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精神保健福祉士国家試験 専門科目試験の講評

第27回精神保健福祉士国家試験 <専門科目>問題の講評

 今回は、新試験に移行した初めての試験で、科目と問題数が変わり、点数配分も変わりました。
 「精神医学と精神医療」「現代の精神保健の課題と支援」「精神保健福祉の原理」「ソーシャルワークの理論と方法(専門)」の4科目は各9問、「精神障害リハビリテーション論」「精神保健福祉制度論」の2科目は各6問となり、問題数は48問でした。
 出題形式では、五肢択二の問題が大きく減りました。問題数が減ったとはいえ、五肢択二は48問中6問、旧試験の昨年は80問中16問が五肢択二でした。
 各科目の出題傾向と難易度を分析していきたいと思います。


精神医学と精神医療

 大項目「精神疾患総論」から、「心理検査」が、精神疾患の症状として摂食障害とうつ病、自閉スペクトラム症に関する出題がありました。この分野からの出題傾向としては、例年通りといえるでしょう。精神療法としては、SSTが出題されましたが、難易度は低い問題でした。
 医療観察法における入院・通院治療として、鑑定入院命令の出題がありました。医療観察制度の手順がわかっている受験生にとっては、特に難しくはなかったでしょう。
 精神医療と保健、福祉との連携については、保健サービス、福祉サービスに関する知識が求められ、難易度は少々高かったと思われます。
 精神保健福祉法の最新改正として、精神科病院における障害者虐待に関する通報制度に関する出題がありました。直近の法改正は、今後も出題傾向が高くなるでしょう。

現代の精神保健の課題と支援

 精神保健の動向として、患者調査からの出題がありましたが、常識で解ける範囲の内容でした。吉川武彦の精神保健活動の三つの対象についても、出題実績があるので十分対応できたでしょう。少年法の虞犯少年については、「虞」が、「おそれ」という意味であることを知っていれば特に問題なかったでしょう。職場におけるハラスメント、ストレスチェック制度についても繰り返し出題されていますので、過去問を解いていた受験生は十分対応できたと思われます。短文事例のロコモティブ症候群については、事例文の中に、「筋力が低下したことによって」という記述があり、難易度の低い問題でした。
 長文事例問題では、自殺対策の事前対応か事後対応かを判別すれば、ポストベンションを選べたでしょう。スクールソーシャルワーカー活用事業実施要項については、実施要項を全文読んでいた受験生は多くないと思いますが、スクールソーシャルワーカーの役割がわかっていれば対応できたでしょう。
 児童相談所に保健師の配置義務があることは、児童福祉法の改正内容を知っていなければ答えられない問題で、少々難易度は高かったと思われます。

精神保健福祉の原理

 障害者福祉の理念としてのエンパワメントやレジリエンス、ノーマライゼーションに関する問題は、基本的な内容でした。
 日本の精神保健福祉施策に影響を与えた出来事として、精神保健法が精神障害者の人権を重視した法律であることを知っていれば、問題文から宇都宮病院事件を想定し、精神保健法により、任意入院制度が創設されたことが導けたでしょう。
 精神障害者の家族の権利・義務については、退院請求申し立て権者として整理して覚えていれば特に問題はなかったと思われます。
 精神保健福祉士法制定の背景については、この法律の制定年と他の出来事の前後関係がわかっていないと解答を導き出すのが難しく、難易度は高かったといえるでしょう。
 精神保健福祉士の義務については、頻出分野でもあり、十分対応できたことと思います。
 長文事例問題は、ひきこもりの息子に関する相談ですが、Aさんの家事負担の評価なのか息子の精神的健康の評価なのか迷われた方もおられたと思います。また、「無知の姿勢」という言葉を知らなかった受験生も多かったのではないでしょうか。この機会に、援助者の姿勢について、理解を深めておかれるとよいでしょう。

ソーシャルワークの理論と方法

 この科目は、問題数が減ったために事例問題も少なくなり、ポイントを絞った出題になりました。
 短文事例におけるバウンダリーの概念は、専門職としてクライエントとの境界をどのように明確にしていくかという、精神保健福祉士の専門性に関わる問題でした。面接技法のひとつである感情の反映については、特に問題なかったでしょう。
 ナラティブアプローチの問題の外在化については、解けなかった人も多かったのではないでしょうか。インターディシプリナリモデルについても、このモデルの特徴をよく理解していないと解くのに苦労したことと思います。
 そのほか、関連援助技術としてのコミュニティワーク、ソーシャルアクションについては基本的な内容でした。長文事例問題の統合失調症患者の地域移行に関する問題についても、解きやすい内容でした。

精神障害リハビリテーション論

 リカバリーの概念は定番問題です。短文事例のアサーショントレーニングについても事例の中に、「自分の考えや意見をうまく伝えられるようになりたい」という記述があるので、特に問題はなかったでしょう。
 長文事例問題は、アルコール依存症の夫を支える妻のあり方に関する事例でした。家族を支援するためのプログラムである「CRAFT」の内容を理解していないと解けない難度の高い内容でした。
 アンソニーの精神科リハビリテーションの基本原則については、日本語訳にはない言葉が使用されており、正解の選択肢に悩む受験生も多かったのではないでしょうか。
 この科目は全体的に、難易度が高かったといえるでしょう。

精神保健福祉制度論

 精神保健福祉センター、精神医療審査会は、定番問題でした。生活保護制度についても、基本的な問題でした。長文事例問題も、入院形態、退院後生活環境相談員、精神科通院医療に関する内容で、特に問題はなかったでしょう。

 専門科目全体でみると、一部難度の高い科目もありましたが、全体的に解きやすい印象を受けました。精神保健福祉士は福祉の分野のキーパーソンとして位置づけられているので、今後もこの傾向は続くものと思われます。
 試験対策としては、基礎的な知識を確実にモノにしていくことが必要といえるでしょう。

解答速報をみた後は!!

精神福祉士になる人のための本
次回の試験に向けて早めに備える(第38回)

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