特集⑥ 合格に向けた冬の学習法
こんにちは! けあサポ編集部です。冬が始まり、国家試験まで残り約2か月となりました。受験対策の状況は皆さんさまざまと思いますが、まだ時間はありますので、さらなる得点アップを目指して、この冬を乗り切りましょう。
今回は、けあサポ講師陣から受験される皆さんへ「合格に向けた冬の学習法」をお伝えします。国家試験までの時間を有効に活用し、成果を上げるための参考としてご覧ください。
皆さんの合格をお祈りして、けあサポ編集部が伴走いたします!
張先生の精神保健福祉士国家試験 冬の特別講座
皆さん、お元気ですか。けあサポで精神保健福祉士受験対策講座を担当している張です。
国家試験までいよいよ2か月になりました。学習は順調に進んでいますか。学生の皆さんは、卒論や就職活動でお忙しいことと思います。すでに現場でお仕事をされている皆さんは、日々の忙しさの中で学習時間が思うように確保できずに焦りを覚えておられる方も多いかもしれません。
今回は、これからの大事な2か月をどのように過ごしていけばよいのか、どんな勉強が効果的なのかをお伝えしたいと思います。
冬は苦手科目を克服しよう
この時期にぜひ取り組んでほしいのが苦手科目の克服です。苦手に感じている科目や苦手にしてきた分野を攻略していきましょう。
合格ラインを意識する
精神保健福祉士の国家試験は、合格基準が「問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点の者」とされています。配点は1問1点の163点満点、専門科目のみを受験する場合は80点満点です。
近年の合格ラインの推移をみると、第20回が93点、第21回が87点、第22回が90点、第23回が94点、第24回が101点となっています。前回の101点は特別に高かったもので、合格ラインは90点から100点の間と考えておくとよいでしょう。
要は、合格するには必ず6割以上得点しなければならないということです。もし苦手科目の得点が2点や3点だった場合は、ほかの科目で不足した分を補うことになります。しかし、試験問題には基本的な知識だけでは解けない、いわゆる難問とよばれる問題が各科目に2問ほどあります。そのため、苦手科目で得点できない分をほかの科目で補おうとしても現実には難しいのです。
さらに、0点の科目群があると総得点が6割を超えていても不合格となってしまいます。
これらを踏まえると、苦手科目をなくしてすべての科目で6割以上の得点が取れるようにしておくことが合格への近道ということになります。
知識量を増やし確実性を高める
この時期に過去問や模擬試験の問題を解くときは、内容を理解して解けた問題、最初から解けない問題、何回解いても間違えてしまう問題に分けてチェックしてみましょう。
最初から解けないのは、知識量が足りないか、理解が不足しているということです。その問題の分野に関する知識量を増やしていきましょう。毎回同じような間違いをしてしまうのは知識が確実でないことが理由なので、曖昧な知識を確実なものにしていきましょう。
特に苦手科目がないという人でも、科目の中に「苦手な分野」があるかもしれません。苦手な分野は避けてしまいがちですが、積極的に取り組むことによって得意分野にすることができます。
苦手科目があることをバネにする
苦手な科目や分野があるということは、これから得点の伸びる余地がそれだけあるということです。苦手科目の点数を伸ばすことで、総得点はグンと伸びます。苦手科目をなくすと、自信をもって試験に臨めるようになります。
苦手の原因と克服術
苦手科目を克服するために、まず自分は何が苦手なのかを把握しましょう。模擬試験を受けると、自分の弱点や苦手科目を知ることができます。模擬試験を受けていない人は、過去問を解いて苦手な科目を把握しておくとよいでしょう。
苦手科目は様々な理由で生まれます。苦手科目を克服するには、なぜ自分がその科目を苦手と思っているのかを分析することが必要です。
苦手だと思い込んでいる
苦手科目の原因の1つに、苦手だと思い込んでいるため、食べず嫌いのようにその科目の勉強を避けてしまい、自分で苦手にしてしまっているケースがあります。
このような場合は、なるべく多くその科目に触れることで苦手意識をなくしていきましょう。ほかの科目より多くの時間を割いて学習していくと、苦手だと感じていた科目が思ったより難しくないことに気づき、取り組みやすくなります。
内容が理解できていない
その知識としての内容が理解できていないために、いつも点数が取れず、苦手になってしまっているケースがあります。
このような場合は、まずどこがわかっていないのかを確認して、次に解説をよく読み込んでその事柄に対する理解を丁寧に深めていくと、グンと力が上がってきます。
正しく覚えられていない
「人物・業績などの暗記が必要な科目は苦手」という受験生も多いです。人物や業績が覚えきれていないと何回解いても間違ってしまうため、なかなか得点が伸びません。このような場合は、暗記の方法を工夫することで苦手意識をなくすことができます。
歴史については、最初から年号を暗記しようとするのではなく、はじめは時代背景を意識しながら大まかな流れをつかむようにしましょう。それから、年代ごとに出来事を整理し、最後に細かい年号を覚えていくと記憶に定着します。
人物や業績は、業績の中身をまず理解したうえで、何回も繰り返し確認することが有効です。短期記憶は、繰り返すこと(リハーサル)によって長期記憶にすることができます。
たとえば、覚えきれていないことを紙に書き出して、家の中の目につくところに貼っておくと、必然的にそこを通るときに目に留まりますので、繰り返しその内容に触れることができます。また、通学や通勤などのスキマ時間で見ることができるように、スマホのメモや単語帳に書き出しておくと効率的に覚えることができます。
どこが苦手なのかわからない
科目自体に苦手意識があると、克服しようとしても範囲が漠然としていて膨大なため、どこから手をつけてよいかわからなくなります。しかし、実際には苦手科目の中にも得点できる分野があるはずです。本当にできていないのはその科目の一部分だけということです。
まずは「本当にわからないのはこの科目のどの部分なのか?」と考えて、出題基準の大項目や中項目単位で理解度を確認してみましょう。どの分野が特に苦手なのかを把握したら、全く得点できない分野に集中的に取り組んでいくとよいでしょう。
制度系の科目に力を入れよう
試験までの限られた時間の中でどの科目に集中して取り組んだらよいのかという質問をよく受けます。この点については「制度系」の科目に集中するとよいでしょう。
制度系の科目で問われる知識は法律や制度に基づいています。専門科目では「精神保健福祉に関する制度とサービス」や「精神障害者の生活支援システム」、共通科目では「福祉行財政と福祉計画」「社会保障」「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」「低所得者に対する支援と生活保護制度」「権利擁護と成年後見制度」などが該当します。
これらの科目は覚えることが基本になるため、理論系の科目に比べて学習すればしただけ得点がアップします。では、科目別に制度系の押さえておくべき内容を確認しましょう。
精神保健福祉に関する制度とサービス
この科目では、精神保健福祉法における「精神医療審査会」「精神保健福祉センター」「入院形態」が出題率の高いテーマです。それぞれの機関の役割と位置づけ、入院形態の種類とそれぞれの特徴について整理しておくとよいでしょう。
ほかでは、障害者総合支援法、医療保険や年金保険などの社会保険制度に関する知識が問われます。共通科目の「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」や「社会保障」における障害者施策もあわせて確認しておきましょう。
また、更生保護制度や医療観察法も出題率が高いので、それぞれの制度の目的と対象、関係する機関と職員、業務内容を確認しておきましょう。
精神障害者の生活支援システム
この科目では、精神障害者の就労を支援するためのシステムとして、公共職業安定所の精神障害者雇用トータルサポーターや、障害者雇用促進法における地域障害者職業センターの役割、障害者総合支援法における就労移行支援・就労継続支援の内容などを押さえておきましょう。
居住支援の分野では、障害者総合支援法における共同生活援助(グループホーム)や自立生活援助などが出題されています。
福祉行財政と福祉計画
共通科目の「福祉行財政と福祉計画」は制度系の代表的な科目です。地方自治法における地方自治の仕組み、それぞれの分野の福祉計画の根拠法と策定方法は、出題パターンが決まっていますので、学習すればするほど得点を上げることができます。
社会保障
この科目では、5つの社会保険のそれぞれについて、保険者、被保険者要件、給付要件、給付内容、財源を整理しておきましょう。特に年金保険制度と医療保険制度の出題率が高いので、丁寧な学習が望まれます。ここで学んだ知識は専門科目の「精神保健福祉に関する制度とサービス」に活かせます。
また、雇用保険法の改正がありますので、気をつけておきましょう。法改正については、受験対策講座の後半で数回にわたってポイント整理して解説する予定です。
障害者に対する支援と障害者自立支援制度
この科目は、障害者総合支援法の障害福祉サービスの内容が頻出です。障害福祉サービスの自立支援給付と地域生活支援事業の違い、自立支援給付のそれぞれの給付内容、都道府県と市町村の役割の違いなどを整理しておくことをおすすめします。「社会保障」と同様、「精神保健福祉に関する制度とサービス」でも出題されることがあります。
低所得者に対する支援と生活保護制度
この科目については、生活保護法そのものが出題範囲の半分以上を占めています。生活保護法の目的、4原理4原則、8扶助の内容、被保護者の権利と義務、実施機関の役割と業務、保護施設等、生活保護制度全般をまんべんなく押さえておきましょう。
最近では、低所得者対策としての生活福祉資金貸付制度、生活困窮者自立支援制度も出題が多くなってきています。
権利擁護と成年後見制度
この科目は、「憲法」の基本的人権と国民の権利・義務、「民法」における契約、親族、相続など、行政関係法として「行政手続法」「行政不服審査法」「行政事件訴訟法」、消費者保護としての「消費者契約法」「特定商取引法」、民法に基づく「成年後見制度」、任意後見契約に関する法律に基づく「任意後見制度」が出題範囲になっています。
以上の科目はいずれも法律の内容が基本になります。制度をしっかり理解すれば得点アップを見込めます。試験では難問も出されることがありますが、そのような問題に時間を取られないように注意してください。毎年スタンダードに出題されている問題を確実に解けるようにしておくとよいでしょう。
問題を解くスピードをアップしよう
試験後に「時間が足りなくて解ききれなかった」「見直す時間がなくて間違えてしまった」などの声を聞きます。本試験は、問題を解く時間に制限があります。これからの2か月は、知識の確実性とともに、問題を解くスピードをアップさせていきましょう。
模擬試験を受けた方は、どのぐらいのスピードで解けば見直す時間があるか体験したことと思います。試験本番は精神的に余裕がなくなるかもしれません。焦ってしまい、思ってもいなかったようなミスをしてしまうこともあるでしょう。それだけに見直す時間は必要です。クイズのように、問題を読んですぐに解答を選び出す力を身につけたいところです。
問題のテーマを見つける
スピードアップのために効果的なのは、問題を解くときにテーマを見つけることです。問題のテーマを素早く見つける訓練をしましょう。あまり意識せずに問題を読んでしまうことが多いかもしれませんが、問題には必ずテーマがあります。そのテーマを素早く読み取り、その問題が何を聞いているのかを把握することが重要です。
キーワードを見つける
次にそれぞれの選択肢にある重要語句を見て、問題テーマから○×の妥当性を判断できるようにしましょう。重要語句が1つの選択肢の中に2つある場合、1つの重要語句が正しいとその選択肢を正しいと判断してしまいがちですが、もう1つの重要語句が誤りということがあります。選択肢全体の重要語句を確認して、正しいか誤りであるかを判断してから解いていくと、問題を解くスピードは上がっていきます。
この冬に特に学習しておきたいこととその学習法について解説してきました。新型コロナウイルスの感染拡大とインフルエンザの同時流行が警告されている中での受験勉強です。何よりも健康管理に注意して、焦らず着実に、最後の2か月間を合格に向けて取り組んでいってください。
皆さんの健闘を心からお祈りしています。