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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

スタンダード100曲選

 遠隔授業は私に新しい経験をさせてくれます。通勤時間ゼロ、学生の出席率は過去最高、私語は皆無、課題やアンケートのやり取りは簡単で個々の学修程度も把握しやすいなどです。もっとも、肝心なのは「学生にとってはどうなのか」ですから、録画をして学生目線も体験してみました。

 第一印象は「悪筆な板書の書き写しから開放されて快適だろう」でしたが、何回も見るうちに、「重要なのは学生と私のコミュニケーションの質」ではないか、という気がしてきました。

 他者の著した教科書を使う私は、オリジナルをカバーする歌手のような存在です。小手先のごまかしは通用せず、食い入るように見続けられるプレゼンテーションにしないといけません。テレビドラマの脚本家が画面を切り取ってくさびを打ち込むかのように、です。

 対面授業も同じと言えば同じですが、遠隔授業はさらに高いハードルを求めます。結果、虐待防止研修を遍く広く行う方法を模索する私は、にわかユーチューバーのようになりました。ウェブ会議の録画機能を使い、eラーニングの研修動画の作成に試行錯誤中です。

 研修は、1本1テーマで15分程度にすると使い勝手は良さそうなのですが、短いながらもハリウッド映画のシナリオの3幕構成は踏まえたいので、テーマ選びは一仕事です。ジャズ好きの私は、まるで「スタンダードを100曲選べ」と言われたような気分です。

 全体像なら、「取組みの全体像:取組みのマネジメント・サイクル」、「発生予防策:虐待好発の構図に注目した発生予防」、「発見の方法:見守りの方法、戦略的な地域づくり」など。

 初期段階なら、「通報・届出:広報と心情的な忌避感の解消」、「通報と届出の受理:やりとりの留意点」、「緊急性評価」、「虐待の判断」、「専門家の協力や意見の必要性の判断」、「受理後の動き:緊急一時保護と緊急性に応じた動き」、「事実確認の方法:準備品目例や立入調査の要否判断」など。

 対応の核となる部分については、「事前評価(アセスメント)の方法:虐待発生の説明」、「リスク要因を網羅的に把握する方法」、「長所・短所や強み・弱みの分析方法」、「虐待発生と対応機序の一貫した説明」、「緊急性の判断と支援方針の決定:緊急性に応じた方針」、「実効性ある対応計画の作成方法」でしょうか。

 個別対応なら、「支援スタイル:(1)洞察促進、(2)エンパワー、(3)解決構築、(4)認知行動変容、(5)折衷」、「対応計画の実施:個別援助の流れ」、「参加性が悪い場合の対応」、「当事者との信頼関係構築の方法」、「対応チームの進捗管理とリーダーによる統括の方法」は外せません。

 終結の段階なら、「家族再統合の可能性の判断」、「終結の判断」、「事後評価の方法」、「事例データベース構築の方法」などは如何でしょうか。

 しかし、全体に通底するものとして、「多専門職・多機関協働チームによる対応(事例検討等)の方法」、「記録の方法:記録の妥当性と信頼性の向上方法」もあると良いと思います。

「猫踏んじゃったぁ~」
「選ばれないかも…」