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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

巌窟王の囁き

 この連休は、シャトー・ディフ(マルセイユ沖の孤島の刑務所ディフ城)に投獄された「巌窟王」のような毎日。レジャーや新元号の騒ぎとは無縁で、チキンラーメン5袋を含めた素食による「まんぷく」、髭は剃らず、閉じこもった書斎は資料に荒れ放題の惨状。

 某組織の企みの全貌を暴き、復讐の手立てを練る…。そのような感じのいささか漂う原稿執筆に明け暮れていました。ただし、今後の展開にモンテクリスト島の財宝にありつく予定はありません(笑)

 ひたすら原稿を書くことに集中する毎日を過ごしていると、平成から令和に替わる世間とマスコミの大騒ぎに著しい違和感を覚えます。束の間の休憩に、ボーッとした頭でお茶をすすりながら新聞を広げても、テレビをつけてみても、何だか唖然としてしまいます。

 5月1日はまるで、創生期初日の花火大会のよう。新聞の折り込みチラシにネット通販は、「令和記念の衝撃価格」「令和を記念してポイント○倍」「令和初日の先着○名様に大バーゲン」などの大見出し、スーパー銭湯まで「令和記念スタンプ10個サービス実施中」と、さまざまな花火を打ち上げています。

 新元号を消費価値として徹底的に落とし込んで、ここを商機とはしゃぐのはいかがなものでしょうか。私は、新聞の折り込みチラシのすべてを一瞥することなく古紙袋に放り投げ、ネット通販のすべてを例外なく無視することに決め込みました。

 「令和記念バーゲンセール」の花火がそこかしこで打ち上げられると、消費者はどこの何がお得なのかほとんど吟味できません。だから結局、お店にとってもさほど大きな商機にはならないのではないでしょうか。

 もっとも落胆したのはマスコミの報道です。政府が説明する新元号の出典と意味を報道するのは理解できます。しかし、元号の案のあれこれに、それらの出典に、元号選定に係る委員や閣僚の発言等を垂れ流す「報道」には、心底辟易しました。

 それも、ワイドショーではなく、NHKを筆頭に、れっきとしたニュース番組で延々と垂れ流すのです。一体、どのような報道価値があると考えているのか、「公共放送」としてニュースのどこに公共性があると判断したのか、全く理解できません。

 元号の使用をめぐっては、歴史的な論点や課題も残っていますし、憲法記念日辺りに冷静な記事が出るかと期待しましたが、これもほとんどありません。

 ネット通販、家電量販店、スーパーマーケット等が新元号に便乗したバーゲンセールを実施するのはまだしも理解できます。が、マスコミが新元号にはしゃぐような「報道」を繰り返す様には、呆れを通り越して、「主権の存する国民」としての怒りを憶えます。

 連休の合間に、NHKは仙台の牛タンチェーン店の映像ニュースを1日に何回も使いまわしています。連休中の飲食店は店員を確保することが難しく役職者や事務職員まで総動員していると伝えていました。このニュースのどこに公共性があるのか、私にはさっぱり理解できません。

 全国の社会福祉施設は、この連休中の勤務表のやりくりに大変なご苦労があったのではないかと思います。人手不足の中で福祉・介護に携わる職員がさっぱり埋まらないけれども、要介護高齢者、障害のある人、虐待を被った子どもたちへの支援は、連休だからといって決してお休みにすることはできません。

 マスコミの子ども虐待に関するニュースは、千葉県野田市の事件を筆頭にセンセーショナルに取り上げます。が、子ども虐待が激増して全国の児童養護施設は満杯の状態であるのに、施設の人手不足の深刻さに起因する連休中の苦心惨憺を取り上げるような視点と姿勢は、どこの報道機関をみまわしてもまったくありません。

 たとえば、仙台の牛タンチェーン店の連休中の人手不足の背景に、子育ての渦中にいる従業員に対する仙台市の連休中の保育体制があるのかどうかをNHKが取材して報道するのであれば、さすが公共放送と拍手喝采します。

 国民の知る権利に対して、わが国の報道機関はひたすらネグレクトを続ける深刻な病にかかっていると思います。わが国のマスコミが罹患する「死に至る病」の病因は、すべてのニュースを消費価値に還元するところにあります。

テントウ虫の成虫

 さて、この連休は不安定な気候でした。私の住む川越では一時間ほどの間、直系5mmほどの雹(ひょう)が降り続けました。でも、世の中のさまざまな騒ぎにかかわらず、テントウ虫は梅の木の葉に巣食うアブラムシを目当てに、親子ともども奮闘しています。

テントウ虫の幼虫

 テントウ虫の幼虫は、足取りも軽く枝葉を駆けめぐってアブラムシを捕食しています。さまざまな国で、アブラムシの生物農薬として承認されていることに納得できますね。