宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ
疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。
- プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)
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大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。
よっこらしょ
まず、夕方から翌朝までの間は、一つ屋根の下で親子が一緒に過ごすことを守りました。子どもが帰宅する夕方には親も帰宅して、翌朝に子どもと親がそれぞれの活動に向うまでは、一緒に過ごすという原則です。子どもが家に帰ったら「親がいる」という当たり前の日常にこそ、子どもにとってはかり知れない意味があると考えました。
保育所や学童保育の父母会長をしていた当時、延長保育や病児保育は現実的な手立てとしては必要不可欠なものとして運動の課題に据えました。それでも、子どもの権利を議論の出発点にするならば、それらはあくまでも次善の策に過ぎないと考えていました。
親が子どもとかかわるメニュー(公園で遊ぶ、散歩に行く、買い物に行く等)によって効率的な時間の使い方を考えるような発想を排し、とにかく一緒に過ごす暮らしの時間的枠組を大切にしたのです。でもここで、一つ苦労がありました。娘が高等学校に入学するまで、夕方以降に外で飲むことは一度もできなかったのです(笑)。必ず、夕方には家にいるのですから。
次に、毎日の食事を美味しくすることに心を砕きました。家庭の食事は、素材の値段ではなく、栄養バランスと「わが家の美味しさ」がすべてです。家の外で嫌なことがあっても、帰宅しての毎日の夕飯に舌鼓を打って美味しさを共有できるだけで、心はほぐれ、一晩ぐっすり眠れば元気が出てくるものです。
ときどき旬の食材をささやかに奮発します。通常なら1尾98円の冷凍サンマのところ、秋には1尾298円の丸々とした旬の生サンマを塩焼きにします。大根おろしに庭でできた柚を絞って頬張ると、「今日のサンマは美味しいね」と食卓の会話が弾んで家の中に幸せが宿ります。普段は100g98円の鳥モモ肉ソテーですが、たまには1000円前後の鳥一羽を丸焼にして戴くと、滴る肉汁とともに庶民の幸せが腸から込み上げてきます。これはきっと、私の出自に由来する「食い倒れ」の文化なのでしょう。
三つ目が、温かい家であることです。喜怒哀楽のすべてをバランスよく受けとめあう間柄を指しています。「笑顔の絶えない家族」や「子どもが手遊びに夢中になる」というようなポジティヴな面だけに価値づけない受容体であることに意味があります。そうして、喜怒哀楽のそれぞれにふさわしいコミュニケーションが培われます。
以上を実現するためには、もちろん具体的な手立てが鮮明でなければなりません。スーパーで四季折々に出回る食材を手に取って見極めながら、食事を美味しく作ることができなければ、毎日の元気の素を作ることはできません。どちらかといえば料理は作る方でしたが、NHKの料理番組や小林カツ代さんの料理本には本当にお世話になりました。
仕事をしながらの家事・育児には、時間貧乏がつきものです。そこで、浅知恵と悪知恵を駆使したやりくりとなりました。例えば、夕方のタイトな時間帯の買い物は避け、客の少ない閉店間際に見切り売り狙いも兼ねてスーパーに足を運ぶようにしていました。親と仕事の狭間で気持ちが煮詰まりそうになると、温泉に浸かることによって「人生の疲れと垢」を無心になるまで湯に掛け流すようにしていました。