宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ
疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。
- プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)
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大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。
もはやモンゴル・テントか
世界気象機関(WMO)は7月10日、日本の豪雨災害・猛暑や北アフリカ・アメリカ西海岸の記録的高温など、世界各地で異常気象が観測されていると発表しました。
先日は埼玉県の熊谷で41.1℃とわが国の最高気温記録を更新し、アメリカのカリフォルニア州デスバレーでは52℃を観測しています。
台風12号がもっとも東京に接近した時に、どうしても外せない用事で都心に居たのです。風雨を避ける目的でやむを得ず最も近い呑み屋に逃げ込み、タマネギの串フライを肴に一杯ひっかけていました。ガラス越しに見える風雨は、恐怖を感じるものすごさです。
日本列島を西に向かって進む台風12号を報道するテレビを見て、「そろそろ観念した方がいい」と考えざるを得ませんでした。
国土強靭化計画で、いくら「強くて、しなやかなニッポン」を追求しても、地球の現実は人間の対応できる臨界点を越えてしまったのではないかと感じるからです。
国土強靭化計画のイメージは、「天空の城ラピュタ」の中で、天空の城と王族を守る2種類のロボット兵。一つは、目からレーザービームを出して焼き尽くす戦闘型のロボット兵で、もう一つは、肩に鳥をのせて庭園の世話をしたり墓標に花を添える優しいロボット兵です
これらが、「強さ」と「しなやかさ」のイメージにぴったりです。が、「天空の城ラピュタ」は結局、人間の欲のせいで滅びてしまう。
「観念する」といっても諦めることではありません。「目を閉じて心を静めて、真理を考え正視すること」の意です。この辺は、高村薫さんが『作家的覚書』(岩波新書、48-50頁、2017年)の中で、的確な指摘をされています。
「長年の経験値では推し量れない『観測史上初』の大雨の多発は、こうして堤防や下水道が整備された先進国の日本のあちこちに、開発途上国のような光景を出現させるのだが、これはもはや政府のいう『国土強靭化』で対処できるような次元の話ではないのではないだろうか。」
「結局、声高に安心安全を叫ぶよりも、自然を正しく恐れ、大雨が来れば家や田畑が押し流されることも覚悟しながら、そのときはそのときと思い定めて柔軟に生きてきた先祖たちに倣うときなのかもしれない。」
どのような自然災害にたいしても「強さ」のある建築物と鉄道・道路・河川・堤防を構想することができるのでしょうか。大地震、火山大噴火、スーパー台風、豪雨…。
西日本豪雨の直後にやってきた台風12号に係って、気象庁が緊急に開いた記者会見では、「これまでの経験が通用しない可能性がある」とし、「大雨特別警報を待つことなく、自治体の避難勧告などに従って早めに避難を」と強調しています。
つまり、「ギリギリまで我慢したり抵抗するのではなく、早めに諦めて逃げろ」と。
こんな調子の気象がコンスタントになってくると、「天空の城」でも作らない限り「強い住まい」にならないが、これはもはや非現実的。むしろ、普段みんなはモンゴル・テントに住むことにして、いざというときの避難所だけはできる限りの堅牢さで造っておくくらいがいいのでは。
これこそ財政事情の厳しい日本の現実的な「強さとしなやかさ」ではないのでしょうか。被災者には、十分な暮らしと就労に戻れるよう無差別平等の社会保障を完備すると、もう完璧な「国民強靭化計画」でしょう。
さて、連日の猛暑が続く中で、わが家にも気になる異変を感じます。一つは、夜になると庭でよく見かけたナメクジがまったくいないことです。もう一つは、摘果以外に何もしていない桃が大豊作です。実に袋かけをしていないのに、なぜか鳥は食べに来ない。スーパーで売っている桃より数段旨いのに。
わが家周辺の野鳥の個体数が急激に減少しているようにも感じます。完全無農薬の桃だから、とにかく美味しく戴きます(笑)