第35回社会福祉士国家試験 問題の講評
特別編① 第35回社会福祉士国家試験 午前<共通科目>問題の講評
現代社会と福祉(10問)
本科目は、まず、現代社会の問題をきちんと理解していることが重要となります。そして、それを社会福祉学的に理解するために必要な項目が出題されていました。内容底には、やや難しかったと思います。苦戦した方もいらしたかもしれません。具体的な内容を見ておくと、地域共生社会(問題22)や福祉政策(問題24)、福祉に関わる思想や運動(問題23)から始まり、近代日本の福祉活動家などについて問われています(問題25)。この他、福祉六法や福祉ニーズに関する基本的な内容も問われました。
また、近年の動向を反映する問題としては、生活困窮者自立支援法(問題28)や、男女雇用機会均等政策(問題31)などが出題されていました。残念ながら、重要となる教育政策や時事的な内容の出題がありませんでしたが、現代のソーシャルワーカーは、「いかに現代社会の動向に関心を向けているか」が重要で、日頃から新聞やニュースなどを通して時事に精通しておく習慣が大切ですね。
地域福祉の理論と方法(10問)
本科目の問題は、幅広い分野から問題が出題されていました。そして、じっくりと読み込ませる問題が多かったですね。また、基礎的な内容も多く出題されていますが、例えば、問題32の地域福祉の基礎的な理念や概念、問題33の地域における多様な参加の形態などは必ず得点しておきたい内容です。
この他、社会福祉法を根拠とする問題をはじめ、災害や地域福祉推進に関する問題が出題されました。出題はされていませんが、地域福祉を基盤としたソーシャルワークにおいては、アウトリーチやアドボカシーなども重要となります。さらに、地域福祉を推進する社会福祉法人の役割やその詳細内容については整理してきましょう。
福祉行財政と福祉計画(7問)
本科目の内容は、大別すると、(1)福祉行財政、(2)福祉計画の二つに分けることができます。内容的にも、出題を予想していた地方財政に関する統計的な内容は、例年出題される「地方財政白書」からの出題でした(問題44)。こちらについては、地方の財政を理解するためにも現代の社会福祉士に必須の知識となります。基礎的な用語を押さえた上で、各項目の統計を整理する学習をきちんとしていれば解けた問題でした。このほか、問題42、43、45については、国(厚生労働省)、都道府県、市町村の役割や機能などを問う問題でした。
次に、(2)福祉計画は、地方財政を基盤として策定されるものです。全部で3問出題されましたが、やや詳細を問う内容となっていました。福祉計画については、社会福祉士として活躍される皆さんは、地域で策定される福祉計画をもとに、我々の地域福祉が実施されますので、一読しておきましょう。
社会保障(7問)
社会保障については、基本的な項目が出題されています。わが国の社会保障の仕組みを理解するために基礎的な知識です。社会保障とは、「働く人が支える仕組み」ですので、現代の「働く人」の状況を的確に理解する力が必要です。ですから、現代の「働く人」の実情については重要ポイントです。労働人口や人口の動向や推計については、必ず整理しておかなければなりません。第35回試験では出題がありませんでしたが、「社会保障費用統計」などの統計資料に目を通し、社会保障費用の収入と支出について理解しておくことが重要です。また、社会保障とは、一言で「私(個人)の“困った”を社会全体で支える仕組み」といえます。その「私(個人)の“困った”」とは「働けなくなって生活費で“困った”」であり、「医療や介護で“困った”」であり、「失業や働き、仕事中の病気や怪我で“困った”」ということです(社会保険)。
このほかに、「生活に困窮して“困った”」「子育ての費用で“困った”」などもありますね(公的・社会扶助)。このような「私(個人)の“困った”」を「社会全体」で支えることを社会保障と言います。
問題50では、日本の社会保険を外観するような問題が出題され、この他、年金保険、医療保険、労働保険(労災保険含む)について出題されました。このように、本科目は、学習に取り掛かる際に、専門的な用語やその仕組みの理解から始めなければいけないので、「苦手意識」を持つ方も多いですが、実際の問題では、基礎をきちんと理解していれば、解答できる問題もたくさんあります。また、社会福祉士にとって、社会保障に関する知識は重要となりますので、わからなかった問題は必ず復習しておきましょう。