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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

新しい制度疲労

わが国では今、本来なら責任ある言動が期待されるべき人たちの間に、健忘症と虚言癖が大流行しているのではないかと気がかりで仕方ありません。

 日大アメフト問題を取り上げた朝日新聞の「耕論」(6月1日朝刊)の中で、作家の江上剛さんは次のように述べています。

「日大アメフト部の問題に、私たちがこんなに興味を寄せるのは、日本という国全体を覆う無責任体質への危機感があるからだと思います。

 かつて孔子は、人間は老いるにつれて成熟するものと説きました。ところが、日大幹部や公文書を改ざんした財務省幹部らの発言を聞くと、年を重ねるにつれ無責任になっているように感じます。」

「無責任体質が生まれたのは日本の組織に勝利や業績、効率性のみを追い求める考え方が蔓延しているからです。

 東京電力は大地震や津波が想定されていたのに原発の対策を後回しにして、大災害をもたらしました。東芝はライバル企業への歪んだ対抗心から、何があっても利益をあげろと社員に圧力をかけて不正会計に手をそめた。電通は希望に燃えていた女性社員を、過労自殺に追い詰めた。」

「一方で国民の多くは日本が制度疲労を起こしており、新たな価値観が必要ではないか、と考え始めています。そんな日本社会の病理が、アメフトのフィールドに象徴的に現れた、といえます。」

 日大アメフト部の元監督と元コーチの記者会見を見た私の感想は、「ヤクザの組長と頼りない若頭の会見のよう」で、血気にはやる下っ端に責任をなすりつけて平然とする無様さにあきれてしまいました。この学校法人全体に対する感想も、崩壊寸前だった時代のソ連・東欧諸国のように思えたのです。つまり、アーバニティの欠片もなく、危機管理の全くできていない硬直した官僚体質であると。

しかし、江上さんの指摘を受けて、旧態依然とした体質がもたらした問題に過ぎないという私の感想は間違っていると考えるようになりました。

高校野球や駅伝を含めたあらゆる学校スポーツは、一方では、学校に受験生を集める広告塔として使われ、他方では、暴力やハラスメントが繰り返し発生してきた構造を絶ち切ることに成功したことはありません。江上さんの指摘からは、勝利や業績を上げるためには、暴力、ハラスメント、健忘症、虚言癖等のどれもこれもが等閑に付されるという問題だということができます。

 東芝は、1980年代の半ばに土光敏夫さんを経団連の会長に出しました。臨調行革の推進に力を発揮した人です。東京電力の平岩外四さんも経団連の会長について、構造改革に尽力された方です。この時代に盛んに使われたキーワードは、まさに「制度疲労」でした。

 構造改革を目指した時代に使われた「制度疲労」という用語には、「戦後の制度や慣行は、業績や効率を考慮せず、ムダが多く、財政垂れ流しの状態に陥っている点で、現実にそぐわないものになっている」という意味が込められていたと思います。だから、戦後体制を構造改革する必要があると。

 そうして構造改革を追求してきた現在の「制度疲労」は、「わが国における21世紀の制度と慣行の多くは、業績や勝利だけを重視して、社会的責任のある人の民衆に対する暴力・ハラスメント・健忘症のふり・嘘つきが横行するようになった点で、現実にそぐわないものになっている」というところなのではないのでしょうか。

 今、中学生に「嘘から出たまこと」の意味を述べなさいという国語の問題を出したら、「なかった(あった)ことを実際にはあった(なかった)かのように言い張ったら、まことに得をすることがあるという意味」などと答える奴がいるのではありませんか(笑)

 本当の意味を念のために添えておくと、「何の根拠もなく出まかせに言ったことが、結果として本当のことになってしまうこと」(時田雅瑞著『岩波ことわざ辞典』88頁)です。

おそらく、東芝製最後の二層式洗濯機

 さて、わが家で30年間働き続けてくれた東芝の二層式洗濯機を処分にすることになりました。振動と異音が大きくなってきたため、ついに寿命だと判断しました。お世話になりました。娘のおしめの洗濯には本当に頑張ってくれました。ご苦労様でした。

懐かしい姿です

二層式洗濯機には、全自動にはない利点があります。構造が単純で価格が安い、ドラム裏側の黒カビ問題がない、石鹸を用いて少ない水量で洗える、脱水をしながら次の洗いに入ることができる…。だから、今でも新品の二層式洗濯機が売っているのですね。