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臼井二美男の 伴走者こころえ
――義肢装具士がめざす好循環――

臼井二美男(うすい・ふみお)

事故や病気で足を失った人たちのために義足を作り続けて30年。義肢装具士として義足ユーザーたちの声に耳を傾け、「装う」「学ぶ」「遊ぶ」「表現する」「働く」「走る」など、生きる喜びや自信を取り戻せるように試行錯誤を重ねている。臼井流の「支える」ための努力、気遣いを伝えます。

プロフィール臼井二美男(うすい・ふみお)

公益財団法人鉄道弘済会 義肢装具サポートセンター 義肢装具研究室長・義肢装具士。
1955年群馬県生まれ。義肢装具士として義足製作に取り組む。89年からスポーツ義足の製作を開始。91年に、義足の人のための陸上クラブ「ヘルスエンジェルス」を創設。2000年のシドニー大会以降、パラリンピックの日本代表選手のメカニックとして同行する。他にも、義足アート、ファッション、大学との共同研究など、活躍の幅を広げている。

関連サイト
鉄道弘済会義肢装具サポートセンターHP
ヘルスエンジェルスHP

関連書籍
・『カーボンアスリート』山中俊治著 白水社 2012
・『義足ランナー』佐藤次郎著 東京書籍 2013
・『切断ヴィーナス』 越智貴雄 撮影 白順社 2014

第12回 スポーツ+ファッション+日本科学未来館

 昨年の12月7日に、東京のお台場にある日本科学未来館(以下:科学未来館)で義足アスリートたちによるファッションショーを行いました。大きなホールの巨大な地球儀の下で、15人のメンバーがカジュアルな衣装を身につけて、走る、飛び跳ねるなどの躍動感あふれるパフォーマンスを披露しました。


 12月の障害者週間にあわせて、科学未来館で「誰でもアスリート」というイベントが行われ、そのなかのファッションショーに私も協力しました。この話がどこからきたのかというと、昨年の4月に日本科学未来館で「世界一展」という催しがあったときに、そのひとつとして写真集『切断ヴィーナス』や義足アスリートの写真を展示したり、それらを撮影した写真家の越智(おち)貴雄さんや、工業デザイナーで一緒に義足のデザインを研究している東京大学の山中俊治先生とトークショーをしたのがご縁です。2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されることが決まり、科学未来館でも継続してPRをしていきたいという思いがあるようで、また義足のイベントをやりましょうと言われていました。

 ファッションショー当日は、義足ランナーの陸上チーム「ヘルスエンジェルス」のメンバーの男子3名、女子12名に声をかけ、モデルを務めてもらいました。みんな義足ですが、パラリンピックをめざしているアスリート、高校生や大学生、最近結婚したばかりの女性など、背景はさまざまです。シアタープロダクツというブランドの衣装とPUMAのシューズを身につけ、プロのスタイリストにメイクをしてもらい、ヒューマンビートボックス(口でDJの音を出す)のアーティストのラップに合わせてリズミカルにウォーキングやランニング、縄跳び、ボールの投擲などを披露しました。300人ぐらいの来場者があり、楽しんでもらえたようで、とても反応もよかったです。

 一般の人からみると、「障害がある人はかわいそう」とか「助けてあげないといけない存在」だと思われがちです。でも、この笑顔と躍動感いっぱいの彼らを見てもらえれば、けっしてそうではない面を感じてもらえると思います。

 実は、企画段階で主催者側から人数をもっと減らしてほしいと言われたのですが、大勢の観客に囲まれてたった5人で舞台に立つのと、15人でやるのとでは全く違う雰囲気のパフォーマンスになると思います。数が多いことで、お客さんに「義足の人ってこんなにいるんだ」と単純に思ってもらえますし、パフォーマンスする側のメンバーの心強さや自信が違ってきます。ただ物めずらしがられて終わっては、出演したメンバーは傷つくのではないかと思ったので、どうしても観客を圧倒するような人数でやる必要があったのです。周りの都合を優先するのではなく、本人たちの気持ちを想像して、それを守れるように、本人たちが「やってよかった」「楽しかった」と思えるように、コーディネートすることを心がけています。