宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ
疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。
- プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)
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大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。
大田区障がい者虐待防止研修の会場
この3月25日、東京都大田区の障害者虐待防止研修に講師として参加しました。年度末ぎりぎりの日程での研修開催にちょっと不思議な気持ちを抱いていたのですが、会場に到着すると私の疑問はすべて氷解しました。
この研修会は、この3月に開所したばかりの大田区障がい者総合サポートセンターで開催されました。最初に断言しておきますが、市町村関係者に障害当事者・支援事業者職員の方々には、見学を強くおすすめします。
大田区障がい者総合サポートセンターは、生活と就労に係わる総合的な支援を提供するだけではありません。最新鋭のユニバーサルデザインを備えた施設の特徴を最大限に活かし、災害時の福祉避難所としての機能をも考慮して設計されています。
たとえば、この画像は避難生活に活用するためのシャワールームです。車いす利用者の使い勝手を考慮した広さを備えています。ライフラインの断絶にも備え、災害発生から72時間の安全確保のための自家発電装置や飲み水が備蓄されています。緊急時を知らせるためのパトライトは、館内全室に設置されています。
このように徹底したユニバーサルデザインが追求されています。集会室や多目的室は、必ず磁気ループが設置されており、館内の誘導ブロックについても車いす利用に支障の少ない突起の低いものを敷設しています。またエレベーター内の閉じ込め防止の見守りのために、エレベーター外側入口の脇から中の様子が常時確認できるようになっています。
もちろん、「総合サポートセンター」という名称の通り、支援に必要な施設設備という点でも申し分のない仕上がりぶりです。大略次の通りです。相談支援部門(相談支援事業、意思疎通支援事業および大田区障害者虐待防止センター、1階)、機能訓練と生活訓練の2つの自立訓練から構成される居住支援部門(2階)、地域交流部門(余暇活動支援、理解啓発活動、声の図書室、ボランティア活動室、障がい関連情報コーナー等、3階)、就労支援部門(就労移行支援事業、就労定着支援、就労者のたまり場、就労支援ネットワーク、4階)。
私には、各地の自治体が設置するこのようなセンターを視察する機会がしばしばあります。しかし、この大田区のセンターは、大田区における地域生活支援と地域活動の拠点として最大限の機能が発揮できるようにぎりぎりまで考え抜かれて作り込まれたものであることがよくわかります。地域の当事者・事業者の提案力に大田区職員の奮闘努力の合作であり賜物なのでしょう。
スケール
生活訓練の部門には、高さを最適化することのできる流し台が設置されていますし、今回の研修会場となった多目的室の案内板には、倉庫(災害時の備蓄)に室内から直接トイレに行くことのできることが分かります。部屋を出て廊下を通ってトイレに行くルートだけではなく、部屋から直接トイレに行くルートが確保されています。
-避難所機能の考慮されていることが分かる
このようなセンターを作り込める地域には、自治体の財政力だけでなく、自治体職員の政策実務力、地域の当事者・事業者の参画提案力、これら住民・職員の力を活かすことのできる政治等の総合力があるのではないでしょうか。大田区障がい者総合サポートセンターは、施設設備を見学するだけでなく、作り込みのプロセスを含めて視察する意義のある社会資源であると受け止めました。