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ルポ・いのちの糧となる「食事」

下平貴子(出版プロデューサー・ライター)

食べること、好きですか? 食いしん坊な私は、食べることが辛く、苦しい場合があるなんて考えたことがありませんでした。けれどそれは自分や身近な人が病気になったり、老い衰えたりしたとき、誰にも、ふいに起こり得ることでした。そこで「介護食」と「終末期の食事」にまつわる取り組みをルポすることにしました。

プロフィール下平貴子(出版プロデューサー・ライター)

出版社勤務を経て、1994年より公衆衛生並びに健康・美容分野の書籍、雑誌の企画編集を行うチームSAMOA主宰。構成した近著は「疲れない身体の作り方」(小笠原清基著)、「精神科医が教える『うつ』を自分で治す本」(宮島賢也著)、ほか。書籍外では、企業広報誌、ウェブサイト等に健康情報連載。

第126回 対話の場&対話を促す介護職を増やしたい! 
地域で活躍する介護職の背中を押す試み

はじめに

 以前、この連載でもご紹介した「未来をつくるkaigoカフェ」を主宰する高瀬比左子さん(第74回第75回)は、一方で、医療・介護に携わる人が主宰する対話の場を全国に広げるため、ファシリテーションが学べる講座を開いてきました。
 このほど、これまで東京のみの開催だった講座を、全国各地で開催していくとのことで、お話をうかがいました。

地方にこそ“つなぎ役”が必要!
各地へ養成講座の出前を計画

 東京など大都市近圏では、介護職とその他の専門職が顔の見える関係になり、互いの専門性を理解し合う機会なども比較的、見つけやすいようです。
 既に地域の中で、実際にケアの連携をしながら、コミュニケーションを深め、学び合う組織も多数あります。さらにはそのような組織に市民も加わっていたり、むしろ市民が率先し、専門職ともつながって地域におけるケアについて対話し、アクションを起こしている地域も見られます。
 しかし、地方では人的資源が乏しいなどの理由で、連携や対話の機会になかなか恵まれず、地域の未来に明るい展望を持てず苦悶している介護職も少なくないのではないか。
 高瀬比左子さんは、2016年から東京で開催してきたファシリテーター養成講座で、遠方より駆けつけてくれた受講者との対話からそのような懸念を抱いたそうです。

「たったひとりで、未来に希望をもち続けるというのは困難です。職場内の風通しが悪かったり、ほとんど地域につながりをもっていなかったり。孤独な介護職は少なくないようでした。
 状況を自ら変えようと、地方から講座に参加した方々は、場づくりやファシリテーションの具体的なノウハウ等を学び、先駆者や同志との信頼できるつながりを得て地元に帰り、何らかのアクションを起こしています。
 しかし、状況を変えたくてもどうしたらいいか分からない、さまざまな事情で遠方には行けない、という人も多いでしょう。『未来をつくるkaigoカフェ』の地方出張の機会にも、そのようなことをよく耳にしました。
 それなら、カフェの地方出張でできた地縁・人縁を活かし、各地にファシリテーター養成講座が出向いて行けばいい。多職種連携といっても、“多職種”が揃わない地域や、これまでほとんど医療・介護に携わる人たちの交流がなかった地域などこそ、市民も含めてつながりをつくることが急務で、そのつなぎ役となれる人が必要です。
 介護職がそうした役割を担うことは、未来に向けて介護職の存在価値を高めることにもなります。地域で活躍する介護職がもっと増えてほしくて、講座を外に出していくことを考えました」(高瀬さん)。

 そもそも高瀬さん自身が着実にキャリアラダーをのぼりながら、未来をイメージできなかったことから「未来をつくるkaigoカフェ」開催に至ったという経緯があるため、このまま放っておけない気持ちが強かったとのこと。

「今も、都心にも閉塞感が強い地域というのはあるのではないかと思いますし、ましてや以前は何処でも、職場外の専門職交流などは困難でしたから、かつて私も孤独でした。
 だから『介護職の孤独』がもたらすネガティブな連鎖が想像できるのです。
 実際、カフェを開いてみたら、カフェがもたらすポジティブな連鎖は偉大でした。
 閉塞感から解放されて、意欲が上がり、何かあっても対話できる仲間ができると、状況は変わっていなくても、働き方が変わります。同じように1歩を踏み出し、楽しく、自分らしく働ける介護職が増えることを願っています」(高瀬さん)

 現在のところ開催日程などは未定ですが、「kaigoカフェファシリテーター 養成講座」と題して、地域でつなぎ役になれる人材、地域・職場でカフェを主催できる介護職を増やすことを目的としたファシリテーター養成講座プログラムを練っているとのこと。
 カフェなど“場づくり”やファシリテーションの手法だけでなく、介護職が地域でそうした活動を行う意義や背景から学べ、多数の先駆例を具体的に学んで、自分の地域にあった“場づくり”を企画するワークなども取り入れた講座を準備中だということです。

「地域で生活をしていて、ケアを求める人たちの真の要望に応えるには、対話によって地域の資源を最大限に活かしていく必要があるでしょう。
 今後、地域ケアを引っ張っていくのは、カリスマ性がある人というより、さまざまな職種・立場・個性・展望がある人それぞれの強みを引き出し、対話を促せるリーダーです。
 私たち介護職が、ぜひともその担い手となっていきたい。“対話”は介護職の強みになります」(高瀬さん)

 高瀬さんは「kaigoカフェファシリテーター 養成講座」を実現するため、クラウドファウンディングにもチャレンジをしています。
 成功したあかつきには、クラウドファウンディングで得た資金を全国での講座開設経費(テキスト制作や講座運営費等)の一部として利用していく考えです。詳細は以下のサイトをご覧ください。
 また、kaigoカフェファシリテーター 養成講座の詳細が決まったら、未来をつくるkaigoカフェのウェブサイトやフェイスブックでお知らせするとのことです。

  • 高瀬さんがチャレンジしているクラウドファインディングはこちら
    もしくは、「レディーフォー kaigoカフェ」で検索
お問い合わせは、
 miraikaigocafe@gmail.com
 http://www.kaigocafe.com
 https://www.facebook.com/miraikaigocafe/