宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ
疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。
- プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)
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大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。
改正児童福祉法
この27日の参議院本会議で改正児童福祉法が成立しました。新旧対照表は、次をご覧ください。
今回の改正における重要点の一つは、東京都23区が児童相談所を設置できることになったことと、国が支援して中核市にも児童相談所の設置を促すことにあります。
28日の朝日新聞朝刊によると、東京23区の特別区長会の会長である西川太一郎荒川区長は、「大変意義のある改正だ。準備が整った区から順次、児童相談所の設置を目指す」と歓迎したと報じています。その一方で、同新聞は、中核市である広島県呉市の担当者の発言を紹介し、「国がどこまで支援するかもよくわからないので、そこを見極めてから検討したい」と報じています。
現在の児童相談所は、一時保護所の設置が必要不可欠ですし、日中の時間帯だけでなく、場合によっては24時間対応が求められることも通常の業務になっていますから、ランニングコストはバカになりません。
激増する虐待対応に関する専門性を持った人材の確保は、「有資格者」などという単純な要件で担保されるわけではありませんし、都市部における設置場所の確保も簡単なものではありません。本来であれば、国による中長期的な展望をもって進めていかなければならない児童福祉・虐待防止対策について、いささか性急な地方分権化への傾きを懸念してしまいます。
とくに、特別区と中核市の児童相談所は、必置義務があるわけではありませんから、国からの財政支援については「サジ加減」次第となります。必置義務の場合と同等に、国による財源手当てをすることは、国が果たすべき最低限度の責任であると考えます。
もう一つの重要な改正点は、改正児童福祉法の第3条の2にあるでしょう。社会的養護のあり方について、里親や養子縁組を含む家庭そのものを子どもの養育環境とすることを原則としたうえで、施設養護についても「できる限り良好な家庭的環境」でなければならないことを明確にした点です。次は、第3条の2の抄です。
「児童が家庭における養育環境と同様の養育環境において継続的に養育されるよう、児童を家庭及び当該養育環境において養育することが適当でない場合にあっては児童ができる限り良好な家庭的環境において養育されるよう、必要な措置を講じなければならない。」
わが国の社会的養護に占める里親委託児童の割合は、12%程度だったと思いますから、里親委託の割合が50~80%辺りを示すOECD主要国の現実との比較でみれば、「家庭的環境」における社会的養護が圧倒的に遅れている点は否めません。
ただし、ソーシャル・ポリシー(福祉政策)による住宅施策がなく、子育ての営みそのものが徹底的に私化されてきたわが国において、里親委託の割合を増大することがすなわち社会的養護の質を上げることにつながる保証は必ずしもありません。里親委託を増大することが社会的養護の質を上げることになる施策の内実がもっと問われなければならないのです。
児童相談所の設置を促進することも、里親委託を増やすことも、自治体の努力にまかせるだけではなく、国が必要な財源を手当てして進めないのであれば、子ども虐待の厳しい現実の改善に資する児童福祉法の改正とは言えないでしょう。今回の改正点の着実な実現を期待します。
さて、わが家の木苺の花が満開を迎えています。セイヨウミツバチやクマバチに交じって、蛾の仲間ながら優美な姿をみせてくれるオオスカシバが現れました。一見、とても蛾とは思えないですね。
その他にも、日本ミツバチにクロマルハナバチなど、複数の、大勢の昆虫たちが花蜜を求めてやってきています。それでも、虫同士の争い事は全く起きないですね。エネルギー資源や穀物の相場でキャピタルゲインをせしめようともくろむ人は、ミツバチに弟子入りしたらどうかと思います(笑)。