宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ
疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。
- プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)
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大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。
原発の重大事故から7年-再稼働反対は7割
この一週間ほどの間に、東日本大震災関連の報道が増えていますが、「記憶の風化」と「風評被害」をキーワードにする報道には辟易します。自分たちが報道すべき事実やテーマが不明確であることを告白しているようなものです。
その点、河北新報の一連の調査記事と東京新聞は、福島第一原発の重大事故に焦点を当てて「今ここにある課題」を明確に伝えることによって、「記憶の風化」どころか事故の重大性を呼び覚ましてくれます。
まず、河北新報とマーケティング・リサーチ会社マクロミルが、震災7年を機に、東北にある建設中を含めた5つの原発について再稼働(建設)を認めるかどうかについての調査結果です。回答者の7割が反対でした。
一連の調査は、東北6県と首都圏で実施されたネット調査です。この他にも、福島産の食品について、農作物よりも水産物に抵抗感が根強いことや、福島観光については積極的な回答が多いことを紹介しています。
行きつけのスーパーマーケットに福島産の野菜・果物・加工食品があれば、私は普通に買って食べています。仕事で福島県内に足を運ぶ際は、福島牛に福島産の野菜や米をたらふく食べてきました。現地で食べると鮮度の良さと品質の良さが直に味わえるので、食べ始めるとやめられない(笑)
福島県内には名湯がたくさんあり、浜通りにも数多くの温泉・鉱泉があります。中通りにある飯坂温泉や磐梯熱海温泉はとてもいいお湯ですから、震災後も機会あるたびに訪れるようにしてきました。しかし、浜通りの温泉・鉱泉の多くは立ち入り禁止区域にあるため、原発事故に恨みを抱いています。
次に、東京新聞は紙媒体の朝刊とWebニュースの両方で原発問題を大きく取り上げています。とくに、昨夏の電力余力は震災前の原発分を上回り、この冬の厳寒期も電力不足を回避した事実を報じた記事に目が留まりました。
これによると、電力の余裕を示す「予備率」(実際の電力需要に対して供給余力がどの程度あるかを示す数値)は、震災前の2010年夏が9%であったのに対し、2016年夏が13%、2017年夏が14%と電力供給には大きな余裕のある状況が定着したといいます。
再生エネルギー発電の増大と節電の定着によって、すでに原発44基分にあたる4,400万キロワットの余力を作り出した計算になると報じています。さらに、廃炉や放射性廃棄物の処理費用がどこまで膨らむかについては、まったく先行きが見えていません。汚染水の保管と処理にさえ見通しが立っていない事実も直視すべきでしょう。
そこで、東京新聞は、すでに定着した電力余力と廃炉・放射性廃棄物処理にかかわる途方もないコストをすべて考慮した場合、「電力を安く安定的に供給するには原発が必要である」とする政府の主張は、「根拠を失っている」と解説するのです。
再生可能エネルギーによる発電は、天候に左右されるなどの安定性に欠ける上、需要に応じた電力供給ができないと大手電力会社は今でも主張しています。再生エネルギーによる電力供給に必要な送電網については、「すでに満杯」だと言いながら、実は利用率2割だったという大嘘の記憶も新しいところですから、安定性に欠けるとの主張もまことに疑わしい。
実際、ドイツやフランス、そして今や中国も、再生エネルギー発電による電力の割合を大幅に上げる努力をしています。この背景には、蓄電技術の向上によって、再生可能エネルギーの弱点と言われてきた安定供給の問題が飛躍的に克服されつつあると同時に、これらの国々は、再生可能エネルギーによる電力供給の技術そのものを新しい産業として育てようとする政策方針を打ち出しています。
日本が再生エネルギー発電に消極的なまま、原発再稼働一本鎗を続けているのは、わが国の原発技術に根拠のない自信を持ったまま、未だに有望な輸出産業として考えているからでしょう。もちろん、これらの周辺には、有象無象の利権が絡んでいることも間違いありません。
この構図は、落日の一途をたどった日本の電気産業そのもののお粗末さを繰り返しているだけではありませんか? 日本の技術と親会社を頂点とする多重下請け構造に過剰な自信と執着をもって、総合電機企業は凋落の一途をたどり、すでに消え、あるいは身売りを余儀なくされた会社もありました。
ここには、日本の企業組織にある「先行世代の蓄積や実績を踏まえて事業を進める」という病理的な文化が根強く存在していて、これまでとは根本的に異なる科学技術と事業展開についていくことのできない弱点が介在しているのではないでしょうか。
東日本大震災の復興は、わが国における原発全廃が実現したときに、はじめて達成したといえるのではないかと私は考えています。
さて、先週は、東京都大田区障害者総合サポートセンターのピアカウンセラー研修に講師として参加しました。テーマは、「自分らしく生きていくための支えになるには-障害のある方の人権擁護について考える」です。参加者の皆さんは、とても熱心な受講態度でグループワークに取り組んでおられました。
自らの経験を振り返って共有し、仲間同士の支え合いや連携を作りだしていく営みは、障害のある人の領域ならではの活力です。参加者の多くは女性で、障害のある人の養育・養護・介護の役割が女性にあることを反映しています。男性ピアを増やす展望を拓くことは、大きな課題です。