ケアプランに活かす! 病気と薬の知識
【ケアプラン記入例】すぐ使える!パーキンソン病の利用者のケアプランの書き方&文例【ケアプラン点検者監修】
【監修】
阿部充宏(合同会社介護の未来代表)
社会福祉法人に25年勤務し法人事業部長や特別養護老人ホームの施設長を経て、2015年に合同会社介護の未来を興し、以降現職。2016年よりケアプラン点検事業を受託し、2022年度は11保険者(神奈川県・岩手県・福島県・山形県)で、年間約600人のケアプラン点検を実施。また、指定市町村受託事務法人として、5保険者から委託され、年間100事業所の運営指導を行っている。
高齢者に多いパーキンソン病のある人のケアプランの書き方・文例を解説します!
- 目次
1 パーキンソン病ってどんな病気?
中脳の黒質という部位の神経細胞が減少し、身体をスムーズに動かすことに関連するドパミンという神経伝達物質が減少することによって起こる疾患です。主な症状として、手足のふるえ、こわばり、動作が鈍くなる、転びやすいなどが挙げられます。ほかにも、身の回りのことへの関心が薄れる、着替えや洗顔などをする気力がなくなるといった症状があらわれることもあります。
2 パーキンソン病の治療は?
パーキンソン病は薬剤投与が中心になります。パーキンソン病の薬は、不足しているドパミンを補う薬が多いです。
副作用としては、ドパミン補充薬の長期投与によるオン・オフ現象(薬の効果が効いている「オン」と、突然薬の効果が切れて身体が動かなくなる「オフ」とを繰り返す)やウェアリング・オフ現象(薬の効果の持続時間が短くなり、内服直後や時間が経ったときに効果が切れる)などがあるため、注意が必要です。
よく使われる薬
分類 | 商品名 |
ドパミン補充薬 | マドパー、ドバストン、ドパール、メネシット、イーシー・ドパール、ネオドパゾール、デユオヂーパ、スタレボ |
ドパミン受容体作動薬 | パーロデル、ペルマックス、カバサール、ドミン、ビ・シフロール、ミラペックス、レキップ、ニュープロ、アポカイン |
抗コリン薬 | アキネトン、アーテン、トレミン、パーキン、ペントナ、トリモール |
3 パーキンソン病の利用者のケアプランの書き方
「できること」に着目した記載にする
パーキンソン病は、徐々に進行し、機能が低下していくことで、将来への不安が大きくなったり、意欲が低下したりしてしまうこともあります。本人が「していること」「できていること」に着目し、サービス内容にはセルフケアを位置づけるなど、本人の意欲を引き出す記載を心がけましょう。
例えば、「自宅内の移動が自分でできること」という短期目標に対して、サービス内容欄には、「朝食前に足上げ体操をします」など習慣として行っていることなどをセルフケアとして記載します。
チームとしての共通の指針を明確にする(総合的な援助の方針)
パーキンソン病は薬物治療が基本となります。決まったタイミング・量を服薬できているのか、副作用の症状は出ていないか、薬が効いていない時間帯はあるか、など確認する必要があります。特に、病状が進行すると、症状が変動しやすくなります。チーム全員が、利用者の自立を阻害している状況と要因、また、そのなかにある課題の中核を理解し、日常生活への影響を防ぐために、最も留意すべきことを共有できるよう記載します。
例えば、「服薬忘れにより足元のふらつきがみられることがあるため、『服薬(残薬)の確認と声かけ』を行います」のように具体的にします。
4 パーキンソン病の利用者のケアプランの文例
4-1 利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
- ・(本人)身体が思うように動かないのでやる気が起きませんが、買い物には一人で行きたい。
- ・(次女)病気になる前は、地域の役員をするなど活動的でした。もう少し身体を動かしてほしいと思いますが、転んでしまわないか心配です。
- ・(今後の方向性)ご本人も自覚していますが、立ち上がるときや歩くときに、ふらつくことなどがあります。薬物治療や歩行機会の確保、歩行時の見守りによって、「転倒せず、買い物に行ける」ことを目指しましょう。
4-2 総合的な援助の方針
- ・先月(令和5年8月)より薬の量が増えています。薬の副作用(吐き気、食欲不振)などが起きていないか確認し、起き上がって過ごせる時間を増やせるようにします。
- ・令和6年2月より、声が出しづらくなりうまく話せない状況があります。支援チームとしては、できるだけ声をかけるようにし、本人の話に耳を傾けることを大切にします。
- ・ふらつきのない安定した歩行となるよう「歩行時の付き添い、見守り」を第一にサポートします。
- ・薬が効いていない時間が長くなる場合には、速やかにかかりつけ医(TEL:〇〇〇‐〇〇〇〇-〇〇〇〇)に相談します。
4-3 生活全般の解決すべき課題
- ・右手に震えがありますが、身だしなみ(化粧をする・髪をとかす)は自分で整えたい。
- ・服薬を忘れることがありますが、確実に服薬できるようにしたい。
- ・立位のバランスがとれずに転びやすい状況です。
- ・声がかすれて思うように話せないことがありますが、誰とでも会話ができるようになりたい。
- ・膝を動かしにくいことで、日中は約10時間座りっぱなしですが、調理ができるようになりたい。
4-4 長期目標・短期目標
- ・(長期目標)身だしなみ(化粧をする・髪をとかす)を整えることができること。
(短期目標)鏡を見ながら、ヘアブラシをもって髪をとかすことができること。 - ・(長期目標)お薬カレンダーから薬を取り出し、確実に服薬できること。
(短期目標)声かけ・見守りを受けて、お薬カレンダーから薬を取り出し、服薬できること。 - ・(長期目標)手引き歩行で転ぶことなく、文化会館(自宅から約150メートル)まで歩くことができること。
(短期目標)手引き歩行で転ぶことなく、ゴミステーション(自宅から約50メートル)まで歩くことができること。 - ・(長期目標)長女と会って、1時間ほど近況を話せること。
(短期目標)長女や近所の人と15分ほど世間話ができること。 - ・(長期目標)下準備から盛りつけまで、自分で調理ができるようになること。
(短期目標)調理の下準備(洗う・切る等)ができるようになること。
5 ケアプラン作成におすすめの書籍
もっとケアプランの書き方・文例を知りたい人は以下の書籍を参考にするのもおすすめです。文例・事例が豊富に掲載してあり、ケアプラン作成に悩んだときにヒントとなる情報が満載です。
改訂 文例・事例でわかる 居宅ケアプランの書き方
文例・事例でわかる 施設ケアプランの書き方
この記事を監修した人
阿部充宏氏(合同会社介護の未来代表)
社会福祉法人に25年勤務し法人事業部長や特別養護老人ホームの施設長を経て、2015年に合同会社介護の未来を興し、以降現職。2016年よりケアプラン点検事業を受託し、2022年度は11保険者(神奈川県・岩手県・福島県・山形県)で、年間約500人のケアプラン点検を実施。また、指定市町村受託事務法人として、5保険者から委託され、年間100事業所の運営指導を行っている。
介護の未来ホームページ:https://kaigonomirai.net/
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