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養成施設の教員からのメッセージ

第3回 社会福祉士の必要性や意義を高められる専門職に

北星学園大学社会福祉学部福祉臨床学科准教授
畑 亮輔

若い方々に期待すること

 今回社会福祉士の国家試験に合格し、新たに社会福祉士として仕事に就くことを予定している皆さんに期待することは、どのような仕事、職務に就くにしても常に社会福祉士(ソーシャルワーカー)であることを意識して仕事に取り組むことです。国家試験受験までに多くの学びがあったと思います。しかし、仕事でそれらの学びをすぐに生かすことができるか、学んできた社会福祉士としての役割を期待されているのかということを考えると、必ずしもイエスとは言えません。中にはソーシャルワーカーとしての役割以上に、各職場で決められた(制度上定められた)役割が期待されており、ソーシャルワーク機能を十分に発揮できない状況もあり得ると思います。
 しかし、そこで皆さんが社会福祉士(ソーシャルワーカー)としての志を忘れ、ただ求められる職務だけを遂行するようになってしまうと、助けを必要としている人に手を差し伸べることができない状況が生じてしまうかもしれません。あるいは変革すべき地域や社会の状況がそのままになってしまうことも懸念されます。もちろん、すぐにこれらの状況を改善することはできないかもしれませんが、ぜひ社会福祉士(ソーシャルワーカー)なんだということを意識して、社会における社会福祉士の必要性や意義を高められるような専門職になっていくことを期待しています。

入職までにしておいてほしいこと

 それでは入職までに何をすればよいのでしょうか。短い期間かもしれませんが、できるだけ遊んだり、友人知人と交流したり、本を読んだり、人間としての知見や視野を広げるような活動に取り組んでもらいたいと思います。それと同時に(その中で)、皆さんが「したいこと」「やらなければいけないこと」「できること」を整理しておくことが重要だと考えます。
 皆さんはそれぞれ社会福祉士として、仕事を通して「したいこと」があると思います。それと同時に職場においては「やらなければいけないこと」があります。この両者は必ずしも一致するとは限りません。しかし、その両者にズレがある場合においても、社会福祉士として仕事に取り組めば必ずそれらはつながってきますので、「したいこと」を実現するためにも、まずは「やらなければいけないこと」を明確化し、それらができるようになることが重要です。
 つまり、現時点で皆さんが「できること」を確認した上で、「やらなければいけないこと」を遂行できるようになるためにどのような成長が必要なのか、さらにその先の「したいこと」を実現するために何に取り組んでいかなければいけないのか、これらを整理しておくと良いのではないでしょうか。ここが整理できていないと、仕事を始めた後に「やりたいことと違う」という違和感を持ってしまうかもしれません。「したいこと」がその先にある場合は少なくないので、是非入職までにこの3点を明確化し、整理しておいてもらいたいと思います。

今、読んでおくとよい本

 今、読んでおくとよい本には、2つの方向性があると思います。1つは、仕事をする分野について、改めて理解を深められるような本です。例えば、高齢者への支援に携わる仕事であれば、「認知症でも心は豊かに生きている(長谷川和夫、2020年)」などは大きな学びになるでしょう。
 そしてもう1つの方向性は、社会福祉士として共通して必要とされる考え方や技術について振り返ることができる本です。これには「事例から学ぶ 支援を深める相談技術(吉田悦規、2020年)」や「相談援助職の『伝わる記録』(八木亜紀子、2019年)などが挙げられます。これらは、実際にそのような場面に直面した時に再度振り返ることで、大きな学びにつながると思いますので、あらかじめ継続的な学びを意識して読むことをお勧めします。

応援メッセージ

 仕事を始めると、仕事を上手くできない自分自身を否定的に評価してしまうことがあるかもしれません。あるいは仕事がある程度できるようになってきてから、ソーシャルワーカーとして必要な変革に向けた働きかけを行った時に、変わらない職場や環境にがっかりすることもあるかもしれません。しかしそのような状況はいつもプロセスの途中です。皆さんがあきらめずに、新たな学びを得て、新たな仲間を得て取り組みを続けていくことで、一つひとつの成果に結びつくはずです。焦らず、一歩ずつ専門職としての歩みを進めてください。

認知症でも心は豊かに生きている

認知症になった認知症専門医 長谷川和夫100の言葉

事例から学ぶ 支援を深める相談技術

現場実践から導き出された17のメソッド

相談援助職の「伝わる記録」

現場で使える実践事例74