ケアプランに活かす! 病気と薬の知識
【ケアプラン記入例】すぐ使える!糖尿病の利用者のケアプランの書き方&文例【ケアプラン点検者監修】
【監修】
阿部充宏(合同会社介護の未来代表)
社会福祉法人に25年勤務し法人事業部長や特別養護老人ホームの施設長を経て、2015年に合同会社介護の未来を興し、以降現職。2016年よりケアプラン点検事業を受託し、2022年度は11保険者(神奈川県・岩手県・福島県・山形県)で、年間約600人のケアプラン点検を実施。また、指定市町村受託事務法人として、5保険者から委託され、年間100事業所の運営指導を行っている。
高齢者に多い糖尿病のある人のケアプランの書き方・文例を解説します!
1 糖尿病ってどんな病気?
糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンという血糖値を低くするホルモンの作用が不足し、慢性的に高血糖の状態が続く病気です。
主として若年者がかかるⅠ型糖尿病と、中年以降の人が過食、運動不足、肥満、ストレスなどが誘因となり、インスリンのはたらきが悪くなって起こるⅡ型糖尿病があります。
2 糖尿病の治療は?
●運動療法 | 有酸素運動に加え、筋肉トレーニングなどの無酸素運動も効果的です。 |
●食事療法 | 過食にならないよう、食べる量を調整します。医師や管理栄養士の指導を受けることが重要です。 |
●薬物療法 | 糖尿病でよく使われる薬は、直接インスリンを補充するインスリン製剤や肝臓のインスリン分泌を促進する薬、ブドウ糖の吸収や排出を調節する薬があります。 気をつけたい副作用は、低血糖です。主な症状は、脱力感、発汗、動悸、手足の震え、頭痛、空腹感等です。 |
3 糖尿病の利用者のケアプランの書き方のポイント
生活習慣への意向を具体的に引き出す
糖尿病の治療は、運動・食事・服薬が重要です。日常生活に密着にかかわることだからこそ、利用者本人の希望や意向を引き出し、ケアプランに記載します。「〇〇はやりたくない」「〇〇は苦手」などマイナスな気持ちも大切にします。例えば、「集団での体操はやりたくない」「苦みのある野菜全般が苦手なので、献立を工夫してほしい」などです。
目標はできるだけ数値化する
糖尿病の利用者への支援計画として、「できるだけ」「やれるだけ」「可能な範囲で」「無理なく」といったあいまいな表現では、結果を評価することができません。「体重を52キロにする」「1日2回(朝食前・夕食前)にスクワットを15回する」など可能なものは数値化することで、利用者やチームメンバーの目標に対する意識が共有化され、目標の達成状況も確認しやすくなります。
4 糖尿病の利用者のケアプランの文例
4-1 利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
- ・(本人)糖尿病が悪化するのは嫌だが、食べることは大好きなので、太りすぎに気をつけながら、好きなものを食べたい。
- ・(本人)一人では薬を飲み忘れたり、逆に多く飲んでしまったりすることがあるが、適切に服用したい。
- ・(長男)遠方(実家から公共交通機関で3時間)に住んでいるため、日常の面倒をみることが十分にできません。月に1・2回電話連絡をしていますが、自宅にばかりいるようなので、もう少し身体を動かせる機会がほしいと思います。
- ・(次女)母は甘いものが大好きなので、好きなものを食べてほしいですが、入院はせずに自宅で過ごせるようサポートしてほしいです。
- ・(今後の方向性)食事量・内容を調整し、目標の体重(64キロ)を目指していきましょう。
- ・(今後の方向性)好きなものを食べ続けることができるよう、血糖値を安定させるため(血糖値120mg/dl以下)、楽しみながらできる運動、糖質を抑えた食事を重視していきましょう。
4-2 総合的な援助の方針
- ・糖尿病の状態を安定させることを第一に食事管理や服薬管理により血糖値をコントロールできるようサポートします。
- ・体重(〇〇kg)を維持していくため、食事量・食事内容の確認を行います。ご本人自身が管理できるよう、食事内容や体重の状況を一緒に確認していきます。
- ・低血糖で入院することがないよう、インスリン注射・服薬の声かけ、残薬の確認を徹底します。
- ・生活への不安や手足のしびれが確認された場合には、訪問看護ステーション(000-0000-0000)に連絡し、必要に応じて医師の指示を受けます。
4-3 生活全般の解決すべき課題
- ・インスリン自己注射を忘れることがあり、糖尿病が悪化する可能性があります。
- ・標準体重を超えていますが、食べることの楽しみも大事にしながら減量したい。
- ・疲れやすく体力がありませんが、外出できるようになりたい(本人の意向に妻の墓参りがしたいというモチベーションがある)
- ・糖尿病の数値が安定しないときがありますが、入院することなく自宅で過ごしたい。
- ・薬を飲み忘れることがありますが、血糖値をコントロールできるようになりたい。
4-4 長期目標・短期目標
- ・(長期目標)体重が68キロになっていること。
(短期目標)体重が71キロになっていること(令和6年7月30日現在74キロ)。 - ・(長期目標)お薬カレンダーから薬を取り出し、確実に服薬できること。
(短期目標)声かけ・見守りを受けて、お薬カレンダーから薬を取り出し、服薬できること。 - ・(長期目標)自宅から約400m先の公園まで散歩できること。
(短期目標)自宅から約200m先のスーパーまで歩いて行けること。 - ・(長期目標)ヘモグロビンA1c値が平均6.5を維持していること。
(短期目標) カロリー計算された食事(1日1600kcal)を食べることができること。 - ・(長期目標)インスリン自己注射を正しく行い、低血糖を起こしていないこと。
(短期目標) 見守りを受けて、インスリン自己注射をできること。
5 ケアプラン作成におすすめの書籍
もっとケアプランの書き方・文例を知りたい人は以下の書籍を参考にするのもおすすめです。文例・事例が豊富に掲載してあり、ケアプラン作成に悩んだときにヒントとなる情報が満載です。
改訂 文例・事例でわかる 居宅ケアプランの書き方
文例・事例でわかる 施設ケアプランの書き方
この記事を監修した人
阿部充宏氏(合同会社介護の未来代表)
社会福祉法人に25年勤務し法人事業部長や特別養護老人ホームの施設長を経て、2015年に合同会社介護の未来を興し、以降現職。2016年よりケアプラン点検事業を受託し、2022年度は11保険者(神奈川県・岩手県・福島県・山形県)で、年間約500人のケアプラン点検を実施。また、指定市町村受託事務法人として、5保険者から委託され、年間100事業所の運営指導を行っている。
介護の未来ホームページ:https://kaigonomirai.net/
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