ほじょ犬って、なあに?
身体障がい者の生活を支える、「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」。そんな補助犬たちにまつわる話を紹介するコーナーです。
- プロフィール橋爪 智子 (はしづめ ともこ)
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NPO法人日本補助犬情報センター専務理事 兼 事務局長。
OL時代にAAT(Animal Assisted Therapy:動物介在療法)に関心を持ち、ボランティアをしながら国内外で勉強を始める。1998年、米国DELTA協会(現・米国Pet Partners協会)の「Pet Partners® program」修了。2002年より現職。身体障害者補助犬法には、法律の準備段階からかかわっている。
著書
『よくわかる 補助犬同伴受け入れマニュアル』共著
(中央法規出版)
第74回 他の者との平等
死者1万5891人、行方不明者2584人を出した3.11東日本大震災……あれから4年。あらためて、震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。今なお不安な生活を余儀なくされている方々が、一日も早く安心できる暮らしに戻れますよう、心よりお祈り申し上げます。
単純に「数字」だけでは推し量れませんが、避難生活者がいまだ「約22万9千人」と言われています。しかも政府が決定した5年間の「集中復興期間」はあと1年で終了。
日本の多くの地域では、日常を取り戻しています。その一方で、未だ日常を取り戻せていない人達がたくさん居られる……。今一度自分自身、何ができるか?考えてみたいと思います。未だ苦境に立たされている方々に思いを馳せながら。。。
1人1人の力は微々たるものです……。でも、その1人1人から始めなければ、何も始まりません! 「他の誰か」ではなく、「自分」から行動を起こす。その意識を各自が持ったとき、社会は変わり始めるのではないでしょうか? 被災地から離れていても、忘れずに、考え続けていきましょう……『心を寄せる』ことは、誰にでもできる最初の1歩です。
先日、全国脊髄損傷者連合会 および DPI(障害者インターナショナル)日本会議主催の『東京2020オリンピック・パラリンピック 「IPCアクセシビリティガイドから見た日本の競技施設」学習会』に参加して参りました。
その中で東洋大学の川内教授が、「わが国の障害者施策には4つの節目があった」とお話しされました。1つ目が、1950年に制定された障害者福祉法(ヘレン・ケラーの功績大)、2つ目が1964年の東京パラリンピック開催、3つ目が1982年の国際障害者年の制定、そして4つ目が2014年の障害者権利条約批准です(外務省【障害者権利条約に関するサイト】)川内教授は、次なる大きな節目として、2020年の東京パラリンピックがあると、お話しされていました。
権利条約の批准を受け、2016年4月には【障害者差別解消法】が施行されることとなりました(内閣府【障害者差別解消法に関するサイト】)。この流れの中で、2020年の東京パラリンピック開催は、まさに千載一遇のチャンス! まずは、国民1人1人の心のバリアフリーから始め、ぜひとも、『真のUD社会』をともに目指していきましょう!
障害者権利条約の目的 = あらゆる障害のある人の尊厳と権利を守ること ⇒ 人権に関する条約であり、『他の者との平等』が基礎となっています。
障害者権利条約の中で、「「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。」
と、定義されています。この、『他の者との平等』そして、『合理的配慮』の2つが、これからのキーワードになってきます。今回は、前者の『他の者との平等』について考えます。
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今回の川内教授の講演は、「競技施設のアクセシビリティ」に関してでしたので、そこに特化した説明をいたします。
国際パラリンピック委員会(IPC)は、アクセシビリティガイド(2013年6月版)を作成しています。教授は「このような素晴らしいモノがあるので、是非とも日本もこれをベースとして欲しい。」と話しておられました。前回のロンドンパラリンピックは素晴らしい成功を収めたそうです。是非、それ以上のものを目指して欲しいモノですね。
アクセスビリティガイド内で記される競技施設の座席は3種類。- (1)車椅子席
- (2)同伴者席(コンパニオンシート)
※介助者でないところに注目! 同伴者は友人だったり、家族だったり、「一緒に楽しむ人」という意味で、コンパニオンシートと命名されています! ステキ! - (3)付加アメニティ席(Enhanced Amenity Seat):少しなら歩けるが、不自由のある方
これらの席は、「勾配が2%以下の(ほぼ)水平な床面に設ける」となっていたり、面積の指定があったり、非常に明確に記されています。
そして、会場で、「うわぁ~!」と一際どよめいた瞬間がありました。
日本国内の代表的な競技場の観覧席マップの後に、アメリカサンフランシスコの球技場の観覧席マップが表示された瞬間でした! ありとあらゆるエリアに、車椅子席が配置されていました! 当日の会場は250名の参加者のうち、100台ほどの車椅子使用者の方がおられたため、この車椅子席の配置は、衝撃的であり、皆さん感動されていました♪
【IPCの規定によるアクセシブルな席の配置】として次のように記されています。- ・アクセシブルな席は、競技場のさまざまな販売価格、観覧方向、エリアに提供しなければならない。他の観客と同様に、さまざまなエリアから席が選べるようにすべきである。アクセシブルな席には、それぞれのエリアに、車いすで使える男女共用のトイレ、飲食物やグッズの店舗、ラウンジやエレベータを設置するのが望ましい。
※男女共用のトイレが必要な理由は、介助する方が必ず同性とは限らないからです
これが世界基準で言う、『他の者との平等』なのです。競技場に来られるだけではなく、同じように楽しめる、そこまでを考えることが大切です(残念ながら、日本のバリアフリー法では、建物で最も主要な部分の近くまでは行けるが、肝心の最も主要な部分はカバーしきれていません)。
その他、【サイトライン】という言葉も大切にされていました。サイトライン=同等の視線です。
前の人が立ちあがった場合でも、車椅子使用者が観戦できるようにするものです(ただし、観戦中に観客が立ちあがる可能性が低い競技(テニス等)では、適用免除の可能性あり)。柵・手すりやその他の障害物が、アクセシブルな席の利用者の視線を遮らないようにすべき、とのことです。
この考え方も、とても素敵だと思いました。車椅子の方は少々見えにくくても仕方ない、のではなく、最初から車椅子の方でも同等に楽しめるためにはどうしたらよいか? 設計段階で入れ込んでいただければよいだけのことです♪
そのほか、肢体不自由者のアクセスのことだけではなく、聴覚障害者・視覚障害者の方への情報のアクセスに関して等のお話もありました。
聴覚障害者向けのループ席の配置や、電光掲示板に字幕が出るような工夫だったり、緊急時のランプでのお知らせ等、視覚障害者向けの音声ガイドに関してや、競技の実況中継の多言語ラジオ放送に関する情報等多岐に渡り、非常に勉強になりました。川内教授のお話は大変わかりやすく、もっともっと拝聴していたかったです。
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と、このように色々と考えていると、東京2020オリンピック・パラリンピックが楽しみになってきませんか? どんな素晴らしい施設ができるのか? 計画段階で、様々な当事者の声を聞き、ぜひとも素晴らしい施設建設を行っていただきたいものです。そのためにも、もっともっと、当事者の声を伝えていかなくては!「他の誰か」ではなく、「自分」からです!
オリンピック・パラリンピックには、【レガシー】を残す!という考え方があります。これは、建築物等、後世に残る物理的な物ももちろんですが、何より大切なのは精神的な心のレガシーではないでしょうか? ぜひ、国民みんなの力を合わせて、素晴らしいレガシーが残るよう準備していきたいですね♪
次回は 第75回「シンシアモニュメント」について3月14日のモニュメント除幕式の様子も含めてご報告いたします。
※前回、次回テーマに「シンシアモニュメント」としておりましたが、予定変更となりました。
- ご寄付のお願い「日本補助犬情報センター」より
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当会のビジョンは、全国民が正しく補助犬法を理解することで、すべての人が安心して活躍できる社会を実現することです。補助犬ユーザーの社会参加推進活動、普及活動、最新情報収集、資料等作成配布、講演会・イベント等、当会の活動はすべて無償で行われております。
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