、国際社会からの批判が相次いでいます。すると、いうなら「国破れて鮮魚あり」ですか。