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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

アナグラムでブランディング

 私は仕事の都合上、厚生労働省様の新着情報配信サービスを利用しているのですが、3月17日に「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム第1回会議」が開催されるという情報には少々驚きました。

 私が「ヤングケアラー」に初めて言及したのは、2018年6月のブログ「基準がないならDIY」ですから、正直、「あまりにもスローテンポ過ぎはしないか」と思ったからです。もっとも、「関係者は一体何をやっているのだ!」と、誰かを責める気持ちは微塵もありません。

 驚きより「さもありなん」の気持ちが勝るからです。社会人となって約40年、私が出会ってきた行政の方々の大多数は、仕事もできるし、心もある人々でした。それなのに、新たな社会問題への対応がこんなにも遅いとは、何か構造的な問題があるとしか思えません。

 どんなに優れたレーシング・ドライバーでも、乗るマシンがポンコツでは、勝つにも限界があります。国全体の行政機関をマシンだとすれば、新たな社会問題に素早く対応できるようにリニューアルする時期なのではないでしょうか。

 そこで私なりに考えたら、行政機関をPDCAサイクルに沿って再編成するアイデアが浮かびました。PDCAサイクルはある程度オーソライズされたマネジメントの考え方であり、昨今の行政も多くがこれに沿って仕事を進めていますから、リニューアルの指針としてうってつけです。

 私は、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省など11ある省の人材を、P省、D省、C省、A省に振り分け、P省は計画立案、D省は計画実施、C省はチェック、A省は改善を担うようにしてはどうか、と考えます。

 現在の組織でも、PDCAに相当する仕事は誰かしらが担っていますから、アナグラムのように、各省がともに等しく11の分野から成るように再編するだけです。しかも、分野横断は日常的になり、事業のブランディングを格段に行い易くなります。11分野の再編も必要即応に省内だけで行えるからです。

 そもそもブランディングでは、「マグロと言えば○○のマグロ」などという意識を市場全体に浸透させ、宣伝や販促の費用を抑えながらも顧客を獲得することを目指します。しかし、その商品がユーザーのニーズにいかにマッチし、ユーザーにどれだけ利益をもたらすか強く印象づけないといけませんから、ユーザーの支持を集める良品ありきの話です。

 行政の行う事業については、複数の部署で似たりよったりの事業を展開して無駄が多いとか、市民のニーズにまったく合っていないとか、散々批判されてきましたが、ひとえにこのブランディングの視点が欠けていたからではないでしょうか。

 そして、ブランディングからすれば、ヤングケアラーの問題は非常にキャッチーなため、本来ならもっと早くに全国的に対策を講じて成果を出せていた筈です。今売れると分かっている商品の発売を、3年近くも遅らせる企業はない、というのと同じです。

「僕のブランディング戦略!」
「ただのデート商法だよ・・・」