宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ
疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。
- プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)
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大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。
ブラック法人・ブラック施設
下関市の社会福祉法人開成会大藤園の虐待事案をめぐり、ついに同施設の職員に逮捕者が出ました。FNNニュースが5月28日に虐待の映像を報じてから、わずか2週間ほどの展開です。
報道では、虐待者である職員や施設長、理事長の実態を表す生々しい映像が流されました。
まず、虐待者である職員です。映像を見せる前にFNNの記者がこの職員に虐待行為のことを訊ねると、そんなことは一切ないと否定しておきながら、映像を突きつけられた途端にしどろもどろの弁解を始めます。
暴行と脅迫の場面で周囲の利用者が黙ったままの様子は、繰り返される暴行・脅迫行為の前にただおびえているというだけでなく、PTSDの症状であるかも知れません。いわゆる「凍てついた凝視」のように無表情になっている様です。
施設長は、虐待行為の映像を見せられて、このような暴力行為があるとは知らなかったと弁解します。その上、知的障害のある利用者に肩を揉ませている映像を突きつけられると「利用者の方から揉んできた」と言うのです。
理事長が暴行を働いた職員を懲戒解雇したと話す映像が流れていました。この法人事業者の組織的な管理運営の問題を等閑に付したまま、トカゲの尻尾切りをするのでしょうか。
施設長は日常化していた複数の職員による暴力・強迫行為を「知らない」と言うだけで、管理責任が問われるべきです。理事長は、このような施設の状況を「知らず」、暴行を働いた職員を「トカゲの尻尾切り」のように懲戒解雇することで組織的な問題の露払いをしようとしていますから、法人全体の経営責任者としてはすでに失格です。
日本財団等が運営するCANPANの団体情報によると、社会福祉法人開成会が「現在特に力を入れていること」として次のような記述があります(「2013年6月26日更新」となっています。http://fields.canpan.info/organization/detail/1156719583)。
「利用者さんの人権、特にプライバシーの侵害、障害者虐待防止法に合わせて職員全体の意思改革に努めています、職員が小グループに分かれ其々のグループで人権、虐待について考え、全体会議の場で発表するなど全員で問題に取り組み事例に合わせて討議をおこない問題点があれば、すぐに対応して改善をしています。」
もし、ここに記されている内容が本当に「特に力を入れて」取り組まれていたとすれば、報道されたような刑事事件にも発展するほどの最重度の虐待事案が発生するはずはありません。法人事業者として利用者とそのご家族を欺くだけの虚言を弄し、実際には虐待防止の取り組みはしないどころか、暴行・脅迫が容認・放置されてきたというのが本当のところだろうと推察します。
千葉県立施設の虐待死亡事件をめぐって第三者検証委員会の委員長を務められた佐藤彰一弁護士は、FNNニュースのコメントで虐待者だけの処分ではなく、この法人事業者の幹部をすべて入れ替えなければならない旨の発言をされていました。
私も全く同感です。チンピラやくざのような職員が、知的障害のある人に激しい暴行・脅迫行為を繰り返し、そのことが組織的に容認・助長されてきたとしか考えることはできません。繰り返しになりますが、幹部職員の「知らなかった」という言い分は、単純な嘘か管理能力の欠如でしかないでしょう。もはや社会福祉法人ではなく、障害者支援事業所でもありません。「障害者支援事業所」を看板に「虐待防止に特に力を入れている」と虚言をいい、その実態は、障害のある人を抑圧しながらカモにして営業を成り立たせている「ブラック法人」「ブラック施設」です。
このような法人事業所は障害のある人の人権を踏みにじっているのですから、利害関係人である市行政・利用者家族・法人事業者の意向いかんにかかわらず、一度解散命令を出して財産を市が没収し、全く別のメンバーによって法人と事業所の再建をはかるよう構想するべきだと考えます。
さて、この新型ベンチを公園や公共の場でよく見かけるようになりました。駅ホームのベンチもほとんどがこのように一人一人の敷居がつくようになりました。一見こ洒落た感じはしますが、真の目的はホームレスと酔っぱらいがゴロ寝したり、居ついたりしないようにするための工夫です。このような社会的排除の仕掛けが至る所にある光景を前に、いささか複雑な心境になりますね。