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「そんなこと」でも、俺には「大事なこと」なんだ!
 ~がんになってわかった「介護される人」の気持ち~

松崎 匡(まつざき ただし)

現場経験を活かして専門学校で教鞭をとっていた最中に「がん宣告」を受けた松崎さん。
「利用者のため」をモットーに介護にあたってきたつもりが、利用者の立場になってはじめて気付くいろんなこと…。
がんと絶賛同居中(?)の松崎さんのアツい思いをお届けします。

プロフィール松崎 匡(まつざき ただし)

2014年4月より「合同会社M&Yファクトリー」代表社員。
元アルファ医療福祉専門学校教務主任。福祉関連事業所の開業、業務改善などのコンサルティング、研修講師、市民向けの介護講座などのほか、青少年の更生、フリーター、ニートの就職支援などを手掛ける新たな福祉への関わりを中心に活動中!

第2回 介護を受けるってやっぱり抵抗があるよ

 40歳代(介護保険の第2号被保険者)で末期がんの診断を受けた僕。
 「せっかくだからこのレアケースを楽しんでしまおう!」と前向きに考え、「介護保険を利用してみようかなぁ」と周囲にも言っていました。3月まで経営していた会社で訪問介護事業もしていたので、心理的な抵抗もないし、ネタになるじゃん!・・・みたいな。

 しかし、いざ本当に介護保険を申請しようと思うと、なかなか踏み出せない自分がいました。「申請する=自分の負けを認める」ような気持ちというのが近いのかもしれません。
 市役所の介護保険課に相談に行ってはみたものの、「僕はまだまだ介護を受けなくても大丈夫でしょ? 大丈夫って言ってよ」という気持ちになっていた自分がいたのです。
 「介護保険のサービスを受けて、それをドキュメンタリーでレポートしたら面白いじゃん!」って何度も自分に言い聞かせたのですが、今のところその一線を越えることができないでいます。

 ・・・それってなんでだろう?

 ヘルパーさんもやり辛いだろうな。変なことされたら自分は文句言っちゃうだろうな。そんなところに理由を求めたりしたのですが、やはりそうではなくて、自分でできないことを受け入れられないこと、受け入れる勇気がないことが一番の大きな原因なのだと思います。
 こんな状態になって初めてわかったことかもしれません。

 長年介護業界に関わってきた僕ですらこんな風に思うのに、自分が介護を受けるなんて全く想像もしていなかった方がその状態を受け入れる心理的なハードルって、とてつもなく高いのではないかな?
 その原因としてはいくつかあると思うのですが、

  • (1)介護を受けるということに対して利用者側は全然イメージがわかず、説明されても自分にとって必要なことなのかどうかが分からない
  • (2)介護を受けるメリットとデメリットの「比較」ができない環境に置かれている

というところなのではないでしょうか?

 人間、変化を受け入れるには、そこに「メリット」を感じるかどうかが大きくかかわっていると思うのです。が、それに対する配慮がなされた説明ができるかどうか、そんな能力がある援助者に出会えるか出会えないかで、その後に大きな「差」が出てくるものと思います。

 小さいことかもしれませんが・・・
 僕は介護職の皆さんに、ぜひともこの心境を理解してほしいと願っています。僕自身、このような状況になってやっとたどり着いたのですが、この経験を皆さんに伝えることで、少しでも誰かが「気付いて」今後の利用者への関わりに変化をもたらしてくれることを期待しています。

 僕が今、感じていること・・・

「今まで僕が介護職として関わらせてもらった利用者さんたちって、すごい勇気のある方達だったんだ」

 自分でできないことを認める勇気に対して、自分は果たして期待されていたことができていたのだろうか? 期待以上のことができたのだろうか? そう考えたとき、全然できていなかったなと改めて思います。

 介護を受けるって、それくらい勇気のいることなんだと実感した自分だから、あえて言わせてもらいたい。
 「利用者さんの勇気に精いっぱいの敬意を払って、真剣に介護に向き合わなければならない」と感じられる介護職になってほしい。そして、そんな介護職をどれだけ増やせるかが自分に課せられた使命なんだ!