宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ
疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。
- プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)
-
大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。
都道府県別の数値
都道府県別の人口10万人当たりの虐待件数から、単純な資料を作成してみました。
人口10万人当たりの 子ども虐待 | (指数) | 人口10万人当たりの 子ども虐待 | (指数) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 大阪 | 187.7 | 231 | 25 | 兵庫 | 59.6 | 73 |
2 | 神奈川 | 127.5 | 157 | 26 | 静岡 | 59.5 | 73 |
3 | 埼玉 | 114.4 | 141 | 27 | 群馬 | 52.9 | 65 |
4 | 奈良 | 113.0 | 139 | 28 | 愛媛 | 51.5 | 63 |
5 | 広島 | 108.8 | 134 | 29 | 高知 | 51.4 | 63 |
6 | 千葉 | 107.6 | 132 | 30 | 岐阜 | 49.9 | 61 |
7 | 山梨 | 88.3 | 109 | 31 | 栃木 | 48.4 | 60 |
8 | 和歌山 | 86.6 | 107 | 32 | 沖縄 | 48.3 | 59 |
9 | 徳島 | 85.6 | 105 | 33 | 福岡 | 47.1 | 58 |
10 | 大分 | 83.9 | 103 | 34 | 岩手 | 45.9 | 56 |
11 | 長野 | 83.5 | 103 | 35 | 福井 | 44.7 | 55 |
12 | 愛知 | 81.7 | 100 | 36 | 茨城 | 43.2 | 53 |
13 | 京都 | 80.7 | 99 | 37 | 岡山 | 41.6 | 51 |
14 | 香川 | 77.5 | 95 | 38 | 秋田 | 38.9 | 48 |
15 | 東京 | 74.0 | 91 | 39 | 長崎 | 35.7 | 44 |
16 | 北海道 | 72.2 | 89 | 40 | 富山 | 33.5 | 41 |
17 | 三重 | 70.7 | 87 | 41 | 山形 | 31.2 | 38 |
18 | 青森 | 69.8 | 86 | 42 | 佐賀 | 28.4 | 35 |
19 | 宮城 | 68.6 | 84 | 43 | 福島 | 27.3 | 34 |
20 | 滋賀 | 67.2 | 83 | 44 | 山口 | 27.3 | 34 |
21 | 宮崎 | 64.2 | 79 | 45 | 島根 | 22.2 | 27 |
22 | 石川 | 63.0 | 77 | 46 | 鹿児島 | 18.3 | 23 |
23 | 新潟 | 62.2 | 77 | 47 | 鳥取 | 15.2 | 19 |
24 | 熊本 | 60.8 | 75 |
人口10万人当たりの 障害者虐待 | (指数) | 人口10万人当たりの 障害者虐待 | (指数) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 滋賀 | 4 | 308 | 25 | 埼玉 | 1.1 | 85 |
2 | 大阪 | 3.1 | 238 | 26 | 千葉 | 1.1 | 85 |
3 | 島根 | 2.9 | 223 | 27 | 神奈川 | 1.1 | 85 |
4 | 鳥取 | 2.8 | 215 | 28 | 山口 | 1.1 | 85 |
5 | 愛媛 | 2.8 | 215 | 29 | 高知 | 1.1 | 85 |
6 | 沖縄 | 2.7 | 208 | 30 | 鹿児島 | 1.1 | 85 |
7 | 三重 | 1.9 | 146 | 31 | 徳島 | 1 | 77 |
8 | 長野 | 1.7 | 131 | 32 | 熊本 | 1 | 77 |
9 | 長崎 | 1.7 | 131 | 33 | 岩手 | 0.9 | 69 |
10 | 新潟 | 1.6 | 123 | 34 | 群馬 | 0.9 | 69 |
11 | 石川 | 1.6 | 123 | 35 | 福井 | 0.9 | 69 |
12 | 宮崎 | 1.6 | 123 | 36 | 奈良 | 0.9 | 69 |
13 | 京都 | 1.5 | 115 | 37 | 広島 | 0.9 | 69 |
14 | 岡山 | 1.5 | 115 | 38 | 福岡 | 0.9 | 69 |
15 | 愛知 | 1.4 | 108 | 39 | 東京 | 0.8 | 62 |
16 | 香川 | 1.4 | 108 | 40 | 山梨 | 0.8 | 62 |
17 | 北海道 | 1.3 | 100 | 41 | 兵庫 | 0.8 | 62 |
18 | 福島 | 1.3 | 100 | 42 | 大分 | 0.8 | 62 |
19 | 静岡 | 1.3 | 100 | 43 | 富山 | 0.7 | 54 |
20 | 和歌山 | 1.3 | 100 | 44 | 岐阜 | 0.6 | 46 |
21 | 宮城 | 1.2 | 92 | 45 | 佐賀 | 0.5 | 38 |
22 | 秋田 | 1.2 | 92 | 46 | 青森 | 0.4 | 31 |
23 | 山形 | 1.2 | 92 | 47 | 栃木 | 0.3 | 23 |
24 | 茨城 | 1.1 | 85 |
人口10万人当たりの 高齢者虐待 | (指数) | 人口10万人当たりの 高齢者虐待 | (指数) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 滋賀 | 24.8 | 200 | 25 | 長崎 | 11.7 | 94 |
2 | 新潟 | 24.5 | 198 | 26 | 高知 | 11.4 | 92 |
3 | 富山 | 21.7 | 175 | 27 | 熊本 | 11.2 | 90 |
4 | 京都 | 18.8 | 152 | 28 | 岐阜 | 10.9 | 88 |
5 | 長野 | 16.6 | 134 | 29 | 秋田 | 10.7 | 86 |
6 | 東京 | 16.4 | 132 | 30 | 千葉 | 10.7 | 86 |
7 | 大阪 | 16.4 | 132 | 31 | 岩手 | 10.5 | 85 |
8 | 山形 | 16.2 | 131 | 32 | 沖縄 | 10 | 81 |
9 | 石川 | 16.2 | 131 | 33 | 栃木 | 9.5 | 77 |
10 | 兵庫 | 15.3 | 123 | 34 | 愛媛 | 9.5 | 77 |
11 | 福井 | 15.1 | 122 | 35 | 神奈川 | 9.2 | 74 |
12 | 香川 | 14.6 | 118 | 36 | 佐賀 | 9 | 73 |
13 | 島根 | 14.5 | 117 | 37 | 埼玉 | 8.4 | 68 |
14 | 山梨 | 13.9 | 112 | 38 | 奈良 | 8.4 | 68 |
15 | 広島 | 13.9 | 112 | 39 | 山口 | 8.1 | 65 |
16 | 宮城 | 13.3 | 107 | 40 | 宮崎 | 8.1 | 65 |
17 | 岡山 | 13.3 | 107 | 41 | 福岡 | 8 | 65 |
18 | 鳥取 | 13.2 | 106 | 42 | 茨城 | 7.7 | 62 |
19 | 福島 | 12.9 | 104 | 43 | 大分 | 7.7 | 62 |
20 | 和歌山 | 1.3 | 101 | 100 | 北海道 | 7.4 | 60 |
21 | 愛知 | 12.5 | 100 | 45 | 群馬 | 6.4 | 52 |
22 | 静岡 | 12.4 | 95 | 46 | 鹿児島 | 6.4 | 52 |
23 | 青森 | 11.8 | 94 | 47 | 徳島 | 3.3 | 27 |
24 | 三重 | 11.7 | 85 |
子ども虐待は平成27年度の速報値に基づき、障害者虐待と高齢者虐待はいずれも平成26年度における養護者による虐待の件数から、それぞれ作成したものです。なお、都道府県別のデータに統一する必要から、子ども虐待対応件数については、政令指定都市と児童相談所設置市における件数を都道府県に算入して算出しています。
この資料から、人口10万人当たりの虐待対応件数と全国平均を100とした場合の指数で鳥瞰してみると、都道府県による大きな開きのあることが分かります。
子ども虐待は、大阪の187.7人(指数231)を筆頭に鳥取の15.2人(19)を最小値として、実に12倍ほどの開きがあります。
障害者虐待は滋賀の4.0人(308)から栃木の0.3人(23)の約13倍の開きが、高齢者虐待は滋賀の24.8人(200)から徳島の3.3人(27)の約8倍の開きが、それぞれ見てとれます。
これらの数値の開きには、さまざまな要因が介在していると考えることが妥当でしょう。少子高齢化の実情、各領域支援策(サービス量・社会資源配置・連携の状況等)の実態、家族のあり方、そして虐待防止の取り組みの違いなどです。
しかし、最大値と最小値の開きがあまりにも大きい点は、それぞれの都道府県における虐待発生の違いを直に反映した数値でないことは明らかだと考えます。相当程度、自治体による虐待防止の取り組みの格差が、色濃く反映した数値ではないかと推察します。
子ども虐待に中核的な役割を果たす児童相談所は、人口4~7万人に1人の児童福祉司が配置され、今年度からは国による「児童相談所強化プラン」が実施されています。子ども虐待の対応策に不十分な点があるとする指摘は間違いないとしても、この間の国家基準に基づく施策改善の努力には大いに評価することができます。
ただし、子ども虐待対応件数の地域による大きな開きの要因が十分に分析された上での「強化プラン」であるかどうかについては、今後注視していきたいと考えます。
子ども虐待との相対比較でいうと、障害者虐待と高齢者虐待の取り組みについては、もっと深刻な実態があるのではないでしょうか。これらの虐待防止の取り組みは、市町村が核となっており、良くも悪くも「地方分権型」の施策構造となっています。
虐待防止の取り組みの基礎単位が市町村であるというならば、市町村単位の虐待対応件数のデータを公表するのが当然です。虐待防止の取り組みの市町村ごとの実態の基礎的な指標として、詳細に公表されてしかるべきでしょう。
私の経験に過ぎませんが、どの地域に足を運んでみても、虐待防止の取り組みの中で、何も取り組もうとしない自治体とそれなりに取り組んでいる自治体の話題がほとんどで、積極的に取り組んでいるという市町村の話を耳にすることはめったにないというのが実情です。
虐待防止の取り組みは人権擁護の課題ですから、虐待対応件数に地域間格差のあることについて、少なくとも国が要因を分析して説明すべきことであり、自治体間格差の是正に向けた実効的対策を講ずるべきでしょう。
それぞれの自治体は、このような落差の現実を直視し、地域の実情に応じ、地方自治のスピリットに立脚して、虐待問題の克服に向けた不断の努力を具体的に進めるべきだと考えます。
さて、秋の深まりとともに、今年もジョウビタキが渡ってきました。画像に写るジョウビタキのオスは渡って来たばかりらしく、この辺りで様々な鳥が縄張り宣言をするアンテナに留まり、一所懸命に囀っていました。
ジョウビタキの渡る地域は、毎年、「○○町○丁目○番地」の精度で、同じ個体の来ることが分かっています。彼らがもし地域の実情について意見交換する機会があるとすれば、「僕が縄張りにしている自治体の虐待防止は、ダメだね。近所の人が心配して通報しているのに、放ったままなんだよ」「俺のところは、まあまあってとこかな」なんて言い合うのでしょうか(笑)