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ケアプランに活かす! 病気と薬の知識

【骨粗鬆症】症状や種類から予後まで、ケアマネが押さえたいポイントを徹底解説! 【医師が監修】

骨粗鬆症の症状や原因、予後など、ケアマネジャーが押さえておきたいポイントを現役の医師が詳しく解説します。

【執筆・監修】

鶴岡浩樹

日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科(専門職大学院)教授
つるかめ診療所副所長
順天堂大学医学部を卒業後、 自治医科大附属病院総合診療部などでの勤務を経て、2007年につるかめ診療所(在宅診療)を開設。2013年より日本社会事業大学専門職大学院教授。

目次

1.骨粗鬆症ってどんな病気?

70歳以上の2人に1人が該当する、骨がもろくなる病気

 骨粗鬆症とは、骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気のことです。骨は、骨梁と呼ばれる棒状の骨が縦横に連結して支えられています。しかし、骨粗鬆症では、その骨梁が細くなったり切れたりして、骨の内部がスカスカとなります。また、骨量(骨全体に含まれるミネラルの量)も低下するため、骨が折れやすくなります。
 70歳以上の人のうち、2人に1人が骨粗鬆症だといわれていますが、初期は無症状のことが多く、検診などで行われる骨密度検査が診断の助けとなります。また、腰痛、背中が曲がってきた、身長が縮んだ、などをきっかけに見つかることもあります。

2.骨粗鬆症の症状は?

脆弱性骨折を起こすことがある

 骨粗鬆症を背景とする骨折を脆弱性骨折と呼びます。①脊椎圧迫骨折、②大腿骨頸部骨折、③橈骨遠位端骨折が代表的で、これらの骨折は在宅介護の現場でADLやQOLに大きく影響します。

①脊椎圧迫骨折
 尻もちや転倒したときのほか、咳やくしゃみでも起こることがあります。脊椎がつぶれた状態であり、骨折部位の背部痛のほか、立ち上がり、歩行、かがむときに痛みが生じます

②大腿骨頸部骨折
 転倒や身体をひねる動作などで生じることがあり、足のつけ根の痛みと腫れを引き起こします。立位や歩行が困難となります。

③橈骨遠位端骨折
転んで手をついたときに生じやすいです。橈骨遠位端とは手首の親指側のことで、手首の痛み、腫れ、発赤、偏位などを引き起こします

3.骨粗鬆症の原因は?

加齢に伴い発症する。特に女性は要注意

 加齢に伴い発症します。特に女性は閉経後にエストロゲンという女性ホルモンの分泌が低下し、骨量も低下するため骨粗鬆症になりやすいです。また、カルシウムやビタミンDの摂取不足、運動不足、喫煙、過度な飲酒などは骨粗鬆症の危険因子です。

4.骨粗鬆症の予防のポイントは?

生活習慣の改善と、定期的な検査が鍵

 骨粗鬆症の予防のポイントは、大きく5つあります。

  • ・適切な栄養(カルシウム、ビタミンD)の摂取、運動など、生活習慣を改善する。
  • ・禁煙、節酒など、嗜好品を控える。
  • ・ビタミンDの生成を促すため、日光浴が推奨される。
  • ・定期的な骨密度検査で骨粗鬆症をモニタリングする。
  • ・家屋に手すりを設置する、すべりにくい靴下を着用する、段差を解消するなど環境を改善し、転倒を予防する。

5.骨粗鬆症の治療法は?

3つの治療法がある。骨折の治療は、骨折部位によって異なる

 骨粗鬆症の治療法は、主に食事療法、運動療法、薬物療法(骨吸収抑制剤、骨形成促進薬、骨・カルシウム代謝調整薬)の3つがあります。 また、骨折に対しては、以下のような治療法があります。

①脊椎圧迫骨折
 保存療法(安静、疼痛コントロール)、コルセット着用、経皮的バルーン椎体形成術(Balloon Kyphoplasty: BKP)。

②大腿骨頸部骨折
 外科的治療が基本。骨接合術、人工骨頭置換術の2種類の方法が一般的です。

③橈骨遠位端骨折
 保存的に徒手的整復しギプス固定、手術でプレート固定の2種類があります。

6.骨粗鬆症の予後は?

骨折をきっかけに要介護や寝たきりのリスクが高まる

 骨粗鬆症は、ロコモティブシンドローム(ロコモ)の原因疾患としても知られています。ここで取り上げた3種類の骨折のほか、上腕骨近位部(肩に近い部分)骨折もよくみられ、これらの骨折により要介護状態になることが珍しくありません。
 また、骨折する部位によって、以下のような生活への影響が生じます。

●橈骨遠位端骨折
 手首の骨折のため、食事、着替え、整容などADLに影響します。

●大腿骨頸部骨折や脊椎圧迫骨折
 ADLが制限され、認知症の発症や悪化のリスクが高まります。

 骨折をきっかけに寝たきりになると、肺炎、褥瘡、下肢静脈血栓症などを合併するリスクも高まります。言い換えれば、ロコモ、骨粗鬆症、認知症が負の連鎖を引き起こし、要介護や寝たきりのリスクを高めるということです。

7.ケアマネジャーが押さえておきたいポイントは?

日常生活の注意点・観察ポイント日常生活の注意点・観察ポイント

  • ・70歳以上の人のうち、2人に1人が骨粗鬆症だと意識して利用者や介助者と接する。
  • ・転倒や尻もちだけではなく、ひねったり、ぶつけたりしただけでも簡単に骨が折れる。ベッドの手すりに腕をぶつけて骨折した事例もある。ケアスタッフに注意喚起を
  • カルシウムの多い食品(牛乳、乳製品、小魚、緑黄色野菜、大豆)をおさえる。
  • ・カルシウムを吸収するためにはビタミンD(鮭、サンマなどの魚、きのこ類)の摂取が必要。
  • ・転倒防止のため、療養の場の環境を整える。

医療職に確認しておくこと医療職に確認しておくこと

  • ・投薬内容。
  • 療養中の姿勢などの注意事項。圧迫骨折では、上半身の重みが骨折への負担となるので側臥位安静が基本。
  • ・コルセットなど装具の注意点。

使える制度使える制度

  • ・骨折を伴う骨粗鬆症は、介護保険では2号被保険者の適用。

この記事を監修した人

鶴岡浩樹

日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科(専門職大学院)教授
つるかめ診療所副所長
順天堂大学医学部を卒業後、 自治医科大附属病院総合診療部などでの勤務を経て、2007年につるかめ診療所(在宅診療)を開設。2013年より日本社会事業大学専門職大学院教授。

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