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ほじょ犬って、なあに?

橋爪 智子 (はしづめ ともこ)

身体障がい者の生活を支える、「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」。そんな補助犬たちにまつわる話を紹介するコーナーです。

プロフィール橋爪 智子 (はしづめ ともこ)

NPO法人日本補助犬情報センター専務理事 兼 事務局長。
OL時代にAAT(Animal Assisted Therapy:動物介在療法)に関心を持ち、ボランティアをしながら国内外で勉強を始める。1998年、米国DELTA協会(現・米国Pet Partners協会)の「Pet Partners® program」修了。2002年より現職。身体障害者補助犬法には、法律の準備段階からかかわっている。

著書

『よくわかる 補助犬同伴受け入れマニュアル』共著(中央法規出版)

『よくわかる 補助犬同伴受け入れマニュアル』共著
(中央法規出版)

第167回 日本と海外の補助犬の違いって・・・?

 みなさん、日本の補助犬と、海外の補助犬の種類が違うって、ご存知でしたか?

 まず、日本の補助犬とは、盲導犬(視覚障害者)、介助犬(肢体不自由者)、聴導犬(聴覚障害者)ですよね。しかし、海外には、それ以外にも活躍している補助犬の仲間達がいます。

 いわゆる日本で言う『補助犬』は、英語では assistance dog や service dog と呼んでいますが、その中には、日本でいう 、盲導犬(視覚障害者)、介助犬(肢体不自由者)、聴導犬(聴覚障害者)の他にも、様々な障害をサポートする犬が育成されています。精神障害、知的障害、発達障害、自閉症、糖尿病や癲癇の発作を予知する犬、退役軍人PTSD補助犬・・・時に障害児に対して、サポートする犬もおり、常にダブルリードで、1本は親が持って歩くこともあります。
 これだけを見ても、かなり日本の概念とは大きく違うことがわかっていただけると思います。

日本と海外の補助犬の違いって・・・?

 そして、最近、アメリカで大きな問題になっているのが、Fake Service Dogs(偽補助犬)です。。。
 こちらの記事でも紹介されていますが、最近、emotional support (情緒障害サポート)をするとして、偽のライセンス(簡単にネットで購入できます)を着けて、ペットを同伴させる迷惑客が増えているそうです!


 結果、何が起きているかというと、それらの偽補助犬たちは、衛生管理や行動管理がきちんとできていない、且つ動物福祉上も問題がある場合が多いので、近隣の席に座っている方々に迷惑をかけてしまっているのです・・・そして、何より、本当に必要で補助犬たちを同伴して社会参加をしている障害当事者の方々の社会からの評価を下げ、社会参加を阻害することになってしまっているのです・・・これは、「ペットと一緒にどこでも行きたい」という、短絡的な個人的希望により、障害者全体の社会参加イメージを悪くしていることと同じなのです。

 「米運輸省はこれを取り締まる方針で、年内に新たな規則を提案したいとしている。2016年には、航空会社と障害者団体に新たな基準を推奨してもらう取り組みを行ったが、失敗に終わった。しかし、運輸省は、この問題が依然として懸念される分野の1つだとし、何かを考案する計画だと述べている。」という記載からも、米国内での苦労もうかがえます。

 帝京科学大学の山本真理子先生の調査によると、「米国の介助犬の数は過去15年ほどで著しく増えており、その犬種も、当初は大型犬が多かったが、最近では小型犬が急増している。また、対象となる障害につていも2000~2002年には肢体不自由者が75%を占めていたが、10年後の2010~2012年の調査では、肢体不自由者は30%に減り、それ以外の精神疾患やその他の疾患をサポートするサービスドッグであった。ここには、エモーショナル・サポート・アニマルも含まれており、厳密にはアシスタンス・ドッグではないが、これらを除いたとしても、約半数が新しい種類のサービス・ドッグが占めていた。つまり、役割自体がこの10年15年で急速に変化しているというのがわかります。」との報告があります。(ヒトと動物の関係学会誌Vol.45「補助犬からアシスタンス・ドッグへ:普及と発展に向けた課題と社会の意識」)

 1990年にできた米国の障害者の権利に関する法律は「American With Disability Act」(障害があるアメリカ人法)であり、略してADA法と言われています。その中で、アメリカの障害のある方々の権利が全てうたわれているのですが、その1つの権利として「Service Animal」を同伴した社会参加がありました。しかし、爬虫類、霊長類等公衆衛生上も問題がある動物が社会参加をすることはかなり危険であるとともに、動物福祉上も懸念されることであるとして多方面から疑問が提示され、2011年に遂に法改正が実施され、「アニマル→犬」に限定されることとなりました。

 ただ、アメリカでは、このADA法とは別に、航空アクセス法(ACAA)が存在し、ACAAの中では未だに「サービスアニマル」として残っており、混乱を来たしています。
 迷惑且つ動物福祉上の問題がある動物として、「Chihuahuas(チワワ)、rabbits(うさぎ)、monkeys(サル)、parrots(オウム)、turtles(カメ)、guinea pigs(ミニチュア豚)、snakes(ヘビ)などを挙げているサイトもあります。

 この混乱を日本に持ち込まれないようにするためにも、まずは日本には『身体障害者補助犬法』という法律があり、そこに定められているのは、盲導犬(視覚障害者)、介助犬(肢体不自由者)、聴導犬(聴覚障害者)であり、日本には障害者の社会保障制度として、障害者手帳制度があること。(その国に行けば、その国の法律に従うことは、世界共通認識です。)
 海外で活躍する多種多様なサービスドッグの活動は、決して否定するものではなく、それぞれに素晴らしいことは認めた上で、ただ、現状、日本においてアクセス権が認められている『盲導犬(視覚障害者)、介助犬(肢体不自由者)、聴導犬(聴覚障害者)』3種の補助犬達の社会的認知もままならない現状での、法の規定を超える部分のサービスドッグのアクセス権(検疫等を経ていれば入国は可能。ただ国内のアクセス権はなく、ペットと同様になります)は、現状のわが国には存在しないこと、を世界に周知する必要があります。

 だからこそ、まずは、現状の日本における3種の補助犬達の社会的認知を確実なものとできるよう、当会に与えられた活動に全力を尽くして行きたいと思っております。引き続きの応援、宜しくお願い致します。

ご寄付のお願い「日本補助犬情報センター」より

 当会のビジョンは、全国民が正しく補助犬法を理解することで、すべての人が安心して活躍できる社会を実現することです。補助犬ユーザーの社会参加推進活動、普及活動、最新情報収集、資料等作成配布、講演会・イベント等、当会の活動はすべて無償で行われております。
 皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

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