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アトリエから始まる「探究活動」

アトリエ活動で育む子どもの創造性

 保育園や幼稚園では、日々子どもたちがさまざまな創作活動を行っています。1つのことにじっくり長時間取り組む子どももいれば、興味や関心が薄れたら別のおもちゃに目移りする子どももいることでしょう。
 ただし、一つの遊びを発展させて、より深く・広く取り組むことは、子どもの成長にも有効のようです。

制作活動の課題とは?

 日本総研が2022年に行った調査では、保育者が子どもとの接し方で課題と感じていることは「子ども一人一人に丁寧にかかわること」「子ども一人一人の個性の把握、成長支援」に続いて、「子どもが楽しむ遊びの提案力」を37.9%の保育者が課題ととらえていました。
 子どもが遊びに飽きてしまう原因を考えると、以下の理由が考えられます。

・発達に合ったおもちゃではない(難しすぎる、簡単すぎる)
・発展性がない
・遊び方がわからない など

 保育所や幼稚園では一人で遊ぶというよりは、友だちと複数人で遊ぶ機会が多いと思いますが、その分、多くの選択肢があるために、飽きたら別の遊びへ、という循環が可能であるという側面があります。ですから、遊びを続かせない要素が素地としてあることを理解しておきましょう。

レッジョ・エミリア・アプローチとは?

 そんな園におススメしたいのが、レッジョ・エミリアの考え方と実践です。イタリアのレッジョ・エミリア市で行われてきた幼児教育は、世界中の実践者によって広められ、日本でもおなじみかと思います。アトリエリスタとよばれる創作活動の専門家が、子どもの探究心を育むかかわりを実践しています。写真と文章で構成された保育記録「ドキュメンテーション」で有名ですね。
 子どもとの対話を重ねることで、その子どもの今の思いを大切にして、より深い・広い視野を提案するアトリエリスタのかかわりは、まさにプロフェッショナルとよぶにふさわしいものです。
 レッジョ・エミリアの実践に関する書籍は多数出版されていますが、ここでは、昨年12月に発行された新刊『アトリエからはじまる「探究」 日本におけるレッジョ・インスパイアの乳幼児教育』から、子どもの遊びを考えてみます。

日本の保育に取り入れよう!

 『アトリエからはじまる「探究」 日本におけるレッジョ・インスパイアの乳幼児教育』は、レッジョ・エミリアの幼児教育の特徴の一つである「アトリエ活動」について、具体的に解説した初めての書籍です。渋谷区立渋谷保育園の実践を通して、日本の保育現場で実践するためのポイントを紹介しています。

渋谷保育園のアトリエ活動「光の探究」の様子

 東京大学大学院教育学研究科の浅井幸子先生は、子どもたちの探究について、次のように話します。
「子どもたちは「なぜ」「どうして」「どのようにして」とたえず問います。その世界への問いかけに、答えを与える のではなく、子どもたちと大人たちが一緒に問いを深め、知識を共同で構築するプロセスが探究です」
 このように、探究とは保育の高度な専門性を必要とするかかわりであり、だからこそ日々子どもから学ぶことが大切といえます。
 加えて、レッジョ・エミリアの保育を単に模倣するのではなく、日本の保育現場にどのように解釈し落とし込んでいけばよいのかは、多くの実践者の悩みどころです。渋谷区立渋谷保育園は、公立保育園としてアトリエリストの津田純佳さんを迎え、「光の探究」をテーマに、アトリエ活動を展開してきました。年齢ごとにどのように光をとらえ、探究心を深めていったのかが、写真と文章で解説されています。

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