梶川義人の虐待相談の現場から
様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。
- プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)
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日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。
もっと科学を!
「もっと光を!」は、知の巨人ゲーテの辞世の言葉です。詩人、劇作家、小説家、自然科学者、政治家、法律家など、肩書きを見ただけでも傑出した人物だったと分かりますから、辞世の言葉にもさぞ深遠な意味があるだろうと思っていました。
しかし、本当はただ「部屋を明るくしてくれ」という意味だったという説もあるといいます。まるで落語の落ちみたいな話ですが、最近、「もっと科学を!」と言いたくなることが続き、私の気持ちにも早く落ちがつかないものか、と思っているところです。
障害者や高齢者の虐待も加えて!
報道によると、警察庁が、児童虐待やストーカー、DVなどの人身安全関連事案の被害相談に関する情報を一括管理し、都道府県警が横断検索できるシステムをつくる方針を決めたそうです。大量の情報を一括管理することで、当初の相談段階からの情報共有ができるので、緊急性の判断の精度を上げ、深刻な被害を防ぐ狙いがあるといいます。
2022年度当初予算の概算要求に11億7400万円を盛り込み、23年度末の完成を目指すそうですが、かなり活きたお金の使い方であるように思います。不要マスクや不具合アプリ、中抜きされた持続化給付金という無駄遣いの現実があるので、なおさらです。
障害者虐待と高齢者虐待の情報も加えて欲しいものですが、肝心なのは、より科学的に物事を考えることですから、省かれてもそう悲観せずとも良いのかもしれません。児童虐待の緊急性の判断にAIが導入される時代ですから、今後に期待したいものです。
ロナルド・フィッシャーの3原則に学ぶ
先日から、認知症介護研究・研修仙台センター様が、令和3年度の老人保健健康増進等事業として行う、「介護保険施設・事業所における高齢者虐待防止に資する体制整備の状況等に関する調査研究事業」の検討委員会のメンバーに加えて頂きました。
時期がくれば詳しくご紹介できると思いますが、事業者が組織的に高齢者虐待防止に取り組むうえで役立つ成果をあげようとしている点では、警察庁の試みに通じるところがありますので、頑張りたいと思います。
一方世間は、1票に一喜一憂する総裁選や総選挙の話題で盛り上がっていますが、私は以前から、選挙制度のあり方には少し疑問を感じてきました。「国会議員は国民の代表である」とか「国民の付託に応える」と言うものの、何だか怪しく思えるからです。
むろん、統計学の巨人ロナルド・フィッシャー(Ronald Fisher)の唱えた実験計画の3原則(無作為化、再現、限局化)を満たせ、などとは言いませんが、少し見習うようにすれば、より信頼に足る結果を得られると思います。
たとえば、「無作為化」からは決まって生じる誤差は防ぐこと、「再現」からは偶然生じる誤差はその大きさを知ること、「限局化」からは余計なものによる影響を防ぐこと、を見習うと、偏った負託により偏った代表が選ばれて国が傾いていくのを防げるのではないでしょうか。
「もっと光を!!」」
「お肌痛めますよ・・・」