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ほじょ犬って、なあに?

橋爪 智子 (はしづめ ともこ)

身体障がい者の生活を支える、「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」。そんな補助犬たちにまつわる話を紹介するコーナーです。

プロフィール橋爪 智子 (はしづめ ともこ)

NPO法人日本補助犬情報センター専務理事 兼 事務局長。
OL時代にAAT(Animal Assisted Therapy:動物介在療法)に関心を持ち、ボランティアをしながら国内外で勉強を始める。1998年、米国DELTA協会(現・米国Pet Partners協会)の「Pet Partners® program」修了。2002年より現職。身体障害者補助犬法には、法律の準備段階からかかわっている。

著書

『よくわかる 補助犬同伴受け入れマニュアル』共著(中央法規出版)

『よくわかる 補助犬同伴受け入れマニュアル』共著
(中央法規出版)

第234回【障害者に飼われている犬は不幸ですか?】

 ちょっと、センセーショナルなタイトルにしてしまいました。ただ、この質問は、多くの方に真剣に考えていただきたい問題だと思っています。
 私は、補助犬支援に関わって、16年になります。多くの素晴らしいユーザーさん達と出会い、多くの事を学ばせていただきました。今もなお、日々多くのユーザーさんから学ばせていただいております。そんな、多くの学びや、素直に感動したり、感謝したりしたことを、社会の皆さんに伝えたい!ただ、その想いだけで突っ走ってきました。多くの方が応援してくださり、温かいお言葉をかけて下さり、本当に感謝しています。ただ、全ての人に伝えられるわけもなく、まだまだ社会の大半の方には、本当の補助犬について、補助犬ユーザーについて、伝えることができておらず、理解が進まない中で同伴拒否は起こり続け、社会参加している補助犬ユーザーさんたちが辛い思いをしておられ、ただただ自分の力不足を痛感して申し訳なく思うばかりです・・・

 そんな中、当会のFacebookにコメントを寄せていただきました。その投稿は、真夏の補助犬の歩行について書いたものでした。その方のコメントは「過酷な暑さの中の歩行をかわいそうに思いながらも、・・・何とかならないものか?といつも見守っています。」(概要)というものでした。
 とても嬉しかったです。多くの方が「かわいそう」と思いながらもこちらには伝えては下さらず、誤解を解く機会も無いまま、「補助犬=かわいそう」という言葉だけが独り歩きしてしまいます。このように当会に対して、コメントを寄せていただけたことで、ある程度の誤解は解くことができますし、また今後の対処やアイデアを、一緒に考えることができる。それこそが、補助犬だけではなく、全てのマイノリティの問題に必要とされているコミュニケーションなんだと思います。

補助犬たちはお仕事が大好き!
だって、一番大好きな人に褒めてもらえるんだから♪
何度だって尻尾フリフリです♪
何かお仕事な~い?ってせがんでくることも…!?(笑)

 そのコメントに対して、当会から下記のようなお返事をさせていただきました。なかなか、文章で全てを説明しきるのは難しいことではありますが、少しでも本質の部分、伝われば嬉しいな~と思っています。

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 コメントありがとうございます。このようなご意見は大変大切だと考えております。同様のご意見を、毎年この時期、複数頂いております。我々も、「犬の福祉が守られない」事に関しては、絶対にあってはいけないと考えております!何より、「犬の福祉が守られていなければ、人間の福祉も守られるはずがない」という考えのもと活動を続けており、今後もその発信を続けたいと思っています。

 まず、犬も動物ですので、地表60度の中で「仕事を立派に遂行する」事は考えられません。ペットの犬でも、暑い中の散歩で熱中症になることが散見されています。特に発汗が苦手な犬ですから、異常な状態になればパートナーがいち早く気がつき、歩行どころではなくなると思われます。補助犬たちは、決してスーパードッグではありませんので、パートナーさんたちのもと、最大限の配慮がされている事が基本です。そもそも犬の体調が万全でなければ、仕事どころではありません。全国の各補助犬の訓練事業者では、パートナーさんに対して、しっかりとその教育も施されています。
 この時期、外出機会は極力減らし、室内のエアコンの中で過ごされています。しかし、我々と同様に、社会生活をしていると、どうしても外出が必要な場合があります。そのような時には、可能な限りタクシーを利用されたり、お留守番をさせる等されています。ただ、タクシーに断られてしまう距離の場合等もあり、そんな場合にはルートを選んでの歩行も考えられます。なかなか、全国の約1000組の補助犬パートナーに一概に言えるものではありませんが、そのような努力を最大限されているパートナーさんが多くおられることも知っておいて頂けると嬉しいです。

 また、マナーコートもクールな生地になっており、凍らせたり、背中の部分に保冷財が入れられるようになっていたり、首元にも保冷財を巻き、ミストスプレーをするなど、工夫されています。屋外と屋内でのコートの使いわけをされている方もおられます。犬の発汗は人間のように体中から汗をかくことができず、舌をハァハァさせることでの体温調整となるので、小まめな水分補給も計算しながら行っておられます。
 各補助犬のパートナーさん達は、それぞれの障害状況を考慮しながら、できる限りの事をされているのが基本中の基本です。

 ただ、もしかしたら、大変な状況の補助犬を目の当たりにし、そのような思いになっておられるのかもしれません。もしかしたら、そのパートナーさんが気付けていなかったのかもしれません。管理上のミスがあったのかもしれません。その場合は、その方にお伝えしていただいても良いですし、伝えられる状況に無ければ、まずは所属の訓練事業者さん、また当会でも結構ですので、ご相談をいただければ、事実確認をした上で、必要な対処を取ることができるかもしれません。

 「いつも見守っています」のお気持ちが何より嬉しいです♪ただ、パートナーさんたちも、我々も、「かわいそうね~」と思われながら見守られるのではなく、「きちんと愛情を持った管理をされ、喜んでお仕事をしていて幸せね」と言っていただけるようになりたいと、日々努力をしております。
 是非とも今後も、ご意見いただけると光栄でございます。

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 もう10年以上前のことになりますが、NHKの特集で「介助犬ユーザーの生活に密着」された番組が放送されました。当会もご協力させていただいた企画で、とても素敵な番組でした。放送後の評判もよく、当時のディレクターさんと喜んでいたのですが… 翌日、テレビ局に1本の電話がありました。電話してこられたのは、補助犬関係のなんらかの支援活動に参加している方からでした。「番組の中で、ユーザーが居酒屋で飲んでいるシーンがあったが、我々は、酒を飲みに行くために補助犬の支援してるんじゃない!」というお叱りのコメントでした。実は、そのディレクターさん自身も車椅子ユーザーだったのですが、彼と2人で「障害者はお酒も飲みに行かず、どんな生活をしていると思ってるんかな~?なんだか、障害者って自分とは違う特別な存在のように感じてらっしゃるんだろうね~残念だね…」と話したのを思い出します。

 いまだに「補助犬ってかわいそうよね」という言葉をかけられます。当事者である補助犬ユーザーさんたちも、街中でそんな声が聞こえてきたり、時に面と向かって言われることもあるといいます。その度に、「そんなことはない!」と大きな声で言いたい気持ちをこらえながら、そのような方々にご理解いただく事はとても難しいことを、すでに経験上理解されているので、悔しい思いのまま通り過ぎるしかありません。想像するだけで、胸が張り裂けそうな思いになります。
 きっと、障害者と接したことがない方にとっては、どんな生活をしているのか?どんな人なのか?それこそ、犬の世話なんてできるのかどうか?なんて、想像もできないから、「わからない→犬の世話なんてできるわけがない→かわいそう」・・・という思考回路になってしまうのではないか?と感じています。同伴拒否の問題も、根底には「わからない=リスク」という感覚が根深くあります。他のマイノリティの問題も全て同じ・・・

 是非、わらかないことは「わからないから、教えて。」と言って欲しいです。そこにコミュニケーションが生まれることで、当事者の想いや、その目の前の「人」に接することができ、全くの思い込みや誤解を解くことができるのだと思います。そして、その障害者は、障害者である前に、自分となんら変わらない、「一人の人」であることを感じていただけると思います。

 補助犬ユーザーさん達は暑い時期の対処などは、各補助犬共通なので、SNS等でも情報交換をしながら、また時に情報発信を続けながら、少しでも正しく理解してもらえるように、「自分達がまだまだ数少ない補助犬の代表として見られることがある!」というプレッシャーを背負って、社会参加をされています。本当は、そんなプレッシャーがなくなるような社会を目指さなければなりません。
 盲導犬ユーザーさんは、毎日の犬のブラッシングで抜け落ちる抜け毛の処理に悪戦苦闘しながらも、様々な工夫をトライし、盲導犬ユーザー仲間のメーリングリストで「視覚障害があっても、如何にキレイに衛生管理できるか?」情報交換をされています。
 介助犬ユーザーさんは、自分の身体状況にあった排泄処理グッズを、リハビリテーションの専門家である作業療法士の先生方と相談しながら開発し、マナーをしっかり守る工夫と努力をしておられます。
 聴導犬ユーザーさんは、周囲の声が自然と聞こえてくることが無いので、普段から周囲の人がどんな風に言っているのか?聞こえる人と一緒に居る時には、確認をしながら、必要な対処が取れるように、情報収集と努力をされています。
 獣医さんから良く聞く話としては、「普通の飼い主さんでは気付かないほんの小さな変化でも気付いて早期発見・予防ができるのが、補助犬ユーザーさんの凄いところ!」といったお声も複数あります。

 ぜひ今後も、気になることや疑問があれば、気軽にお問い合わせください。これからも、どんどん補助犬の事を知っていただけるイベント企画していきます!是非ご参加いただき、多くの方に正しい情報が届くよう、皆さんからも発信をお願いしたいと思っています♪これからも、応援をよろしくお願い致します。


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 是非、皆さんの様々なお声を、お寄せください。当会では、一緒に社会を更に更にステキに変えて行って下さるサポーターの皆さんを募集しております。お気軽にご連絡ください♪

ご寄付のお願い「日本補助犬情報センター」より

 当会のビジョンは、全国民が正しく補助犬法を理解することで、すべての人が安心して活躍できる社会を実現することです。補助犬ユーザーの社会参加推進活動、普及活動、最新情報収集、資料等作成配布、講演会・イベント等、当会の活動はすべて無償で行われております。
 皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

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