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第37回社会福祉士国家試験 問題の講評

第37回社会福祉士国家試験 <専門科目>問題の講評

 先週と今週の2回に分けて、第37回社会福祉士国家試験の講評を行っています。東京学芸大学の露木信介です。今回は、<専門科目>問題についてです(解答速報

 国家試験のその後、何か新しい取り組みを始めましたか? そのための準備を始めていますか? 時間はどんどん前に進んでいきます。合格発表後から準備を始めていては遅いと思います。今から、次年度の準備、次年度の体制作りをしておくといいと思いますよ。

今日のレッスン

Lessen.1 〈専門科目〉問題の総括

 さて、<専門科目>の試験科目は以下の7科目で、試験時間は14時10分~15時35分までの85分(1時間25分)でした。

■ 高齢者福祉(6問)
■ 児童・家庭福祉(6問)
■ 貧困に対する支援(6問)
■ 保健医療と福祉(6問)
■ ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)(6問)
■ ソーシャルワークの理論と方法(専門)(9問)
■ 福祉サービスの組織と経営(6問)

 第37回試験の<専門科目>問題は、科目の編成は変更がありますが、例年通りの難易度だったと思います。よって、基本的な項目をしっかり押さえておけば、きちんと得点できた問題が多かったと思います。しかし、五者択二(二つ選びなさい)では、二つ目の選択肢で迷われた方もいらしたようです。このような時に重要なのは、設問文や事例文に潜むキーワードを的確に読み取ることです。

 また、事例問題については、〈共通科目〉・〈専門科目〉共に、全体的に易しい問題が多く、内容としては相談援助系の事例問題では、社会福祉士(ソーシャルワーカー)の対応事例が出題されました。その他の事例問題は、知識と実践を問う応答問題が出題されました。

 それでは各科目について、講評していきたいと思います。


Lessen.2 科目別分析と講評

 高齢者福祉は、出題基準から広範囲に、満遍なく出題されました。例えば、問題85は「高齢社会白書」をもとに、「日本の高齢者を取り巻く社会情勢」について問われ、問題86は「高齢者福祉制度(日本)」や「介護保険制度の介護報酬(問題87)」に関する基本的な内容が問われました。これに、「介護休業制度に関する事例問題(問題88)」や「地域包括支援センターの社会福祉士の対応(利用を検討するサービス)事例(問題90)」ついて問われています。なお、毎年出題されてきた介護技術に関する問題が姿を消し、高齢者虐待防止や老人福祉法に関する問題も出題されませんでした。

 児童・家庭福祉は、非常に基本的な項目が、出題基準から万遍なく出題されました。具体的には、問題91の「意思表明等支援事業」や問題95「こども基本法」といった基礎的な内容から始まり、問題92、問題93、問題94は子ども・家庭支援に関する実践事例について問われました。このほか、問題96は「女性支援新法(貧困な問題を抱える女性への支援に関する法律)」についても出題されています。出題されなかった項目としては、子ども・家庭福祉の生活実態に関する統計問題をはじめ、児童福祉法の総則規定や、社会的養護(里親など)、要保護児童対策地域協議会、児童福祉審議会、スクールソーシャルワーカーなどに関する問題です。この辺りは、社会福祉士にとって重要な項目ですので、各自で復習をしておきましょう。

 貧困に対する支援は、出題基準から万遍なく出題されており、例年(旧カリの同様科目)通りの内容、例年通りの難易度でした。定番の生活保護の種類(8つの扶助)とその内容(問題97)をはじめ、生活福祉資金の貸付(問題100)や生活困窮者自立支援制度(問題99)などが出題されました。このほか、問題101では「生活困窮者自立支援機関の相談支援員の対応事例」、問題102では「福祉事務所の現業員の説明に関する事例問題」が出題されています。なお、出題されなかった内容としては、生活保護の義務と権利、生活保護法(第38条)の施設などが挙げられますが、社会福祉士にとって必要な知識となりますので復習しておきましょう。

 保健医療と福祉は、出題基準に沿った基本的な内容が問われました。問題105では「診療報酬制度」について問われ、問題103や問題104では、「医療保険制度」や「難病法や障害者総合支援法」に関する事例問題が出題されています。このほか、「医療ソーシャルワーカー業務指針に基づくMSW(社会福祉士)の実践」に関する事例問題や問題106では「医療倫理の4原則」が出題されていますが、①自律尊重(respect for autonomy)、②無危害(non-maleficence)、③善行、(beneficence)、④公正・正義(justice)の4つを原則としています。なお、出題されなかった内容としては、例年出題されている「国民医療費の概況」や患者の権利に関する内容が出題されませんでした。今後は、生命倫理や尊厳死、インフォームドコンセント、アドバンスディレクティブなどに関する問題の出題が求められます。

 ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)は、「相談援助の理論と方法」とセットの科目といえます。内容としては、問題109で「E。グリーンウッドの専門化」について問われ、問題110は「認定社会福祉士」、問題111は「福祉職の任用または委嘱」について問われています。このほか、「支援システム(ミクロ・メゾ・マクロシステム)に関する事例問題」(問題113)や「アドボカシーに関する事例問題(問題114)」が出題されています。策問や出題内容についてはご苦労されていると思いますが、改善の余地がある内容だと思います。今後は、本科目の目的や意義の再考とともに、出題内容の精査が必要となると思います。

 ソーシャルワークの理論と方法(専門)は、社会福祉士の実践事例を中心とした事例問題が多く出題され、これに面接や面接技法などに関する基礎的な内容が出題されています。例えば、問題115の「バイスティックの原則」や問題117の「ソーシャルワーカーの面接技法」などが出題されています。また、問題116、問題119、問題120、問題121、問題122、問題123は、「ソーシャルワークに必要な技術や知識をもとにした具体的な対応や実践に関する事例問題」が出題されています。こちらも、ソーシャルワークの基盤と専門職同様に、今後は、問題内容の精査が必要になるかと思います。この二科目の(専門科目としての)存在意義を再考した上で、より実践的な内容が事例などを中心に出題されていくのではないでしょうか。

 福祉サービスの組織と運営の出題基準は、(1)福祉サービスにかかる組織や団体の概要や役割、(2)福祉サービスの組織と経営に係る基礎理論、(3)福祉サービス提供組織の経営と実際、(4)福祉人材のマネジメントとなっています。第37回試験を見てみると、これら4項目が万遍なく出題されていました。難易度としては、昨年度の試験と同様のものでした。
 内容を見てみると、問題124では「特定非営利活動法人」に関する事例問題や、問題125では「社会福祉法人(地域における公益的な取組)」に関する基本的な事項からはじまり、「リーダーシップ理論」(問題126)や「苦情申立ての仕組み:運営適正化委員会」(問題127)などについて出題されています。この他、問題128では「個人情報保護法に基づく個人情報取扱事業者である福祉サービス提供組織の情報管理」に関する問題や、問題129では「社会福祉法人の財務」について問われています。なお、福祉人材マネジメント(人材の確保や育成)ついての出題はなく、人材育成の手法や育児・介護休業法について重要ですので整理しておきましょう。

 以上、第37回社会福祉士国家試験の<専門科目>問題の講評でした。

お疲れ様でした

 最後に、みなさん、この一年間、本当にお疲れ様でした。試験は、その日の体調や心の動き、さまざまな環境要因や状況などによって、合否に影響を受けます。しかし、結果は結果ですので、それを真摯に受け止めてほしいと思います。まだ結果、結論は3月の合格発表までわかりませんので、「果報」は寝て待ちましょう。

 ただ、寝てばかりいても、頭も身体も鈍るでしょうから、試験の見直しと、できなかったところの整理をしておくとよいでしょう。これは合格圏内にいる方も、不合格が予想される方も一緒です。いや、合格圏内にいる方はなおさらです。なぜならば、合格した方は、これから専門家として重荷を背負って、責任を持ち、自立をしていかなければならないからです。

 私は専門家として、非常に大切に思うことがあります。それは、「無知で関わることほど罪なことはない」ということです。
それでは、皆様の合格を祈願して、結びとしたいと思います。またいつの日か、紙面等でお会いできる日を楽しみに・・・

 令和7年2月吉日 露木信介

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本講座とは直接関係性はありませんが、私のメールマガジン【社会福祉士をめざす「露木先生の合格受験対策講座」】があります。こちらの講座では、勉強方法やマル秘話、独学や勉強時間がない方を対象に開講しています。また、4月からは第38回社会福祉士国家試験に向けた講座がスタートしました。気になる方は、チェックしてみてください。

  • ※上記メルマガ【社会福祉士をめざす「露木先生の合格受験対策講座」】は、中央法規出版及び本講座「けあサポ」との関係はありません。そのため、本メルマガの問い合わせに関しては、中央法規出版では対応しておりません。

解答速報をみた後は!!

社会福祉士になる人のための本
次回の試験に向けて早めに備える(第38回)

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