梶川義人の虐待相談の現場から
様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。
- プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)
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日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。
凄いぞ!彩の国。
「埼玉県虐待禁止条例」が今年7月に公布され、来年4月1から施行されます。この条例は、児童、障害者、高齢者の三虐待を分野横断的にカバーしている点で、おそらく全国初の条例です。
「禁止」の語を用い、虐待問題に取り組もうとする県の強い意志を感じますが、私は法律の専門家ではなく、解釈を誤っているかもしれませんから、あくまでも私感としてご笑読頂きたく思います。
私は、この条例に何回か目を通し、思わず「凄い!」と唸りました。理由は、三虐待の防止法の条文に文言が【追加】されたり、内容が【明示】されたり、法にはない事項が新たに【規定】されているからです。具体的には以下のとおりです。
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ところで、それまで身近な関係にあった者による、基本的人権侵害に相当する行為を包括的にとらえた言葉として、警察の用いる「人心安全関連事案」があります。大雑把に言えば、三虐待にDV防止法とストーカー規制法を足したイメージです。
私は、人心安全関連事案は、一本の法律でカバーするのが良い、と考えますから、埼玉県様の条例に、DVとストーカーも含められたらさらに素晴らしかったと思います。しかし、現在の行政の仕組み(いわゆる縦割り行政)の下、それを求めるのは酷なのかもしれませんし、一本化を段階的に目指すのが現実的だとも思います。
しかし、認知症者の引き起こした事故に関して、養護者も被害者もともに救うべく、三方一両損の仕組みを発案した、神奈川県大和市様と神戸市様の事業には、励まされる思いがします。前者は民間保険利用、後者は公費利用であり、それぞれに長短両所あるようですが、少なくともリバース・イノベーションの起爆剤になりうるからです。
同様に、埼玉県様の条例が、虐待問題に関して、わが国のリバース・イノベーションの起爆剤になることを期待せずにはいられません。
「地ビールも忘れないで!」