第35回社会福祉士国家試験 問題の講評
特別編① 第35回社会福祉士国家試験 午前<共通科目>問題の講評
さて、試験直後から、第35回試験を受けた方から感想をいただいています。
「しっかりと暗記しておけば、意外と解けた問題が多かった」
「問題文をよく読めば、初めての語句や用語であっても内容が理解できた」
「二つ選ぶ問題がとても多かったが、問題文をしっかり読んで挑むことで得点できた」
といった冷静な感想が多く寄せられています。私も同感です。しっかりと統計や法律、用語などについて整理していた人や、あとはじっくりと、まちがえなく問題を読解さえすれば解答できた問題が多かったと思います。ただ、やはり実際の試験となると、そう冷静でなんていられないのもまた事実ですけれどね。
午前<共通科目>問題の総評として、本年度の試験の合否を分ける大きなポイントは、用語や概念、理論についてしっかりと理解できていたかどうかだと思います。本年度の試験は、用語や概念、理論にかなり忠実な問題が多かったため、しっかりと学習し、理解していた場合、明快に解答できたと思います。さらに、この基礎知識を具体的に活用する場面が事例などで出題されており、ある意味で応用的な問題であったと言えます。ただし、正答を選択できなくても、消去法で答えまで辿り着いたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
事例問題については、昨年同様に短文の事例問題が散りばめられていました。また、各問題間及び各科目間の問題の難易度にバラつきがあったため、根気よく、確実に、わかる問題を得点できたかが重要だと思います。途中で投げ出してしまったり、初めのほうに難しい問題があったので先入観で本年度の試験を「難しい」と捉えてしまった方は、苦戦したと思います。
それでは各科目について、それぞれ講評していきたいと思います。
人体の構造と機能及び疾病(7問)
本科目の出題傾向は、例年通り出題基準から幅広く出題されています。各問題をみてみると、定番ですが、問題1では「人の成長と老化」について、「思春期の心身の変化」が問われました。例年、高齢期や老化などの出題でなく、思春期の変化について問われています。また、出題頻度の高いICFをはじめ、がんやパーキンソン病、脳卒中に関する基礎知識と応用問題が出題されています。この他、問題7では、注意欠如・多動症(ADHD)に関する問題が出題されましたが、「DSM-5」や「ICD」などをベースとしたものではないので、微妙な問題となりました。
心理学理論と心理的支援(7問)
本科目に関しては、昨年度も広範囲な事項が満遍なく出題されていました。ただし、テキスト、ワークブック、過去問解説集、模擬問題集などをしっかりと学習していた人は比較的簡単に解けたのではないでしょうか。問題8、9では、心理学概論の基礎的な知識が問われました。具体的には、問題8で「動機づけ(内的動機づけ)について問われました。また、問題9では「性格」について問われ、具体的には「ビックファイブの外向性」の具体例(特徴)を選ぶものでした。外向性は、「興味関心が外界に向けられる傾向」ですね。
このほか、子どもの発達(問題11)やコーピング(問題12)が出題されました。出題が予想され、頻度も高い、「心理検査」や「心理療法」もバッチリ出題されてましたね。こちらも基礎的な内容でした。
社会理論と社会システム(7問)
本科目から続く社会学系の科目が苦手の人は多いですが、社会学系の科目は、現代社会を学問的に捉える力を試すものです。つまり、現代社会の問題と、それを科学的に整理する力(理論:人名や功績など)が必要になります。今回はやや人名や理論などが多く出た印象でしょうか。実際の問題を見てみると、問題15はヴェーバーの合法的支配から始まり、問題16では、社会変動についてテンニースやスペンサーが出題されました。テンニース、やりましたよね。「ゲマンインシャフトからゲゼルシャフト」。このほか、定番ですが、社会的役割や人々の生活を支えるための概念(家族周期やライフステージ、ライフスタイルなど)が出題されました。残念ながら、貧困に関する用語や人名とその理論については出題されませんでしたが、これから社会福祉士として活躍するためには重要な知識なので、「ジニ係数」「相対的貧困率」などは、心に留めておきましょう。