宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ
疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。
- プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)
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大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。
検証活動のさ中です
10日間ほど高知で虐待事案の検証活動をしてきました。この先、6月中旬までは、検証活動の核をなす調査活動を引き続き実施する予定です。
この取り組みは、社会福祉法人一条協会(以下、「一条協会」と略)で発生した複数の虐待事案に関する検証活動です。一条協会理事長からの要請に基づき、高知県知的障害者福祉協会に設置された人権倫理委員会・検証委員会が取り組みを進めています。
検証活動の中身と結果については、まとまった形で報告する予定です。ここでは検証活動の進め方について、少しお話しておきたいと思います。
まず、虐待事案の発生した法人事業所の職員と利用者を対象とする調査には、特別の配慮が必要です。虐待発生にかかわる何らかの当事者性がある人たちから事実に迫るためには、調査協力への社会的責任と任意性を両立させなければなりません。
私たちの検証活動は、警察の実施する「現場検証」ではありません。公権力による犯罪捜査ではなく、障害のある人の人権擁護を進めることにそれぞれの立場にある関係者の同意を得た協力協働の営みです。この検証委員会が虐待発生の真実に迫ることを焦るあまり、職員や利用者に対する新たな人権侵害を発生させてはならないのです。
今回の検証活動では、職員を対象とする質問紙調査とヒアリング調査、そして利用者を対象とする事実確認面接の手法に基づくヒアリング調査を実施します。これら一連の調査の内容と進め方について、職員や利用者に対する人権侵害が発生しないよう、検証委員会とは別に設置された倫理審査委員会が、検証活動の内容と方法について倫理審査を実施しています。
もう一つは、障害のある利用者を抜きにしたままの検証活動にはしない点です。事実確認面接(司法面接)は、障害のある無しにかかわらず、必ず成功するというものではありません。しかし、事実確認面接が難しいことを理由に障害のある人たちを抜きにすることは、障害者権利条約の締約国における虐待事案の検証活動に許されるものではありません。
Nothing About Us,Without Us!! が当たり前だと考えています。
そこで、さまざまな知見に加え、北欧やイギリスで制度実務の研修に使われているアン・クリスティン・セーデルボリ著『知的障害・発達障害のある子どもの面接ハンドブック』(2014年、明石書店)を参考に、面接の進め方に検討を重ねました。そして、面接協力に同意を得ることのできた利用者の人を対象に、事実確認面接を実施します。
現在までに、一条協会関係者から多大な協力を得ることができ、順調に検証活動を進めているところです。この検証活動は、一条協会における虐待防止と事業所の再建のためのものであるのはむろんのことですが、それと同時に、多くの障害者支援施設・事業所が抱える様々な問題点を虐待防止の視点から明らかにすることに通じていると考えています。
さて、この2週間のうち、10日間を高知で過ごしました。もちろん、大学の仕事はありますから、高知と埼玉を行ったり来たり。高知から戻った翌日の朝一番の授業では、教室を間違えてしまう不始末さえしでかしてしまいました。やはり、疲れは相当たまっている。
肩が猛烈に凝っているので行きつけのマッサージに行くと、「一体、何をしていたのですか? 肩甲骨周りはカチコチですよ」と2時間がかりでほぐしてもらう羽目に陥りました。
現地は四万十川のほとりにあって、育雛期の野鳥の数と種類はものすごい。四万十市の中心地にある中村駅周辺でも、大型のワシタカ類が悠然と飛翔していました(尾の形状を確認しましたから、決してトビではありません)。首都圏では考えられないくらい野鳥がうじゃうじゃいるというのに、バードウォッチングする片時さえない。せいぜい障害者支援事業所の建物に営巣するツバメのご夫婦に挨拶する程度。5月のバードウォッチャーにこれほど辛いことはない。
その昔、埼玉を流れる荒川でも「このくらいの野鳥はいたんだろうな~」と呟きながら、夜の四万十市中村周辺で、「孤独のグルメ・井之頭三四郎」になるのがやっとでした。いずれ、この点も、ご報告することになるでしょう。
高知-窪川間はJR四国の路線で、窪川より中村・宿毛方面は土佐くろしお鉄道の路線となります。くろしお鉄道区間の土佐白浜駅付近の車窓からの眺望は、高知ならではのまっ青の海と空を堪能できます。
この検証活動が終わったら、高知県知的障害者福祉協会の用意する新型超高性能双眼鏡「ニコンWX7 × 50IF」(え~っ、¥691,200もする双眼鏡!! どんな見え味なんだろう?)で星空と野鳥を堪能するために、ゆっくりと四万十に行って見たいものです。
彗星の探索と発見で有名な関勉さん(池谷・関彗星などの発見者)を産んだ高知ですから、高知県知的障害者福祉協会会長の山崎さんは、この双眼鏡を私に提供する責任を心の底から感じているはずです(笑)
来週は、この検証活動のためにお休みします。