ほじょ犬って、なあに?
身体障がい者の生活を支える、「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」。そんな補助犬たちにまつわる話を紹介するコーナーです。
- プロフィール橋爪 智子 (はしづめ ともこ)
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NPO法人日本補助犬情報センター専務理事 兼 事務局長。
OL時代にAAT(Animal Assisted Therapy:動物介在療法)に関心を持ち、ボランティアをしながら国内外で勉強を始める。1998年、米国DELTA協会(現・米国Pet Partners協会)の「Pet Partners® program」修了。2002年より現職。身体障害者補助犬法には、法律の準備段階からかかわっている。
著書
『よくわかる 補助犬同伴受け入れマニュアル』共著
(中央法規出版)
第130回 よくわかる!補助犬同伴受け入れ方特集!~補助犬トイレ編~
2016年4月から障害者差別解消法が施行されたことにより、私達の住む社会全体で「障害者差別を無くそう!」という動きが加速しています。キーワードは「当たり前」。皆さんにとっての「当たり前」ってなんですか? その「当たり前」を、障害のある方々にとっても「当たり前」にするための『ちょっとしたお手伝い』を社会のみんなができるようになろう♪ そんな素敵な法律です。実は、2002年に成立していた法律の先輩「身体障害者補助犬法」も全く同じ事を言っているのです♪
そこで、「当たり前」のことを「当たり前」にしてくれる心強いパートナーである補助犬たちの受け入れに関し、まだまだ、誤解だったり、わからないからこその同伴拒否をなくすため、受け入れ方をシリーズでわかりやすく紹介していきます!
「ワン・ツーベルト」♪♪♪
これさえあれば、いつでもどこでも、スマートにワン(おしっこ)&ツー(うんち)できます!
「ほじょ犬のトイレ」について考えたことはありますか?
日本の補助犬たちは、日本という公衆衛生マナーの厳しい国内での社会参加のため、排泄のマナーはしっかりと守れます。ただ、海外では、犬を受入れる風土や公衆衛生観念が大きく違うので、多目的トイレ内で排泄処理ができるのは、日本の補助犬だけと考えても良いのではないかと思われます。それだけ、日本の補助犬たちのマナーレベルは高いんですよ♪
補助犬の同伴を拒否される原因の一つに、『犬は不衛生』というイメージがありますが、これは、日本のペットのマナーが、残念ながら影響していると感じています。
ご近所で見かける、散歩中の犬たちはいかがでしょうか? 皆さんのペットとのお散歩時は? 日本の昔からの飼い方では、電信柱におしっこをひっかけるイメージがありますが、これは「マーキング」といい、自分の縄張りを主張する、自分の存在を仲間に知らせるために行っています。しかしこれは、適切な時期に去勢手術をすることで、ほとんどの場合がなくなります(避妊・去勢に関しては、様々な病気から犬を守るためにも、補助犬でなくとも適切な時期に実施することをおすすめします)。
もし、癖としてなくならない場合は、社会参加をする補助犬としては「適性なし」ということで、キャリアチェンジとなります。ほじょ犬たちは、国の法律に基づいて認定されているわけですから、衛生管理・行動管理はきちんとなされていることが前提です。その中には、もちろん「排泄の管理」も含まれているのです。補助犬たちは、やたらめったら、その辺で排泄してしまうことはありません!
犬は生態学上、水分摂取の約2時間後におしっこの量が多くなり、食餌直後や運動後にうんちが出やすいと言われています(もちろん人間と同じく個体差はあります)が、補助犬たちはそれぞれのトレーニングの中で、排泄のタイミングや仕方を覚えていきます。
トレーナーさんたちは、その個体それぞれのタイミングを把握し、それに合わせた排泄指示を行います。そして、ユーザーさんにそのタイミングを覚えてもらうことで、適切な時間と場所で、指示による排泄を成功させます。決して無理強いさせることなく、その犬のタイミングで、気持ち良く排泄できる管理をユーザーさんがしているのです♪ 人間の子どもと同じですよね♪ 決して我慢させられているわけではないこと、おわかりいただけると思います。
ちなみに、盲導犬のユーザーさんは、視覚障がい者です。ハーネスから伝わる犬の動きの変化や様子を察知し、排泄管理をしておられます。写真は、盲導犬の排泄時の秘密道具「ワン・ツーベルト」! ワン=おしっこ、ツー=うんち、なので、その指示に従って、ちゃんと補助犬たちは排泄を指示された時間、その場所で、できるんです! 簡単に装着でき、排泄物がナイロン袋に収納されるようになっているので、周囲を汚すことなく排泄物の処理ができます。
この写真を見て、「かわいそう!」と思われる方もおられるかもしれません。やはり、中には「ワン・ツーベルトではできない!」とトレーニングが進まない犬も居ます。そんな犬には無理をさせることは無く、キャリアチェンジになって家庭犬になるか、または、排泄を建物内でしないといけないシチュエーションが少ない生活スタイルのユーザーさんの元に行くなどのマッチングがされます。
そもそも、「ワン・ツーベルト」が苦手な子にさせても、排泄コントロールができなくなり、結果困るのはユーザーさんですので、そこはきちんとユーザーさんが困らないよう、犬への負担も無い形でトレーニングされていますので、ご安心を♪
また、介助犬ユーザーさんは、手に障がいのある方も多いので、排泄物の処理は難しい作業ですが、OT(作業療法士)・PT(理学療法士)の先生方と共同で様々なオーダーメイドの自助具を開発しておられます。そして多くのユーザーさんは、多目的トイレで、ペットシーツを敷いてその上で排泄するよう促すので、同じく周囲を汚すことなく処理が可能です。
補助犬ユーザーさんは様々な工夫と努力をしながら、補助犬と一緒に社会参加されています。それを知っていただければ、安心して受入れられるはず♪ 是非、応援してください♪
お知らせ
身体障害者補助犬を推進する議員の会
第4回『ほじょ犬の日啓発シンポジウム2016』
防災と補助犬~障害者インクルーシブな防災~
日時:2016年5月20日(金)10:30 ~ 15:00
会場:衆議院議員会館内会議室
※ 参加無料、事前申し込み不要 手話通訳・要約筆記あり
- ◆ 第1部:10:30~12:00
藤井克徳(ふじい かつのり)(日本障害フォーラム(JDF)幹事会議長)
「防災と補助犬 ~障害インクルーシブ防災から学ぶ~」
1万8000人を越える人たちが犠牲になった3.11東日本大震災から5年。国際的な新たな防災の考え方である『障害者インクルーシブな防災』について、日本障害フォーラムの藤井克徳幹事会議長より学びます。 - ◆ 第2部:13:30~15:00
山口千津子(公益財団法人日本動物福祉協会 特別顧問・日本補助犬情報センター理事)
「補助犬同行避難について ~防災の観点から~」
過去の数々の大災害における犬との同行避難に関して、現場で多くの事例解決に携わってきたエキスパートより、事例紹介とともに、今すぐ始められる防災の備えを中心にお話しいただきます。
- ご寄付のお願い「日本補助犬情報センター」より
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当会のビジョンは、全国民が正しく補助犬法を理解することで、すべての人が安心して活躍できる社会を実現することです。補助犬ユーザーの社会参加推進活動、普及活動、最新情報収集、資料等作成配布、講演会・イベント等、当会の活動はすべて無償で行われております。
皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。