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「そんなこと」でも、俺には「大事なこと」なんだ!
 ~がんになってわかった「介護される人」の気持ち~

松崎 匡(まつざき ただし)

現場経験を活かして専門学校で教鞭をとっていた最中に「がん宣告」を受けた松崎さん。
「利用者のため」をモットーに介護にあたってきたつもりが、利用者の立場になってはじめて気付くいろんなこと…。
がんと絶賛同居中(?)の松崎さんのアツい思いをお届けします。

プロフィール松崎 匡(まつざき ただし)

2014年4月より「合同会社M&Yファクトリー」代表社員。
元アルファ医療福祉専門学校教務主任。福祉関連事業所の開業、業務改善などのコンサルティング、研修講師、市民向けの介護講座などのほか、青少年の更生、フリーター、ニートの就職支援などを手掛ける新たな福祉への関わりを中心に活動中!

第3回 やっぱり専門用語はわかりづらいよ 
~専門用語が利用者を不安にさせることもあるんだよ~

 (廊下での看護師さん同士の会話)「OOさん、ICが□時に入っています」
 ・・・???・・・(今、俺のことを話してたよな???)

 今回はこんな会話から・・・
 皆さんは、「IC」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか? これを読んでいる方ならわかるのかもしれませんが・・・

 IC=集積回路
 IC=インターチェンジ

 このあたりが一般的なICではないでしょうか。
 しかし、病院内で使われるICは「インフォームドコンセント」の略で、いわゆる手術前の医師による説明を指しています。

 さまざまな業界でその業界特有の略語なり専門用語ってありますよね?
 介護・福祉業界でもさまざまな専門用語があり、そこに従事する我々は、日常的にその用語を使用しているため、それが「当たり前」の言語になっています。
 僕は常々、「専門用語を利用者さんにわかる言語に通訳できてこそ専門職だ!」と言っているのですが、なかなかそうしたことに気付いて実践する方は増えてはくれません(残念)

 僕の暮らす「がん病棟」は結構リピーター(入退院を繰り返す人)が多く、数をこなす度に、だんだん看護師さんが日常使っている専門用語や略語などは文脈から理解できるようになってきます。
 また、病気が病気なだけに自分で勉強する方も多く、専門用語が飛び交っていても平気な方が多かったりするのですが、これが「がん初心者」だったりすると、こりゃ大変! 「かなり混乱しているな~」と感じる場面にも結構遭遇します。
 ただでさえ初めての治療に緊張して入院してきて、治療に対する知識もなく不安でいっぱいのところに、追い打ちをかけるよう未知の言語が出てくる出てくる・・・。
 そんなときの心理状態に配慮した言葉使いって大事だと思うのです。

 何人もの入院患者さんを見ていて思うのは、これらの専門用語や略語に対して「わからない」と言えない心境があること。
 せっかく説明してくれているのだから悪いな・・・なんて心理状態になってしまいがちなのです。
 これって介護・福祉関係の事業所の利用者さんも同じような心境になっているのではないでしょうか?

 僕自身も入院初心者の頃は、病院内での作法というかルールがよくわからず、手術後ずっと風呂に入れない(シャワーも浴びてない)ままに、2か月が経過していました。
 でも、風呂に入っていいのかを誰に聞いたらよいのかを誰に聞いたらよいかすらわからないまま(かなりややこしいですが)、「だいぶ回復したけどまだ風呂はダメなのかなぁ?」と我慢していました。
 そして、「もう限界!」と思ったときに、担当の看護師さんに勇気を振り絞って聞いたら「あれっ、ずっと入ってなかったんですか?」と聞かれ、かなりヘコんだ経験があります。

 またもや「小さいこと」かもしれませんが・・・

私たちはプロかもしれませんが、利用者さんはあくまでも初めての経験ばかりということを忘れずに!

 廊下での介護職同士の会話なども、声の大きさ次第では利用者の耳に入ってきます。不安な心理状態の人は敏感になっているため、自分のことを言われているというのをすぐに察知します。
 そんなことを頭に入れて「配慮」できる人こそが、人からの信頼を集めるのではないでしょうか?

 利用者さんと話すとき、利用者さんが話の内容を専門用語の意味を含めてきちんと理解できるように話せているだろうか?
 そこを常に意識して行動できる専門職でありたいですね。