宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ
疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。
- プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)
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大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。
高知県障害者虐待防止研修会
この2月5日、高知県障害者虐待防止研修会が高知県ふくし交流プラザで開催され、私は講師として参加しました。180名もの参加者は、集中力を切らさず熱心に受講されていました。虐待発生のメカニズムと虐待防止の要点という話のキモには眼線が集中し、ジョークの時は一斉に笑みがこぼれます。とてもリズミカルに話を進めることができました。
このような気持ちのいい研修会となるのは、当日までに心を砕いて準備を担当される裏方の皆さんがあればこそです。もっと大勢の方が研修準備にお骨折りを戴いたと思いますが、この場をお借りして心からお礼申し上げます。
障害のある人にかかわる虐待防止研修では、子どもから高齢者までのすべてのライフステージを含めて、障害者の権利条約を議論の出発点に据えています。国連の障害者権利条約モニタリング委員会の点検で、国際的な基準に鈍感なまま、わが国におけるこれまでの習慣的な取り組みとその判断基準を容認することは、まずありえないと考えます。昨年の10月3日に韓国に対して出された同委員会の勧告がその証左と受け止めています。
さて、全国の自治体の虐待防止への取り組みの中で、共通に指摘される問題点があります。それは、不適切な行為または虐待の発生した法人・事業者ほど、さまざまな虐待防止の研修機会にほとんど全く職員を派遣しない、ましてや幹部職員は絶対参加しないということです。
不適切な行為または虐待が発生した(発生が強く疑われるところを含めて)法人事業所は、通常、障害のある人の権利を守ることに誇りをもてるようなところではなく、一部の経営者・幹部職員の「王国」であることにあぐらを掻いてきたところです。そこで、このような法人事業者・幹部職員ほど、障害者の権利条約を正視することはできないといっていいでしょう。
今週発刊の雑誌、月間『さぽーと』2月号(日本知的障害者福祉協会)には、「障害者権利条約とこれからの施設入所支援」と題する拙文が掲載されます。障害者権利条約の第12条と第19条から、支援付意思決定と地域生活の権利を進める取り組みについて論じたものです。短い小文ですが、ご関心のある方はぜひともお読みいただきたいと思います。
内容の詳細は、『さぽーと』誌2月号に譲りますが、支援付意思決定と地域生活の権利を進めるためには、一つの法人事業者だけが障害のある人の日々の暮らしを自己完結的に支援することはできないはずです。権利条約は入所施設を決して全面否定するものではありませんが、多元的支援システムの中に障害のある人の地域生活が実現される運びになることが必要不可欠だと考えます。
虐待防止との関連で、一つ例示すると次のようになるでしょう。切迫性・非代替性・一時性とそれらの記録を要件とする「やむを得ない身体拘束」や「危険回避のための身体的侵害」の判断は、一つの法人事業所内の職員だけで行ってはならない制度的担保が必要です。このような縛りのあるシステムを明確にすることは、国・自治体の責任です。
「切迫性」があったことを根拠にすでに実施された拘束に対しても、当該事業所と一切の利害関係のない行政職員・他の事業所職員の点検を受けない拘束は、今後すべてを虐待認定とする権利擁護システムが必要です。相当重症度が高くなった虐待・拘束事案が何かの拍子で外に漏れない限り、法人事業者の言い訳や自己正当化の余地を残すような制度的欠陥を是正しないとすれば、国連障害者権利条約モニタリング委員会からの厳しい指摘は回避できないでしょう。
さて、高知は魚介類とお酒の実に美味しい土地です。今回は、格別のジンジャーハイボールを堪能しました。高知産根生姜を1週間以上ウィスキーに漬け込み、それを炭酸水で割ったまさに本格派のジンジャ―ハイボールです。お店は高知市中心部の繁華街帯屋町にある「遊角」。とても素敵な佇まいで、客を落ち着いた空気に包んでくれるお店でした。おすすめです!