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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

仕事の合間に

 先週は、ある虐待事案の検証活動の準備のために地方に足を運びました。このようにして、虐待の現実に向き合い続けるだけだと、ときおり息苦しくなってしまうものです。そこで、全国の様々な地域に虐待防止の取り組みで足を運ぶ傍ら、その土地ならではの美味に巡り合い、このブログでもときおり紹介させていただいています。

高知市帯屋町商店街傍の「遊角」で発見したマッカラン18年物

 大学の私のゼミの卒業生の中には、「あいつのことだから、結局はグルメか温泉のことを書きたいのではないか」と考える向きがあると聞くのです。このような感想は、1/3くらいは当たっていますが、基本的には誤解です。

ふくよかなシングルモルトの香りと
コクが広がる

 あるいは、たとえば「奈良のブログ(2/6のブログ)に美食の画像が出てこなかったのは、奈良では美味しいものに出会わなかったからだろう」という一部支援者からのお声を頂戴しました。この感想も全くの誤解で、美味しい大和地鶏と大和野菜に出あい、しこたま堪能してきました(笑)

 人間にはそれぞれ何かしらの得手不得手があるように、私には、行く先々の街でどういうわけかいい温泉と美味しいものに巡り合ってしまう「得手」があると思えてなりません。それ以外の得手や運はほとんど持ち合わせていませんから、いい温泉と美食に辿り着いてしまう幸せは、われながら際立って感じ入ります。

 さて、「食い意地が張っている」とのお叱りは甘受するとして、美食に巡り合う具体的な術について、得手不得手の問題に還元することなく、読者の皆さんにお伝えできるのではないかと考えて書いているのが、本日のブログです。

 題して、こんなところに注意すれば「あなたもきっと美食にありつける!」。いうなら、私家版「孤独のグルメ」。

 どの地域の飲食店や温泉についても、さまざまな情報が氾濫しています。市販のガイドブック、インターネット上の情報サイト・書き込みサイト、現地のフリーペーパー、宿泊ホテル等で配布される観光客相手の「特典付き」グルメ情報パンフレット…。

 これらの既存情報のすべてを当てにしない、信用しない、自立したスピリットが何よりも大切です。既存の情報を決して信用してはならないという決めつけや疑り深い態度になるのではなく、自分の日常生活圏とは異なる地域の情報への接近については、自分が「風来人」であることの自覚がまず大切だということです。

 足を運んだ現地で自分の眼と耳を信じて総動員し、「ここがきっと美味しいに違いない」と見極めます。そこでまず、人の流れに注視します。夕方を過ぎて、飲食店街に人の流れが出てくるようになると、観光客風情の人の流れ、地元のサラリーマンの流れ、カップルが多く入っていくお店等を、しっかりと眺めるのです。

 ここでは、地元の人が家族や同性同士で入っていく店がおすすめです。実際、当たりのお店は、だいたい19時までに地元の人たちで満席になるところが多いですね。

 それに対して、札幌や博多など、グルメで人気のある街には観光客主体のお店があって、このようなところは「一見さん」相手だから美味しいはずもなく、地元の人は絶対に行かないのです。カップルの多いお店は、雰囲気の良さがお店選択の要素として強くなるため、味の良しあしを保証する判断材料にはなりません。

 次に、お店のメニューに注目します。メニューの内容と構成は、書物でいえば目次に該当するところです。書店で本を手に取り目次に眼をやると、その本の性格と自分にとっての必要度がその場でほとんど分かります。

 美味しいお店の多くは、自分のお店の性格づけに自負心とアイデンティティがあり、客に自信をもって薦めることのできるメニューの骨格が明確に見てとれます。アルコール等の飲み物類のメニューでも同様のことが言えます。だから、お店の前にメニューの出してあるお店の方がおいしいものに当たる確率は、経験上、高いと考えてきました。

 もう一つ大切な点は、その土地のグルメに関する先入観を排除することです。冬の下関のトラフグ、富山のブリ、高知といえばカツオの叩きというような、定番メニューがあります。ところが、自分の足を運んだ時節に地元の人が何を食べているのかは、よそ者には意外と知られていません。

 たとえば、今の時節の下関と言えばトラフグが有名です。ところが、トラフグが美味しいのは誰でも知っているとしても、地元の人でも安々と食べることのできる食材ではありません。今の時節だからこそ、地元の人が舌鼓を打つ魚介があるはずで、そのような情報をあらかじめ地元の人に尋ねておくことをおすすめします。

瀬戸内海のアジ-この時期は脂の乗りがいい

 たとえば、先日おとずれた山口では、日本海と瀬戸内海の両側から美味しいアジの入荷の続く時期で、私は瀬戸内海のアジをチョイスして刺身でいただきました。旅先だからといって、お金をかければ美味しいものに出会えるというものでもないのです。

 ところで、不味い飲食店と虐待発生のある障害者支援事業所には、どうも共通点があるではないかと考えてきました。

  • ・清掃が不行き届きで清潔さに欠ける、ときとして異臭が鼻を衝く、それでいて店(施設)の人はこれらの異常を何とも感じていない
  • ・建物内部の整頓がされていない、動線が確保されていない
  • ・メニュー(作業種目)が旧態依然として改善されない
  • ・まずいサービス(支援)であるにも拘らずなぜか自信を持っている
  • ・ホームページでは、いかにもしっかりやっているような偽りが記されている
  • ・外部からの点検や意見を受けとめて自主的に改善しようとしない
  • ・店長と従業員(施設長と職員)・従業員同士(職員同士)の人間関係がよくない
  • ・店長(施設長)は権威的に力を行使するが、だからといって料理(支援)が上手いわけではない
  • ・同族経営で有能な従業員が意見を言うと排除する

 このような問題がなぜ出来するのか? これから半年以内に、ある法人事業所の虐待事案から洗いざらい明らかにしたいと考えています。

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