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ケアプランに活かす! 病気と薬の知識

【肺炎・気管支炎】症状や種類から予後まで、ケアマネが押さえたいポイントを徹底解説! 【医師が監修】

肺炎・気管支炎の症状や原因、予後など、ケアマネジャーが押さえておきたいポイントを現役の医師が詳しく解説します。

【執筆・監修】

鶴岡浩樹

日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科(専門職大学院)教授
つるかめ診療所副所長
順天堂大学医学部を卒業後、 自治医科大附属病院総合診療部などでの勤務を経て、2007年につるかめ診療所(在宅診療)を開設。2013年より日本社会事業大学専門職大学院教授。

目次

1.肺炎・気管支炎ってどんな病気? 

肺や気管支が炎症を起こしている状態

 肺炎は肺に、気管支炎は気管支に炎症を起こしている状態です。肺炎の多くは細菌やウイルスによる感染症が原因ですが、誤嚥性肺炎や間質性肺炎など、さまざま種類があります。特に高齢者では、誤嚥性肺炎がよくみられます。
 肺炎は、戦後、抗生物質が開発されるまでは日本人の死因の第1位でした。現在においても、年によって異なりますが、日本人の死因の第3位から第5位を推移しており、常に上位に位置します。年齢別では、70歳を境に肺炎による死亡率が上昇します。

2.肺炎・気管支炎の症状は?

発熱や咳などの風邪と似た症状。高齢者では症状が現われにくい

 肺炎や気管支炎の主な症状は、発熱、咳、痰などであり、風邪症状とよく似ています。風邪症状が長く続いたり、呼吸苦があるような場合には、肺炎や気管支炎を疑います。
 一方で、高齢者の場合、これらの典型的な症状が出ないことが多く、元気がない、食欲不振、反応が鈍い(意識障害)、失禁などがきっかけで見つかることがあります。

●肺炎と気管支炎

3.肺炎・気管支炎の原因は?

細菌やウイルスなどさまざまな原因で生じることがある

 肺炎には、細菌性肺炎や真菌性肺炎、誤嚥性肺炎、間質性肺炎など、いくつかの種類があります。代表的なものを紹介します。

●細菌性肺炎

 肺炎球菌やインフルエンザ桿菌などの細菌が原因で生じる肺炎です。
 細菌性肺炎で最も原因となることが多いのは、肺炎球菌による肺炎です。飛沫感染や接触感染によって広がっていきます。

●マイコプラズマ肺炎

 マイコプラズマという病原体による肺炎です。施設や通所で集団発生する非定型肺炎の代表といえます。感染経路は、飛沫感染と接触感染が中心です。
*非定型肺炎…通常の細菌性肺炎で投与するβラクタム系抗菌剤が効かない肺炎の総称

●誤嚥性肺炎

 食べ物や飲み物、唾液を肺に吸い込むことで起こる肺炎です。睡眠中などに無意識のうちに唾液が肺に流れ込む不顕性誤嚥が多くみられます。

●間質性肺炎

 肺には吸い込んだ酸素と二酸化炭素を交換する肺胞という組織があります。通常の肺炎が肺胞の炎症であるのに対し、間質性肺炎では肺胞の壁や周囲の組織(間質)に炎症が起こります。慢性関節リウマチなどの膠原病で合併することがあります。

4.肺炎・気管支炎の予防方法は?

手洗い・うがいのほか、ワクチン接種も効果的

●日常生活

 日常的な手洗い、うがいや、マスク着用などの咳エチケットが重要です。また、歯磨きをはじめ、日頃の口腔ケアを継続することは、誤嚥性肺炎のリスクを軽減する点においても重要です。
 このほか、以下のような点にも留意しましょう。

  • ・食事形態や姿勢といった摂食時の工夫
  • ・(寝たきりの人の場合)臥床時は30度程度ヘッドアップする
  • ・(気管切開している人の場合)気管チューブのカフ圧を調整する

●ワクチン接種

 毎年のインフルエンザワクチン接種と、基礎疾患のある人は肺炎球菌ワクチンの実施が効果的です。

5.肺炎・気管支炎の予後は?

高齢者ではADL低下や認知症のリスクが高まることも

 COPDなどの肺疾患、心疾患、腎不全、糖尿病、がんなどの基礎疾患がある場合は、肺炎を罹患しやすく、重症化しやすいといわれています。
 高齢者では、肺炎治療中にADLが低下することが知られており、35%が要介護状態に、14%が寝たきりになるという報告もあります。特に脳血管障害、肺疾患、心疾患などがある場合は、ADLが低下しやすいため、注意が必要です。また、肺炎罹患者は、認知症になるリスクが罹患していない高齢者よりも2.25倍高いという報告もあります。
 誤嚥性肺炎を起こす人は、繰り返すことが多く、経管栄養実施の決断を迫られるケースも少なくありません。最近の研究で、繰り返す誤嚥が老衰状態を引き起こすともいわれています。

*COPD…慢性気管支炎と肺気腫の総称。慢性閉塞性肺疾患。Chronic Obstructive Pulmonary Diseaseの略。

6.肺炎・気管支炎の治療は?

薬物療法が中心

 原因によって治療薬は異なります。

  • 細菌性肺炎:βラクタム系抗菌剤(セフェム系やペニシリン系など)を投与することが多い
  • マイコプラズマ肺炎:マクロライド系抗菌剤
  • 真菌性肺炎:抗真菌薬
  • 誤嚥性肺炎:βラクタム系およびβラクタマーゼ阻害薬など
  • 間質性肺炎:ステロイド剤、免疫抑制剤など
  • 結核:抗結核薬

7.ケアマネジャーが押さえておきたいポイントは?

日常生活の注意点・観察ポイント日常生活の注意点・観察ポイント

  • ・手洗い、うがい、口腔ケアなど日常の予防習慣が大切
  • 高齢者の肺炎は、発熱がない、元気がない、反応が鈍いなど、非典型的症状が多い
  • ・むせたり、咳き込みがなくても誤嚥性肺炎のことがある(不顕性誤嚥)。
  • ・在宅酸素の利用者は肺炎にかかりやすい。
  • ・ケアマネジャーも毎年インフルエンザワクチンを実施する。

医療職に確認しておくこと医療職に確認しておくこと

  • ・ワクチンを実施しているか
  • ・急変時の対応
  • ・入院が必要な場合の後方病院
  • ・施設、事業所の場合は、感染予防

使える制度使える制度

  • ・特発性間質性肺炎は、難病指定のため難病医療費助成

この記事を監修した人

鶴岡浩樹

日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科(専門職大学院)教授
つるかめ診療所副所長
順天堂大学医学部を卒業後、 自治医科大附属病院総合診療部などでの勤務を経て、2007年につるかめ診療所(在宅診療)を開設。2013年より日本社会事業大学専門職大学院教授。

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