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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

虐待防止に主体的に取り組むために

 最近、従事者による高齢者虐待の防止研修について、義務的にではなく、主体的に取り組もうとする意欲を感じることが多くなりました。養護者による虐待は高止まりし、従事者による虐待が過去最高を更新していること受けて、国がこの3月、体制整備の充実や再発防止に向けた取組みを強化するよう、通知を出した影響かもしれません。

 省令が改正され、全ての介護サービス事業者には、虐待の発生やその再発を防止するための委員会を開催し、指針の整備や研修の実施、専任の担当者を置くといったことが義務づけられたのです。

 これで2022年から義務化される障害者分野との足並みが揃いましたから、虐待防止の動きが活発化することを願わずにはいられませんが、委員会や担当者の動き、研修の方法や内容がちゃんとしていないと困ります。

 そこで、このブログでも関連トピックスを取り上げていこうと思います。まずは直近の研修依頼に添えられた事前アンケートのご質問にお答えすることから始めることにします。そのご質問とは、「研修を定期的に実施するためにはどうすれば良いか」です。

 私は前提として、虐待防止を独立したものとして捉えるのではなく、業務改善と一体的に進めると良いと考えます。感染症対策も虐待防止につながる、などと発想するのですが、こうすれば「◯◯」しないという非定型ではなく、「◯◯する」と能動的な表現にすると、より実践しやすくなります。

 また、目的の明確化も前提になります。たとえば、虐待防止のグランドデザインを、見守り、介入、介入支援、教育のネットワークによる、一次予防(未然防止)、二次予防(早期発見・早期対応)、三次予防(悪化・再発防止)だとすれば、「研修を定期的に実施する」ことは、「教育ネットワーク」の構築とその機能化に他なりません。

 ですから、経験年数で求められる虐待防止の知識と技術が異なる点に注目し、下の例を参考に整理してみることをお勧めします。そして、経験年数による階層別研修や内容によって小分けされた研修に参加して貰うようにすれば、個別の育成計画とリンクできます。

「この子はラブラドールです」
「犬種ではなく研修の件で…」