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私はこうして合格しました!

国家試験を突破して精神保健福祉士の資格を取得した合格者の皆さんに、合格までの道のりをご紹介いただきます。効果的な勉強法や忙しいなかでの時間のつくり方、実際に資格を手にして思うことなど、受験者が参考にしたい話が満載です。

第42回 木村和広(きむら・かずひろ)さん

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プロフィール

木村和広(きむら・かずひろ)さん
平成25年度試験合格

 東洋大学社会学部応用社会学科卒。東京都出身。高校時代、目標を見出せず生き方に悩んだ時期があり、心に関する勉強をして心理面のフォローで役に立てる仕事に就けたらと大学では社会心理学を専攻。しかし、当時は就職氷河期の只中にあって、現実の生活を支える必要から当初の思いは後退、郵便局に就職した。その後、自らの知識や経験の幅をもっと広げられたらと生まれ育った地元の公社に転職。しかし、天下りや有力者のコネがものをいう職場風土に嫌気がさし、そんな折、学生時代に興味をもった“心のフォロー”への思いが再燃した。社会福祉士と精神保健福祉士、両資格の取得を志し、退職して専門学校に入学。まず、就職の口が多い社会福祉士を目指し、資格取得後に精神保健福祉士を目指すという2段階の計画だった。社会福祉士は1年間の昼間通学コースで学び、翌(平成24)年に無事合格。地域活動支援センターに就職し、精神保健福祉士は実務を積みながらの就職2年目に通信教育コースで学び、翌(平成26)年にこちらも見事合格。3年越しの大願を成就させた。4月、NPO法人わくわくかんに入職し、就労支援センター北(東京都北区)の就労支援コーディネーターに着任して現在に至る。好きなものは、温泉旅行、コーヒー好きでカフェ巡り、食べ歩き。言葉なら“希望”。きらいなのは、急かされること。「支援させていただいているご本人が、誰かの役に立てて喜ばれている顔を見られたときが一番うれしい瞬間」と、うれしそうな顔に紆余曲折から天職を得た感無量が浮かぶ40歳。

受験の動機

 私の大学卒業は2001年で、就職氷河期の真っ只中にありました。心の問題に興味があって進んだ学部学科でしたが、仮に大学院へ進んで臨床心理士を取得したとしても、就職の厳しさは伝え聞いていましたし、そもそもふつうに就職するのが難しい状況でした。当時は、精神保健福祉士も社会福祉士も資格として存在することすら知らず、周囲の学部生と同様、一般企業や公務員を目指す流れのなかにいたと思います。

 “福祉”という言葉や福祉の専門資格を意識するようになったのは、社会人としての生活を積み重ねていきながらです。組織というものの矛盾や仕事をしていく上で専門的な知識・技術を持っていることの必要性を感じるようになり、そういえば昔、心に悩みを抱えている人を支えられるような仕事に就きたいと考えていたなと記憶によみがえり、おぼろげな思いはやがて真剣なものに変わっていきました。そして、当時働いていた職場と決別したいと思う出来事が背中も押して、精神保健福祉士と社会福祉士の2資格を目指すことを心に誓いました。

 仕事を続けながら通信過程で資格を目指す選択もありましたが、あえて退路を断って取り組む決断をしました。退職して、1年のなかで資格取得と福祉分野の就職を本気で目指そうというわけです。精神保健福祉士と社会福祉士、両方の資格取得を目指すことは初めから決めていましたが、どちらから狙っていくかはかなり迷いました。仕事としてやってみたいと思っていたのは精神保健福祉分野でした。ただ、精神保健福祉士より社会福祉士のほうが就職できる先が多いこともわかっていました。私の場合、退職してのチャレンジでしたから、資格取得とともに就職のことも考えなくてはなりませんでした。

 いろいろ考えた結果、はじめに社会福祉士を目指すことにしました。合格率が低いことはわかっていましたが、当時の強い気持ちに支えられてでしょうか。それ自体はあまり気になりませんでした。

 1年後、無事に社会福祉士の資格を取得し、その翌々年に精神保健福祉士の資格も取得しました。社会福祉士は試験直後に落ちたと思いましたし、精神保健福祉士も確たる手応えがあったわけではありません。一つ、実感として持っているのは、どちらの資格もある程度勉強すれば、誰にも合格の可能性のある試験だということです。たとえ、勉強が思うように進んでいなくても、あきらめることはありません。

 私の経験談がどれほどお役に立てるかわかりませんが、そのままをお伝えしたいと思います。

仲間を力に

 まずは専門学校のお話から。私は、社会福祉士の資格を目指したときは昼間の通学1年コースで学びました。仕事を辞めて勉強に集中できる環境にあったのと、学校に通えば同じ資格を目指す仲間同士、情報交換したり励ましあったりができると思ったからです。

 一方、精神保健福祉士の受験のときは、地域活動支援センターで働いていたので必然的に通信課程で学ぶことになりました。同じ専門学校に入ったことも関係しているかもしれませんが、受験生としての心持ちがずいぶん違っていて、仲間との日常的な交流がないまま、気がつけば課題のレポートの提出期限が迫っているという具合で、学生という感覚はほとんどありません。社会福祉士の受験のときに仲間が近くにいてくれることの大きさを感じていた私は、わりと早い時期にこのデメリットを意識していました。同じ資格を目指す仲間と出会える機会はスクーリング期間のみです。それも私の場合、地域活動支援センターに勤めていたため、通信課程も実習が免除される短期コースで、スクーリングは夏に行われる1回のみでした。その意味でも、スクーリングは逃すことのできない貴重な機会だったのです。

 そこで私は、スクーリングのときに親睦会の声掛けをしました。実は、こういうときに親睦会はやるものだと思っていたので、はじめは誰かが音頭をとって呼びかけてくれるのを待っていたのですが、一日経ち二日経ちと時間が過ぎていくなかで、このままじゃナシで終わってしまうと思って声を上げました。周りにいる人には直接声をかけつつ、学校の掲示板に親睦会(飲み会)の告知をしたところ、40人くらいの方が集まってくれて、スクーリングが終わった後も連絡を取り合いましょうと、いい仲間づくりの場になりました。スクーリングには、秋田や新潟、鳥取、沖縄など全国から来られていて、せっかく知り合った縁を卒業後も活かしていきましょうと、ラインやフェイスブックでグループを作ったりもしました。こうした受験者同士のつながりは、社会福祉士を受験したときもかけがえのないものとして経験していて、機会の限られる通信課程でも大事に考えたいと思ったことがあります。これらの受験者ネットワークは、卒業後の今もしっかり生きています。

 ちなみに、他県からいろいろ集まってこられてと書きましたが、専門学校は日本福祉教育専門学校(東京都新宿区)です。国家試験の合格率の高さと、オープンキャンパスに行ったときの印象のよさが、こちらを選んだ理由です。学生に社会人が多くて、いろんなバックグラウンドを持っている方がいらっしゃいました。

仕事(実践)と試験勉強を結びつけ

 さて、受験勉強のほうは出足が鈍く、まじめに取り組み始めたのは11月に入ってからでした。共通科目と実習が免除されていて余裕があったからということでは決してなく、仕事に忙殺されて、時間をうまくつくれないまま気がついたらこの時期に来ていたというのが正直なところです。社会福祉士のときも本格的な勉強は10月からのスタートで、それほど早くはありませんでしたが、このときは通学していたので前段階にベースの学習は行えていました。その意味で、精神保健福祉士専門科目の基礎学習は不足していたと思います。

 ただ、いざ試験勉強を始めてみると、勉強することのつらさはなく、逆に興味を刺激されて、学習の中身にスムーズに入っていけました。当時、私は地域活動支援センターで働いていたので、例えば、あの方の使っていた制度ってこれなんだとか、あのサービスが関係しているのはこの機関なんだとか、あの人の説明でわかりづらかった仕組みの話がここ(教科書)に載ってるじゃないかとか、日々の実践と書かれている知識が結びついてくれて理解がしやすく、仕事に活かせるものも発見できて、勉強は楽しく感じられました。

「解く技量」を重視

 受験対策用の教材として購入したのは、中央法規出版の『精神保健福祉士国試対策<専門科目>最終チェック』と、久美出版の『精神保健福祉士国家試験 問題分析と受験対策 過去問題集(専門科目)』です。

 『最終チェック』のほうは、コンパクトな新書サイズに科目ごとの予想問題が載っていて、1問当たりの分量も多くないので短い時間で数問など、手軽に取り組めるのがメリットに感じました。この本は、私が受験した次の年度に内容をリニューアルしたようです。『過去問題集』は、私の場合は専門科目があればよかったので、共通科目が入っていない本を探したかったのと、この問題集は解説が充実していて文字も色が使われて見やすく、手に取りやすかったことがあります。

 私の場合、定番といわれるワークブックは使いませんでした。周りの人はだいたい持っていたのですが、知識の内容を調べたいときは、学校の教科書を使って特に不足は感じませんでした。知識を補強する教材としては、翔泳社の『福祉教科書 精神保健福祉士 完全合格テキスト 専門科目』も活用しました。知りたいことを手軽に調べられる使いやすさがありました。基本的には、問題を解く本で勉強するというやり方です。

仕事とのバランスを図り

 試験勉強は、先に紹介した問題集や学校の小テストなども活用しながら、「問題を解く」ことをひたすら行っていきました。問題を解くという作業は、回数を重ねていくと解かなくても答えがわかってきますが、それであってもそのくり返しを学習方法の中心におき、そのテーマに対する理解の浅さを感じたり、周辺の事柄に重要性や興味を感じたりしたときは、教科書に戻って内容を調べるということをしました。試験勉強の後半時期は、国家試験のシミュレーションも兼ねて、新しい模擬問題を解くようにしました。

 勉強する時間は、平日は仕事が終わって帰宅後のおおむね21時から23時です。眠い目をこすりながら机に向かいますが、始めてしまえば先ほど挙げたとおり、いろんなところに現場とのつながりを見出せて集中は難しくありませんでした。知識だけが先行してイメージができず、勉強に入っていきづらかった社会福祉士の受験のときとの大きな違いでした。休日は仕事疲れで日中ぐったりしていることが多く、勉強はやはり夜にすることが多かったです。追い込まれないとなかなか動こうとしない性格でもあって、このままだと十分時間があったはずの一日が勉強しないで終わってしまうという、この心境になってやりだす感じでした。

 試験日が間近に迫ってきてからは、手洗いやうがいをして風邪をひかないようにしたり、栄養のあるものを食べるようにしたりと体調面に気遣いました。この直前期に、スクーリングで知り合った仲間たちと、仕事も大変だけどお互いにがんばろうと励ましあえたのは大きかったと思います。自分一人だとくじけてしまったり勉強をさぼってしまったりもあるかもしれませんが、一緒にがんばっている人がいることを感じられると励みになります。

吉報は大きめの封筒に

 試験を受けて終わった直後は、あまり自信がありませんでした。でも、次の日に「けあサポ」で自己採点したらソコソコ取れていて、あれ、マークミスしていなければ合格できてるんじゃないかなと思えてきました。聞くと、そういう方が多いようです。試験の直後はだめだと思っても、あとで落ち着いてくると意外と取れているということです。

 可能性は半々という感じで微妙な心持ちで結果発表を待ち、結果はインターネットでの発表の翌日、通知で知りました。送られてきた封書が大きかったので、もしかしたら合格かと期待しました。合格は合格証書が入っているはずなので、大きめの封筒になると思ったからです。封を開けてたしかに合格を確認し、自分が専門学校に入ったときに2つ資格を取ることを目標に掲げ、それが3年越しで実ったことを感慨深く味わいました。それから名刺に社会福祉士、精神福祉士と2つ書けることも喜びでした。前から、あこがれとしてあったものでした。

 以上が私の体験談です。皆さん、いろいろ不安もあると思いますが、自分を信じてがんばってください。そして、その先はぜひ、仲間として一緒にがんばりましょう。私は今仕事をしていて、当事者の方が自分の強みを発揮して、生きがいや自信を取り戻すことができる支援を心がけています。誰でも、自分の経験や存在が周りの方の役に立てたと感じると充実感を得られると思います。この仕事では、変に自分はできると思っている方よりも、迷いながらの方のほうがいいかもしれません。お待ちしています。

「就労支援センター北わくわくかん」の事務所風景。
ジョブコーチの菅沼友梨さん(右)とこうした情報連携を
随時行っている