メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

TIME’S UP×2

 年明け早々、気になる情報を目にしました。まず、読売新聞(8日付朝刊)の「保育施設への改善指導、公表自治体1割満たず」という記事です。同新聞社の調査によると、保育施設に対する検査権限のある121の自治体うち、改善指導を行った施設名と指導内容を公表している自治体は1割に満たず、公表しない理由として目立つものに「人手不足で手が回らない」という理由が含まれているといいます。

 同新聞社の2017年度の調査では、人手不足などで検査態勢が追いつかず、3割程度の施設は検査自体未実施だそうです。これでは、保護者への情報開示が不十分どころか、そもそも実態すら「誰も把握できていないのか?」と心配になります。実効ある打開策を見出すための第一歩すら、まだ踏み出していないかにみえるからです。

 つぎに、平成31年度の厚生労働科学研究事業のなかに、「児童虐待におけるAIを活用したリスクアセスメントシステムに関する研究」が含まれていることです。アセスメントの精度を向上するために、項目の精査や情報共有のあり方を検討したうえで、児童虐待対応の現場における対応力の向上を図る計画だといいます。

 これに関連して、、「被虐待児童保護にAI活用 三重県、産総研と連携」(7日付産経ニュース)という記事も気になります。三重県様は、虐待が疑われる児童の一時保護の要否判断にAIを活用する実証実験に、産業技術総合研究所と連携して取り組むそうです。より多くの現場に導入されてアセスメントの精度が上がることに期待が膨らみます。

 もっとも、私の頭のなかでは、保育施設の検査や改善指導に携わっておられる方々と、時間内にタスキを次の選手に渡せず「繰り上げスタート」された選手たちの姿が重なります。どんなに頑張っても「人手不足」のために期待に応えられない人と、気を失うほど頑張ったのにタスキを渡せない人の姿がだぶるのでしょう。

 本当になんとかならないのでしょうか。数は少ないとはいえ、全施設を検査したり公表したりできている自治体はあるのですから、必要な人員数などは自ずと分かるはずです。予算的な問題があるとしても、然るべき立場の方々が然るべき手続きをふめば、不可能だとは思えません。

 奇しくも、今年のセクシャルハラスメントへの反対運動“TIME’S UP”の連帯の象徴は”TIME’S UP×2”で、ゴールデングローブ賞授賞式への参加者の多くが、思い思いのリボンテープを着用していました。「×2」というのは、バツではなく「2年目」の意味だそうです。保育施設の検査や改善指導の公表についても、「×」が幾つもつかないようにしたいものです。

「開発しました!施設検査ロボ」
「大き過ぎでしょう!!」