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ルポ・いのちの糧となる「食事」

下平貴子(出版プロデューサー・ライター)

食べること、好きですか? 食いしん坊な私は、食べることが辛く、苦しい場合があるなんて考えたことがありませんでした。けれどそれは自分や身近な人が病気になったり、老い衰えたりしたとき、誰にも、ふいに起こり得ることでした。そこで「介護食」と「終末期の食事」にまつわる取り組みをルポすることにしました。

プロフィール下平貴子(出版プロデューサー・ライター)

出版社勤務を経て、1994年より公衆衛生並びに健康・美容分野の書籍、雑誌の企画編集を行うチームSAMOA主宰。構成した近著は「疲れない身体の作り方」(小笠原清基著)、「精神科医が教える『うつ』を自分で治す本」(宮島賢也著)、ほか。書籍外では、企業広報誌、ウェブサイト等に健康情報連載。

第159回 湘南リフシアネットの
食環境改善事業 Vol.2

はじめに

 前回より全5回で株式会社リフシアネットが取り組んでいる地域高齢者の在宅生活の質を高める「食環境改善事業」についてご紹介しています。

冷凍おかず弁当を在宅へ
タンポポのやわらか食弁当

 前回は「医療機関や施設に向けた栄養サポート付き配食サービス」について紹介しました。
 親会社である株式会社リフシアが運営するデイサービスや小規模多機能型居宅介護などへの配食(2014年、月16000食の製造)からスタートした「セントラルキッチン タンポポ」は、2015年、配食先(株式会社リフシアの事業所)の拡大により月20000食超の製造規模となり黒字化(現在は30000食/月)しました。
 その後、配食数の拡大よりもメニュー開発や栄養ケアに力を注ぎ、2017年からは「在宅向け栄養サポート付き配食サービス」を開始しています。

在宅向け栄養サポート付き配食サービス

「タンポポのやわらか食弁当」は基本的に嚥下調整食学会分類2013の3-4に準拠した物性(現状、利用者の状況から基準よりやわらかめに調理)のおかずのみを盛り合わせた弁当で、1セット7種が4コース提供されています(通販も)。

 2017年3月に国が公表した「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理に関するガイドライン」に基づき、利用者や利用したいという人の食の困り事、ニーズに応えながら製品設計を続けていて、既に「えんげ食」「エネルギー制限食」にも対応しています。
 もとより、塩分は1食2g以下ですし、利用する人に複数の栄養制限があるなどの場合に「食べる量を●割に控える」といった簡単な方法で調整しやすい献立を組んでいるといいます。
 仕様は「菌汚染のリスクを極力防ぐ」「温めるだけで食卓に出せる」よう冷凍の弁当にしたそうです。
 約半年の賞味期間があるので、ストックしやすく、介護者が多忙なときや非常食などに利用する使い方もいいでしょう。実際、株式会社リフシアが運営する介護施設で急な増員時の食事などに活用されているとのことです。
 どのメニューも、とろみがついたタレがたっぷりついているのも特徴です。在宅では、お弁当と一緒に食べる主食の物性が食べる人に適していない場合もあるため、タレと合わせていくらかでも調整し、安全に食べてほしいという配慮です。
 次号で詳しく紹介しますが、食べる人やご家族それぞれに適した食べ方やその意味を伝え、食事中の経過やその後の様子についてフォローするのを「栄養サポート」のうちとしていて、配食事業というより地域高齢者の在宅生活の質を高める「食環境改善事業」の自負をもっています。

 写真は解凍前後の「やわらか食 白身魚の野菜あん弁当」(販売価格660円、通常ラベルは製品の上に添付されています)。製品には一つずつバーコードがついていて、有事の際は製造過程を追えるということでした。  たんぱく質がしっかりとれ、食材品目も豊かな献立です。家庭料理では真似できない白身魚の野菜あんと、家庭の味らしい肉じゃがのセットで、贅沢なおかずでした。

やわらか食

白身魚の野菜あん弁当


 次回に続きます。

 *株式会社リフシアネットの食環境改善事業の全サービスに共通する「栄養サポート」についてはVol.3にまとめます。