ケアプランに活かす! 病気と薬の知識
【ケアプラン記入例】すぐ使える!誤嚥性肺炎の利用者のケアプランの書き方&文例【ケアプラン点検者監修】
【監修】
阿部充宏(合同会社介護の未来代表)
社会福祉法人に25年勤務し法人事業部長や特別養護老人ホームの施設長を経て、2015年に合同会社介護の未来を興し、以降現職。2016年よりケアプラン点検事業を受託し、2022年度は11保険者(神奈川県・岩手県・福島県・山形県)で、年間約600人のケアプラン点検を実施。また、指定市町村受託事務法人として、5保険者から委託され、年間100事業所の運営指導を行っている。
高齢者に多い誤嚥性肺炎のある人のケアプランの書き方・文例を解説します!
1 誤嚥性肺炎ってどんな病気?
食べ物や飲み物、唾液を肺に吸い込むことで起こる肺炎です。睡眠中などに無意識のうちに唾液が肺に流れ込む不顕性誤嚥が多くみられます。脳梗塞後遺症の基礎疾患やアルツハイマー病末期になると、嚥下機能が低下し、発症しやすくなります。
2 誤嚥性肺炎の治療は?
誤嚥性肺炎の治療は、まず食事を止めて、誤嚥の原因を少なくしてから、抗生物質の投与を行います。食事を止めるため、多くの場合は入院をして点滴を行うことが必要です。
よく使われる薬
分類 | 商品名 |
ペニシリン系薬 | ビクシリン、ペントシリン |
セフェム系薬 | ケフレックス、セフゾン、バナン、フロモックス |
マクロライド系薬 | クラリス、クラリシッド、ジスロマック |
テトラサイクリン系薬 | ミノマイシン、レダマイシン、ビブラマイシン |
キノロン系薬 | クラビット、シプロキサン、ガチフロ、アベロックス |
3 誤嚥性肺炎の利用者のケアプランの書き方のポイント
予防の視点で、阻害要因を明確にする
誤嚥性肺炎は、発症後の入院リスクや重症化した場合の死亡リスクが高いことが特徴です。そのため、誤嚥性肺炎を発症させない、重症化させない、という予防の視点から、目指すべき生活を阻害している(阻害することが予想される)要因を明確に示すことが大切です。
「食事の際、むせ込みがありますが、むせずに食事ができるようになりたい」「入れ歯の手入れを忘れてしまうこともありますが、見守りを受けて、自分でやることを維持したい」などです。
体調の変化時や緊急時の対応を示しておく
誤嚥性肺炎は進行が早いこともあり、体調に異変がみられたときは迅速な対応が求められます。緊急時の連絡先を書くだけでなく、どのような状態が緊急事態であるのか、その場合の対応方法をチームで共有し、ケアプランに示します。「発熱がみられた場合、かかりつけ医(TEL:〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇)に連絡し、助言を求めます」「食後にぐったりした様子がある場合は、すぐに訪問看護ステーション(TEL:〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇)に相談します」などです。
4 誤嚥性肺炎の利用者のケアプランの文例
4-1利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
- ・(本人)食事のときにむせ込むことがあるので、むせ込まない食べ物や食べ方を教えてほしい。長男に迷惑をかけないよう、肺炎で入院することなく、一人暮らしを続けたい。
- ・(長男)母の希望どおり、一人暮らしが続けられるよう、月に1・2回は自宅を訪問し、一緒に食事をしたり、家事を手伝ったりしたい。
- ・(今後の方向性)食事時にむせ込むことがありますので、飲み込みの訓練を受けたり、飲み込みやすい食事の工夫を学んだりし、再び肺炎を起こすことなく自宅での生活が続けられるようにしていきましょう。
4-2 総合的な援助の方針
- ・令和5年6月に誤嚥性肺炎で入院され、7月に退院されました。一人暮らしが継続できるよう嚥下機能の訓練と食事状況の見直しをし、むせ込むことなく食事ができることを第一に、支援をします。
- ・支援チームでは、体調の変化に注意し、発熱、むせ込みの異変が生じた場合は、速やかに医師の助言を得るようにします(緊急連絡先:〇〇医院〇〇医師 〇〇〇-〇〇〇○‐〇〇〇〇)。
- ・令和5年3月と9月に誤嚥性肺炎を患い入院し、10月に施設等に入居しました。チーム方針として「誤嚥性肺炎を再発しないこと」を目標に、食事時の状況(食事内容、姿勢、飲み込み方など)を確認します。
- ・体重の減少や咳き込みの増加などがみられた場合には、かかりつけ医(〇〇クリニック〇〇医師)に相談します。
4-3 生活全般の解決すべき課題
- ・食事の際にむせ込みがありますが、むせずに食事ができるようになりたい。
- ・むせずに食事をするための調理の工夫などわかりませんが、見守りを受けながら、自分で調理することを継続したい。
- ・体重の減少がみられます(5月から7月で3kg減少)。
- ・入れ歯の手入れができないこともありますが、口のなかを清潔に保てるようにしたい。
4-4 長期目標・短期目標
- ・(長期目標)飲み込み状態を改善し、誤嚥性肺炎を起こさないこと。
(短期目標)食事時のむせ込みが減っていること。 - ・(長期目標)飲み込みやすい食事の調理ができていること。
(短期目標)飲み込みやすい調理メニューを3品は自分でつくれるようになること。 - ・(長期目標)自分で口腔ケアができていること。
(短期目標)見守りを受けて、歯磨きや入れ歯の手入れができること。 - ・(長期目標)食事をむせずに食べることができ、48kgになること。
(短期目標) 体重が46kgになっていること(令和6年4月現在、体重44kg)。
5 ケアプラン作成におすすめの書籍
もっとケアプランの書き方・文例を知りたい人は以下の書籍を参考にするのもおすすめです。文例・事例が豊富に掲載してあり、ケアプラン作成に悩んだときにヒントとなる情報が満載です。
改訂 文例・事例でわかる 居宅ケアプランの書き方
文例・事例でわかる 施設ケアプランの書き方
この記事を監修した人
阿部充宏氏(合同会社介護の未来代表)
社会福祉法人に25年勤務し法人事業部長や特別養護老人ホームの施設長を経て、2015年に合同会社介護の未来を興し、以降現職。2016年よりケアプラン点検事業を受託し、2022年度は11保険者(神奈川県・岩手県・福島県・山形県)で、年間約500人のケアプラン点検を実施。また、指定市町村受託事務法人として、5保険者から委託され、年間100事業所の運営指導を行っている。
介護の未来ホームページ:https://kaigonomirai.net/
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