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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

ブログを分析してみました(その2)

 前回に続いて、このブログの共起ネットワーク図の分析を。

 第6に、虐待の当事者としてお馴染みの「息子」と「夫」と「妻」がつながって抽出されています。私が「虐待の底流に家族問題あり」とみて、ときどき言及しているせいでしょうか。

 第7に、「通報」を中心に、「児童・障害・DV」と「相談」の流れと、「事実確認・判断」の流れに分かれています。前者は、私が人身安全関連事案としてのつながりを意識しているので当然だと思いますが、後者のような初動対応につながっているのは意外でした。

 この点、私は警察の「機動捜査」に注目しています。とくに、普段は管轄内をパトロールしており、重要事件が発生すると現場に急行して初動捜査に当たる、という動きですが、いずれ整理してブログに書いてみたいと思います。

 第8に、「専門」と「機関」と「チーム」がセットで抽出されています。虐待に限らず、対人援助は、何度も「多専門職・多機関間協働が前提だ」と書いてきたためだと思いますが、より良いあり方の追求に関しては、いまだ道半ばの感があります。

 第9に、「発生」が、「要因」や「仕組み」や「予防」とペアで抽出されています。これらは、発生の仕組みを見立てたり発生予防の策を考えたりする、重要ポイントであるため、私もいろいろ書いてきました。当面は虐待問題の各分野における相違点を整理することになると思いますが、最終的には、人身安全関連事案全般を体系的に説明できるようになりたいと考えています。

 第10に、「発見・事前評価・計画」という対応のマネジメント・サイクルと、「情報・知識・技術」の流れの関連が抽出されています。

 これは、「対応の機序」にまつわることを書いてきたためだと思いますが、私は今、対応のマネジメント・サイクルに、フィードバック制御とフィードフォーワード制御を組み込みたいと考えています。

 つまり、結果をみながら少しずつ修正していくフィードバック制御だけでは、対応は後手に回りやすいため、予めゴール(落としどころ)を仮定し、そこから逆算して今なすべきことを考える、フィードフォーワード制御を組み入れたい、というわけです。

 問題は、いかに正確な予測をしてゴール設定するかですが、熟練者はこれをちゃんと行っています。言ってしまえば「豊富な経験」のなせる業なのでしょうが、その仕組みを明らかにしたいと思います。

 他にも、「認知・行動」、「割合・高い」、「施設・行為」、「対人・援助」、「実態・把握」、「研修・参加」、「実践・研究」、「立場・立つ」、「良い・悪い」という語がペアで抽出されています。

 いずれも私の口癖のような言葉ですが、強調したいのは以下の4点です。

 一つは、『「プラス面」と「マイナス面」からながめてみること』、二つは、『虐待問題は、発生でも対応でも、ポイントは「相手の立場に立つ」ことにある』、三つは、『「認知・行動」に着目するとご利益が大きいこと』、四つは、『実践と研究と教育の「トライアンギュレーション」が大切なこと』。

 分析は以上ですが、予想外によく整理できたように思います。今後の羅針盤のようなものを得た感じさえします。

「鳥瞰するなら、今はまだ、
ネットワーク図くらいが無難です」