ほじょ犬って、なあに?
身体障がい者の生活を支える、「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」。そんな補助犬たちにまつわる話を紹介するコーナーです。
- プロフィール橋爪 智子 (はしづめ ともこ)
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NPO法人日本補助犬情報センター専務理事 兼 事務局長。
OL時代にAAT(Animal Assisted Therapy:動物介在療法)に関心を持ち、ボランティアをしながら国内外で勉強を始める。1998年、米国DELTA協会(現・米国Pet Partners協会)の「Pet Partners® program」修了。2002年より現職。身体障害者補助犬法には、法律の準備段階からかかわっている。
著書
『よくわかる 補助犬同伴受け入れマニュアル』共著
(中央法規出版)
第124回 補助犬の同伴拒否について ~障害者差別解消法施行直前!~
3月19日の新聞報道で、タクシーによる盲導犬拒否が報道されました。
「盲導犬を同伴した視覚障害者の乗車を拒否したとして、国土交通省北陸信越運輸局石川運輸支局が金沢市内のタクシー会社に対し、道路運送法に基づいて行政処分する方針を決めたことが18日、分かった。」(毎日新聞2016年3月19日 大阪朝刊)
今回は、この報道に関して、検証したいと思います。
上記報道では、次のように書かれていました。
「運転手は乗車を拒んだ理由について、運輸支局の調査に『以前、別の乗客の盲導犬を乗せた際、座席が毛で汚れ、次の客に迷惑をかけたためだ』と話しているという。」
(毎日新聞2016年3月19日 大阪朝刊)
もし、これが本当であれば、それは大変な問題です。しっかりと検証を行い、再発防止に取組む必要があると感じています。どのくらいの汚れだったのか? 次のお客様にどのような迷惑がかかったのか? 等、そのあたりの詳細もクリアになってくると、今後の解決策にも活かせるので有難いなと感じます。
盲導犬は、そのほとんどがラブラドールレトリバーかゴールデンレトリバー、またはそのMIXなので、ある程度の大きさがあります。タクシー乗車時、座席に座るようなことは決してありませんが、足下に入り込んでステイする際に、座席シートの側面に、身体が触れることはないとは言い切れません。そしてその際、抜け毛が若干つくことも考えられますし、抜け落ちる毛も多少あるでしょう。
ただ、その量や質が、人の迷惑になるくらいのレベルかどうか? を確認する必要があるのです。
(ちなみに、排泄に関しては、決められた時間に指示した場所で排泄を行いますので、狭い車内での排泄の失敗はまず考えられません。排泄による迷惑はないと思っていただいて大丈夫です)
基本的に補助犬たちは、障害者のパートナーとしての社会参加が目的なので、日々のケアはしっかりと行います。毎日のブラッシングや定期的なシャンプー。特に盲導犬ユーザーさんは、抜け毛を目で確認することができないので、「マナーコート」という抜け毛防止のお洋服を着せておられることも多いです。
また、抜け毛処理のためのガムテープなどを持ち歩いている方もおられます。『抜け毛を最小限に抑える』というユーザー責任を果たすため、様々な工夫と努力をされています。
人間だって、抜け毛はあります。ペットを飼っておられる方のお洋服に、ペットの毛がたくさんついていることもあります。言い出せばキリがありませんが、大切なのは最終的には 双方の対話に基づいた歩み寄りだと感じます。特に「犬が苦手な人」からすると、犬の毛がご自身に付着するようなことは、極力避けたいとお考えなのだと思います。そのお気持ちは無視できるものではありません。
ですので、受け入れ時にご不安があれば、「補助犬の受け入れに不安がある」「受け入れ方がわからない」などと伝えていただければと思います。そして、「特別な対応が必要なわけではなく、安心して受け入れていただける」内容の説明を聞ければ、不安も軽減いただけると思います。
4月からスタートする障害者差別解消法に書かれている「合理的配慮」は、まさに、この『対話』が必要とされています。【障害者が必要としているサポート】は何なのか? それに対して【受け入れ側が提供できるサポート】は何なのか? そのラインを、双方の対話で模索していこう♪ それを当たり前にしよう! という法律であると解釈しています。
「犬という心強いパートナーとともに社会参加したい!」と願う障害者の方々のご意向と、「犬は苦手だから(アレルギーがあるから)極力距離をおきたい」と願う方々のご意向。どちらも共存できるような歩み寄りの社会を模索して行きたいですね。
ということで、来週からはいよいよ4月! 障害者差別解消法がスタートします。次週以降しばらくは、補助犬ユーザーの受け入れ方に関して、各シチュエーションごとのご紹介をしてまいります。お楽しみに♪
お知らせ
身体障害者補助犬を推進する議員の会
第4回『ほじょ犬の日啓発シンポジウム2016』
防災と補助犬~障害者インクルーシブな防災~
- ◆ 日時:2016年5月20日(金) 10:30 ~ 15:00
- ◆ 会場:衆議院議員会館内会議室
1万8000人を越える人たちが犠牲になった3.11東日本大震災から5年。国際的な新たな防災の考え方である『障害者インクルーシブな防災』について、日本障害フォーラムの藤井克徳幹事会議長より学びます。
- ご寄付のお願い「日本補助犬情報センター」より
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当会のビジョンは、全国民が正しく補助犬法を理解することで、すべての人が安心して活躍できる社会を実現することです。補助犬ユーザーの社会参加推進活動、普及活動、最新情報収集、資料等作成配布、講演会・イベント等、当会の活動はすべて無償で行われております。
皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。