ルポ・いのちの糧となる「食事」
食べること、好きですか? 食いしん坊な私は、食べることが辛く、苦しい場合があるなんて考えたことがありませんでした。けれどそれは自分や身近な人が病気になったり、老い衰えたりしたとき、誰にも、ふいに起こり得ることでした。そこで「介護食」と「終末期の食事」にまつわる取り組みをルポすることにしました。
- プロフィール下平貴子(出版プロデューサー・ライター)
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出版社勤務を経て、1994年より公衆衛生並びに健康・美容分野の書籍、雑誌の企画編集を行うチームSAMOA主宰。構成した近著は「疲れない身体の作り方」(小笠原清基著)、「精神科医が教える『うつ』を自分で治す本」(宮島賢也著)、ほか。書籍外では、企業広報誌、ウェブサイト等に健康情報連載。
第65回 栄養ケアを社会に行き渡らせよう!
WAVES「元気に食べてますか?」運動
主催した一般社団法人チーム医療フォーラム代表理事・秋山和宏先生(東葛クリニック病院副院長)に尋ねたところ、終了後に各班から細かな反省点が挙げられていて、それらとマニュアル班が作成した素案をもとに、近日、参加者が地元などで運動を行う際に最低限、統一して行うこと等をまとめた『「元気に食べてますか?」運動マニュアル』を制作、参加者に周知するとのことです。
また秋山先生は「今後、希望する参加者には『開催支援セット』(提供:パンフレット、Tシャツ、トートバック、貸与:のぼり)を送付するので、ぜひ、各人の地元でキャンペーンを実施していただき、WAVESの気運を高め、東口先生の活動をサポートしたい」と話します。
そして秋山先生自身が10月4日、東葛クリニックみらい(千葉県松戸市)にて開催された「秋のふれあい健康まつり」にて、「元気に食べてますか?」運動を実施したとのこと。一方、参加者の1人、中村悦子さん(一般社団法人海凪代表理事)も運営している「みんなの保健室わじま」(石川県輪島市)で10月15日に開催した「第3回秋の健康フェア」にて「元気に食べてますか?」運動を実施したとのことです。
両名のみならず、参加者の多くが以前からそれぞれの地元で一般を対象に健康啓発事業などを行ない、継続している面々なので、それぞれの取り組みの中に「元気に食べてますか?」運動を組み入れていくケースも多くみられそうです。
筆者は、先に「元気に食べてますか?」運動を告知する記事で、「『元気に食べていますか?』という一言の声がけは、高齢者の『生活の質の低下予防・病気予防・介護予防』のきっかけになるだけでなく、家庭と社会の平穏と、ムダな医療費や介護費を抑制することにもつながる、さまざまな“よい変化”を生み出す可能性をもっている」と書きました。
今回、その初の試みに同行し、参加者と来場者の交わる様子を見て、社会に大きな変化を生み出す可能性をもつことを確かめながら、この運動は起き、広がり、各地で続くこと、とくに医療の外にいるリスクが高い人をみつけるため、一般の意識改革と運動への参加こそが重要になるであろうと感じました。
街頭で配布されたパンフレットに掲載されている漫画も、「元気に食べてますか?」と声をかけられ、栄養ケアの大切さに気づいた高齢者が「元気に食べてますか?」運動に参加するようになる、というストーリーです。この物語の通り、一般の意識改革+α、身近な他者への啓発活動につなぐ教育の広がりが期待されます。
同時に、参加者の方々からお話を聞いて高齢者の栄養障害が既に社会全体の問題であることを再認識し、とはいえ現状、多くの元気な人にとっては未だ「飽食の時代」で、「ダイエット」に関心が高く、「栄養障害」は他人事だと思っていて、そのイメージをつくる一旦は筆者も含め報道や出版が担ってきたことを省みました。社会の現状を踏まえ、栄養ケアやサルコペニア予防の大切さに気づき始めた報道や出版の一旦で、伝えることを担い、社会貢献する医療人を微力ながら支援したいと思いを強くしました。