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「そんなこと」でも、俺には「大事なこと」なんだ!
 ~がんになってわかった「介護される人」の気持ち~

松崎 匡(まつざき ただし)

現場経験を活かして専門学校で教鞭をとっていた最中に「がん宣告」を受けた松崎さん。
「利用者のため」をモットーに介護にあたってきたつもりが、利用者の立場になってはじめて気付くいろんなこと…。
がんと絶賛同居中(?)の松崎さんのアツい思いをお届けします。

プロフィール松崎 匡(まつざき ただし)

2014年4月より「合同会社M&Yファクトリー」代表社員。
元アルファ医療福祉専門学校教務主任。福祉関連事業所の開業、業務改善などのコンサルティング、研修講師、市民向けの介護講座などのほか、青少年の更生、フリーター、ニートの就職支援などを手掛ける新たな福祉への関わりを中心に活動中!

第1回 またまた登場! 松崎です。

 2014年6月までこちらで連載させていただいた松崎匡です。

 今回、またこのような機会をいただき、いろいろと介護や福祉について語らせていただきます。

介護される身になって初めてわかった本当のこと

 まず、自己紹介がてらにこの連載のテーマについてお話しします。(他のプロフィールは前回の連載の第1回目を参照してください)

 僕は2010年、介護の専門学校の教員をしていたときに、たまたま受けた人間ドックで異常が発見され「肝細胞がん」と診断された。早期発見だったため、すぐに手術し見事成功! 完治した・・・となればここで話は終わってしまいますが、世の中そんなに甘くはなく、その後再発を繰り返し、現在6回目の再発で入院先の病室でこの原稿を書いています。今やすっかりがん患者のベテランで、病院でも「常連さん」として入院生活を送っています。

 ちなみに、よくいわれる「がんの5年生存率」というのがありますが、これはがんの治療をしてから5年何も起こらなかった人のことを指すのであって、私のように再発をこれだけ繰り返して5年生存しているのはそれには含まれないらしい・・・。

 現在は順調に(?)状態が進行してステージ4-b・・・いわゆる末期がんの状態になっています。

 こう書くとかなりヤバそうな感じがするでしょうが、パッと見は全然そんな風には見えないし、見舞いに来てくれた人も拍子抜けするような状態で、入院等がなければ現在も施設の職員向け研修の講師、介護事業所運営のアドバイザーなどをしています。

 介護の教員をしていたとき、「利用者の立場に立って」「利用者の気持ちを理解して」とある意味それだけを教えていた気がします。自分自身そうしたことが人よりもできているという自信があったので、学生にも「もっと真剣に利用者の心理を読み取れ」というスタンスで教壇に立っていました。しかし、自分がこんな病気になってだんだんと入院中に介護を受けることが増えてきたり、自分でできていたことができなくなっていったりすると、今まで感じたこともなかった「介護をされる身」の本当の気持ちなんかが自分に突き付けられてきているように感じます。

 自分がわかったつもりでいた利用者の気持ちって、まだまだ感じたりなかったな~なんてね。

 この連載では、僕がこのような状態になってあらためて感じたことを皆さんにもぜひ考えてほしいと思っています。

 べつに国の制度をどうこうしようとか、スキルアップしようといったことを伝えたいんじゃないんです!

 利用者にとってはそんなことなんかどうでもよくって、もっと小さなことかもしれないけど介護する側の人に気付いてほしいこと、そんな小さなことだからこそ気付いたらすぐに実行できるだろうから、それを実践して、そこから見えてくるものを何かのきっかけにしてほしいと思うんだな~。

 ってなことを書いていこうと思っています。実際この僕が感じているんだから、日本で少なくとも一人は介護者にこんなことを求めているっていう事実がある。傲慢ですが「俺の話を聞いてくれ!」ちょっと気にしてくれるだけでいいから・・・。「そんなこと」でも俺には「大事なこと」なんだ!

 これからよろしくお願いします。

松崎 匡(まつざき ただし)